ここでは度々藤子・F・不二雄=藤本弘氏の「ドラえもん」について取り上げているが、ドラえもんが四次元ポケットから取り出す数々の秘密アイテムの1つに「進化退化放射線源」というものがある。ドライヤーの形をしたこの道具から発せられる光線によって、人間をはじめとした動物や植物といった生物のみならず様々な道具が進化したり退化したりするという効果を及ぼすが、ドラえもんはこれで彼の相棒である野比のび太が持っていた10年前のポケットラジオを最新鋭のラジオ付きカセットレコーダー(連載されたのが40年近く前なので、今から見れば懐かしい感じがする)やテレビやテープレコーダー、トランシーバーなどの機能が付いた腕時計型のラジオ「腕ラジオ」に進化させた事があった。その腕ラジオを取り上げたストーリーの発表から40年近くが経ち、現在では腕ラジオの機能は高機能携帯電話=スマートフォンの機能としてほぼ現実となったが、今度はそのスマートフォンが腕時計型として売り出される可能性が出てくる可能性があるという。

 この腕時計型スマートフォンは韓国の三星電子が開発したもので、プラットフォーム「アンドロイド」を搭載した「ギャラクシーギア」という。来月、ドイツ・ベルリン市で行われる家電見本市「IFA」の開幕前の第1水曜日に正式発表されるそうであるが、スマートフォンの基本機能の電話の着発信やインターネット、そしてメールも楽しめる。さらにアンドロイドは多種多様なアプリケーションソフトウェアがあり、腕ラジオの機能にあるようなラジオの聴取やPCM形式で録音するもの、さらにテレビの視聴やトランシーバー的な通信が可能なものまであり、これらを取り込めば前述した腕ラジオがほんまもんになってしまうからうれしい。

 腕時計型の端末はアップルでも「iWatch」を開発中でインターネットでは想像図も公開されているが、共に商品化された場合は腕時計市場あたりで新たなるバトルが展開される事は確実である。Googleも眼鏡型の端末である「グーグルグラス」を3ヵ月前に発売して試験的に売り出しているので、これが加わってのウエアラブル・コンピュータ市場は実用化されれば、かなり熱い状況になってくる事は間違いなかろう。

 それにしても、40年近く前にこのようなハイテク機器をドラえもんの作中に取り入れた藤本氏も、今から考えればすごい先見性を持っていたと言える。数年先にはおしゃれな若年層の腕時計や眼鏡が携帯端末になっているのが当たり前になっているかも知れない。