年明けに鹿児島٠奄美市の男子中学生2人(彼らは中学を卒業して高校生になった)がマグロを素手で捕まえた話を取り上げたが、今度は大分٠臼杵市の熊崎川でマグロの大捕物があった。1週間前の日曜日に川を泳いでいたのが見つかり、そこから小型船を出して銛で打ち込むという作業であったが、こちらは動きが素早くて捕まるまで相当の時間を要したという。

 マグロが泳いでいたのは河口から10町程上流で、ちょうどJR九州日豊線の熊崎駅付近の川幅33尺で深さが1尺から5尺程度のところである。日曜日の夕刻で暗くなる時間であったため、地元の人たちは逃げられないように下流側に網を張り、翌日の夜明けには漁師の経験のある地元の住民が前述の動力付小型船に乗って手には銛を持ち、マグロとの対決に挑む。漁師が銛で突くも、マグロの動きが速いおかげですぐに銛が外れてなかなか捕獲ができない。この様子はインターネットでも生中継で流され、それを見た住民たちが川岸に集まる中で昼八つ過ぎに銛はついに打ち込まれて漁師は「獲ったどー!」と叫び、川岸の住民からは万歳三唱も沸き起こる。

 大分市の大分マリーンパレス水族館うみたまご学芸員の星野和夫氏はメディアの取材に「恐らくクロマグロの可能性が高い。海から迷い込んだのであろうが、そもそも沿岸部に天然の魚はほとんどおらず、川で見つかったのは非常に珍しい」と語るが、川岸で見ていた40代の男性は「川にマグロがいるとは思わなかった」と興奮気味に話し、マグロの捕獲に関わった70代の男性は「川でマグロを獲るのは初めてであったが、苦しませずに仕留められた」と大捕物を振り返った。見ていた人も獲った人も貴重な経験になったのは間違いない。

 獲ったマグロは住民たちに分けられておいしくいただいたという事であるが、長さ3尺で重さ8貫というこのマグロは海の神さんが民への贈り物であったのではないか?そう思わせる春の珍事であった。