炭酸ナトリウム(sodium carbonate)の無水塩の事です。組成式はNaCO(分子量106)

 

 ソーダ(soda)はアラビア語の頭痛薬を意味するsudaに由来するのだそうです。天然の炭酸ナトリウムを薬として利用していたのでしょう(?)。ここから、英語ではNasodium(ソディウム)と言うのです。方やドイツ語ではnatrium(ナトリウム)と言います。これはラテン語の天然炭酸ナトリウムを意味するnatronが語源です。

 

 日本でNaをナトリウムと言うのは、ドイツ語を基本としたからです。ややこしいのは、元素記号はNaで、国際純正・応用化学連合(IUPAC)ではsodium(ソディウム)と命名されている事です。だから正式には炭酸ソディウムなんですが、業界では炭酸ソーダが主流です。結晶水を含まない無水塩をソーダ灰と言うのだソーダです(ダジャレてすみません)

 

 ソーダ灰は天然に産出するトロナを原料に製造されるものもありますが、ソルベー法(アンモニアソーダ法)と言われるベルギーのエルネスト・ソルベーさん考案の工業的製造法が主流です。ソルベー法なんて高校の科学で勉強した記憶がありますが、中身は全く忘れていました。まさかそれを扱う様になるとは・・・。

 

 さて、ソーダ灰は何に使われるのか、結構幅広く使用されています。何といってもガラスと石鹸・洗剤が二大巨頭。あとは発泡性入浴剤、かん水(ラーメンに欠かせません)、排水処理剤、ミイラ製造(って、古代エジプトの話やんけ~)

 

 ガラスと言っても色々な種類がありますが、古くからある一般的なガラスはソーダ石灰ガラス(soda-lime glass)と言われるものです。文字通りソーダと石灰を原料として使用しますが、NaOCaOの含有量はそれぞれ約15%10%程度です。実は、ほとんどのガラスの主成分は二酸化珪素(SiO)で、別名シリカです。「そんなのシリカ」って言わないでね。

 

 結晶性シリカの鉱物名は石英と言います。石英の結晶が成長したものを水晶と言います。地球を構成している原子のNo.1が酸素(O)No.2が珪素(Si)です。SiO₂はありふれた物質と言えます。その辺の砂を溶かせばガラスになりますが、不純物が多いので変な色のガラスになっちゃうけどね。

 

 純粋な石英の熔融温度は1650℃と言われていますが、完全に溶かす為には2,000℃近くの温度を必要とします。そこにソーダ灰を加えると1,000℃あたりまで温度を下げる事が出来ます。これは使わぬ手はないですよね(そーだ、そーだ)。しかし、シリカとソーダ灰だけで溶かしたガラスはケイ酸ソーダを生じ、水に溶けてしまうのです。それを防ぐために石灰を加えて防いでいる訳です。「そんな事知ってるわ」って、ちょっとおセッカイでしたかね。

 

 ところで、NaO源としてならば、ソーダ灰でなくても、もっと身近な物質があります。分かりますか。NaCl(食塩)です。でもこれはいけません。「なぜ」って、教えようかな、どう塩うかな~。すみません、ダジャレが癖になってまして・・・。NaClを原料として使うと溶解中に塩素ガス(Cl)が発生し、溶融炉やその周辺が腐食されてしまいます。また、塩素ガスは毒ガスなんです。炉外に漏れたらてぇ~へんだ~。

 

 ソーダ石灰ガラスはほぼ、SiO₂ ・NaOCaO = 70%15%10% の組成です。主にコップ・ビン・窓ガラス・電球(最近は使われないですね)などなど。一番身近なガラスという訳です。ガラスは樹脂に取って代わられ、生産量が激減してしまいました。ペットボトルはいい例ですね。プラスチックごみが問題となっている昨今、ガラスを見直して欲しいものです。ガラスは溶かせば何度でも再生できます。ゾンビの様なのがビンぞよ。

 

 次に、石鹸・洗剤用途ですが、石鹸は植物性・動物性にかかわらず、油と苛性ソーダ又は苛性カリを喧嘩させて、いやもとい、鹸化させて作ります。性とは性質が苛(いら)たかである、つまり、きびしい、むごいと言う意味で、炭酸ソーダ(ソーダ灰)よりも苛たかなソーダと言う意味です。実際、劇物扱いですからね。

 

 残念ながら、ソーダ灰 (炭酸ソーダ)は石鹸・洗剤業界では主役ではありません。炭酸ソーダを水に溶かすとアルカリ性を示します。軽い皮膚や衣類の汚れ、タンパク質をある程度分解する事が出来ます。石鹸・洗剤に最大限の活躍をしてもらうために、露払いをしてもらうと言ったところでしょうか。

 

 苛性ソーダではアルカリ性が強すぎて、皮膚に良くないし、なんせ苛(いら)たかですから衣類が傷んじゃうかも知れません。そうなったら、イラっとしちゃいますよね。え、そのダジャレがイラっとするって・・・。世っ間の皆様、どうもすみまセンザイ。

 

 ソーダ灰その物を濡れた手で触ると手がぬるぬるします(苛性ソーダよりはましですけどね)。これは皮膚の角質を溶かしてしまうからです。石鹸・洗剤を使うと手がスベスベするでしょ。僅かながら、貴方の手が解けているのです。と言うか、古くなった角質を取り除いてくれていると思いましょう。思い込むことが大切です。だって、本当の事を知ったら怖くて生きていられなくなりますからね。ここだけの話ですよ。ね。

 

 石鹸・洗剤業界では、ソーダ灰の親戚ともいえる重曹やセスキ炭酸ナトリウムなんてのも活躍しています。また別の機会に御紹介致します。

 

 次に入浴剤、と言っても発泡性の入浴剤です。発泡剤としてソーダ灰が使われます。ソーダ灰を水に溶かすと加水分解して以下の反応式の様になります。

 

NaCO+ 2HO (2Na+ 2OH) + [2H + CO₃²⁻]

 

上式の()の部分がアルカリ性を示し、[]の部分が酸性を示します。よって、苛性ソーダを炭酸で中和した形になり、炭酸が弱酸であるため全体がアルカリ性を示します。ソーダ灰が苛性ソーダよりアルカリ性が強くない理由です。

 

 ところで、炭酸水が徐々に発泡する事は経験上御存じですよね。強く振ると爆泡しますよね。炭酸は元々不安定ですが、極薄い水溶液では爆泡しませんし、バスタブごと揺らしたり、絶えず掻き回すのもしんどいです。それでは発泡性入浴剤としては面白みがありません。

 

 ソーダ灰を硫酸や塩酸と反応させると発砲します。SO₄²⁺ や Cl⁻ が CO₃²⁻ を追い出すと言うより居場所がなくなり逃げ出すと言った方が良いのかも知れません。居場所が無くつい家から逃げ出したくなる私の様ですが・・・。って、何言わすねん。

 

 発泡性入浴剤には硫酸ナトリウム(NaSO)が含まれています、いや、たぶん含まれています、含まれているんじゃないかな。その SO₄²⁺ 分が CO₃²⁻ を追い出すのに一役買っているんじゃないかなぁ~、と推察しておる次第です。入浴剤に関してはあまり詳しくないので、私の頭では、ハッポウ塞がりで、これ以上は御容赦を・・・。

 

 その他、排水処理剤は苛性ソーダが高騰していますので、効果は劣りますが、酸の中和剤として使用されます。ミイラ製造は詳しくないのですが(当り前じゃ)、ミイラを乾燥させる目的で使用したんじゃないかと推察しています。天然の炭酸ナトリウム(natron)が豊富に存在してましたからね。

 

 そうそう、ラーメン製造に使われる「かん水」を忘れたらあカンスイ。小麦粉を固めるために使います。これが無いと、うどんと変わりませんよね。やっぱり、ラーメンにはしっかりした腰が無いと、あカンスイ。お後がよろしい様で・・・。

 

 大事な事を忘れてました。ソーダ灰にはライト灰とデンス灰があります。ライト灰は比重が軽いもの、デンス灰は比重が重いものと言う意味ですが、前者は細かく、後者は粗いと言った具合です。もともとソルベー法で出来たてはライト灰なのですが、これを顆粒状にしたものがデンス灰です。

 

 ガラス用に使用される原料はある程度粗いものが好まれます。何故かと言うと、高温で溶かすので、細かいと気流で粉が舞ってしまいます。その為、デンス灰はガラス用途と言っても過言ではないですね。

 

 逆に、水に溶かす用途となると細かい方が解け易いですよね。だから、ライト灰が使われます。用途によって原料の形状や性質を考えて使用しないといけません。だから覚える事がいっぱいで、ズボラの私には荷が重いと言ってもいいのですが、これで食べてますから我慢我慢の人生がまだ続きそうです。

 

 という事で、ソーダ灰の話はそろそろ終わりソーダよ、いや、終わりです。バイバイ。

 

 

 

 

 

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