恥辱とカタルシス -18ページ目

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

おおお……結構な傑作を見つけてしまったかもしれない。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

もう12時が来るって言うのにこんなん書いてますよ。ていうか、この本読むのも止められなくって一気読みしちゃったんですよ。面白かった!窪美澄さんの「じっと手を見る」、そんなに大きな期待はしてなかったんですけどね。

 

以前「ふがいない僕は空を見た」でちょっと変わった感性を持った作家さんなんだなと思っていた窪さん。変な人が好きな私は、この本を図書館で予約していい子で待ってたんです。2か月ぐらい……待ったのかな。で、今日借りに行って開いて一気読みよ。止められなかった!この人は私と同じようなものを見てるのかも知れないと思った。読了後興奮のままに、これを書いているのです。

 

 

 

 

この「じっと手を見る」は短編連作です。

 

そのなかにある、みずうみ

森のゼラチン

水曜の夜のサラバン

暗れ惑う虹彩

柘榴のメルクマーク

じっと手を見る

よるのみずべ

 

の7編から成り立っています。

 

でも、話の流れは全部繋がっているんですね。視点が変わるだけ。

 

主人公は介護士の日奈ちゃんという女の子です。地方都市在住です。1話目では24歳。海斗君という同い年で同じく介護士をしている彼氏がいるんですが、お互い初カレ初カノでなんかうまくいっていません。海斗君ばっかりが日奈ちゃんを好きで、身寄りをすべて亡くし落ち込んでる自分を愛してくれる海斗君に、日奈ちゃんが縋っちゃった形なんですね。だからしんどくなって、日奈ちゃんは海斗君から離れたくなっちゃいます。でも海斗君は日奈ちゃんに未練たらたら。そんな時に東京からやってくるのが、31歳の商業デザイナー、宮澤さんです。

 

宮澤さんがねー、なかなかにいいキャラなのよ!生い立ちが変わってるからか、人を好きになるって気持ちが悪意なく理解できないんです。人恋しくてぬくもりは求めるけれど、踏み込まれると逃げたくなる。……うわ、既視感しかないわ。そんな宮澤さんは日奈ちゃんと深い仲になってしまうんです。身体の相性がいいもんだからか、宮澤さんのことを純粋に好きになってしまう日奈ちゃん。

 

このへんもね、ファンタジーを含んでなくていいのよね。宮澤さんたら実は東京に嫁がいるんですよ。嫁からも仕事からも逃げたくて日奈ちゃんの身体に逃げてるんですね。日奈ちゃんはうっすらそれが分かってるんですが、セックスが気持ちいいもんだからなんだかまあいっか、みたいな気持ちになってしまっています。

 

そうそう、いくら「浮気は害悪だ」と声高に叫んだところで、結局人間って肉体の中に魂を詰めて生きているので、肉体の声から離れることはできないんですよ。私はそう思います。日奈ちゃんは決してセックスだけに没入してる女の子じゃないんですけど。身に沁み込んだ寂しさや苦しみを、セックスで消化させてるってところがあるんだと思う。まあまだ若いし。気持ちいいに越したことはないわな。会社を潰して東京から逃げ出した宮澤さんを追って、日奈ちゃんは生まれ育った町を飛び出します。で、振られちゃった海斗君にも新たな恋がやってくる。

 

でもでも、海斗君が同棲を始める真弓ちゃんがこれまた面白い子で。ほとんど中身は宮澤さんと同じなんですね。寂しいから誰かとセックスしたいけど、ずかずか陣地に入り込まれてくると嫌だっていう。しかも巨乳ちゃんなもんだからやりたい放題のいわゆるビッチ。

 

海斗君は面倒見が良くて独占欲が強い男の子なので、3年も真弓ちゃんと同棲するんです。バツイチ子持ちの真弓ちゃんは、障害を抱えた子供を元夫から引き取らねばならないのに、それを知って真弓ちゃんにプロポーズする海斗君。そこにあるのは優しさとか責任感とかそういうふんわりした気持ちでないんです。海斗君も結構な闇を抱えた青年なので読んでるこっちももうハラハラです。結局真弓ちゃんは海斗君を振っちゃって東京へと引っ越していきます。そして時を同じくして、日奈ちゃんも宮澤さんと別れ町に帰ってくる。

 

さあ、ふたりはどうなるのでしょう。ねえ。どうなるんでしょうね。30歳を超え大人になった二人は、それぞれが抱えてきた人生の重さをもって向き合います。ラストまで、ほんとにいい話だった……!

 

 

 

この話のモチーフになっているのが、「介護」なんですね。

 

このモチーフが、この作品に普通の恋愛小説にない重みを生み出していたように思います。「地方都市でくいっぱぐれないために」選んだ介護という仕事。でも日奈ちゃんも海斗君も真摯に仕事に向き合い、自分に向き合って生きています。淡々と重ねていく毎日の中で、吐しゃ物とも排泄物とも利用者さんの死とも向き合わねばなりません。

 

そんな日々を過ごすうち、日奈ちゃんは自分が求めているものが分からなくなってしまうんですね。家族もいないし趣味もないし夢もないし。そこに気持ちいいセックスをしてくれる男がいたから愛してしまった。でもその男は、結局それ以上のものは何も彼女に見せようとしない男だった。ここでブチ切れずに(嫁と別れろ等)すっと身を引く日奈ちゃん。なんか達観してるんです。そんな彼女が、やっと誰かの手を求めることができるようになるまでのお話です。

 

うーん、良かった。これ、感性が合わない人にはなにが言いたいのかよく分らん話だと思うんですよ。私が「ナラタージュ」が分からんように(しつこい)。でも、分かる人には刺さる話だと思う。「人に踏み込まれることに恐怖を覚える」人間にはテキメンなんじゃないでしょうか。「人に踏み込まれるのが怖い」人が介護の仕事をしているというところもポイントなのかもしれません。重厚にいろんな効果を出している気がします。うん、うまく言えないけど私はこの本すごくいいと思う。

 

窪美澄さん、好きな作家さんのひとりになりそうです。もっといろいろ読んでみようと思います。楽しかった。さあ寝よう。

 

では、おやすみなさい!

 

 

あー面白かった!

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

川上未映子さんの「乳と卵」を読みましたよ。芥川賞受賞作。うふふふふ……面白かった。私の好きなやつでした。

 

やっぱりなんかこういうのが好きね。なんかいちいちカッコつけてないのがいいね。人から見てどう思われるか、の枠の中で綺麗に出来上がったものより私はこっちが好き。

 

もちろんカッコつけようと思わない状態でカッコついちゃう、っていうのが一番人間としていい状態なんでしょうけどね。でもなんかなあ、『人間って生きてる中でこういうことあるよね、ないっていうのは嘘だよね』ってぶっちゃけ話してくれる川上さんはほんとにおもしろい人だなあ。私が求めてるのはこういうの。スンとおすましした女の子が、誰かに守られながらも自力で身を立ててると思い込んでうそぶく綺麗なお話はつまらない。あらやだ、これ、個人攻撃みたいになってますかね。他意はないのよ?「ナラタージュ」も作品としては素晴らしいものなのよ?

 

でも、勝手に私の好みはこっちですよという話です。面白かった「乳と卵」。女の業、母を求める子、依存と破壊、って感じでしょうか。

 

 

 

語り部の夏子ちゃんは東京在住。でも語りは関西弁です。そんな夏子ちゃんちに二泊三日で泊まりに来るのが、関西在住の姉の巻子さんと姪っ子の緑子ちゃん。巻子さんが40歳なので、夏子ちゃんは30代後半って感じでしょうか。夏子ちゃんは独身で、巻子さんはバツイチです。一人娘の緑子ちゃんは6年生で、この子は一切口を利かずに筆談で周りとコミュニケーションをとります。

 

巻子さん親子は、はっきり言ってうまくいってないんですね。巻子さんは豊胸手術したくてしたくてしょーがない人なんです。ぺったんこの胸にオレオがついてる状態らしい。……オレオ。そうか。そりゃ何とかしたいと思うかもしれない。それで東京の夏子ちゃんのとこに出てきたわけですね。病院でいろいろ話を聞こうと思って。

 

でも緑子ちゃんは、「私が生まれておっぱい吸ったから垂れちゃったって思ってるんでしょ?だったら子どもなんか生まなきゃ良かったじゃん。今だってお金がなくておかーさん必死で働いてるのは私に金がかかるからでしょ?あーやだ。生まれてくるんじゃなかった。私は子供なんか生むもんか。なのに胸は膨らんでくるし毛は生えてくるし生理は来るし、もう何もかもいやだわー!」という感じで筆談ガールになってしまったわけです。うーん、すれ違ってるねえ。お母さんは決して緑子ちゃんのせいで乳首がオレオになったなんて思ってるわけじゃないんだよ。母にとって子は宝だからね。子が吸ってるうちは乳首は食器。でも、食器じゃなくなってからの方が人生は長いんだ。

 

40も来たら乳首なんかどーでもいいじゃないか、と思われる方もおられるかも知れませんが、女にとっておっぱいっていくつになってもすっごく大事なものだから。別に誰に見せるっていうんじゃなくても、やっぱり綺麗な体でいたいと思うものなんですよ。自分のために綺麗でいたい。巻子さん、その気持ちはよーくわかるよ。でもなんか拗らせちゃって、ブロン依存とかになっちゃう巻子さん。ブロンて。中年にしか分かりませんかね。昔「ボンドの匂い嗅いでハイになる」と同じぐらいの初歩的なとこにあった薬物ですね。液体の咳止め。これをごくごく飲むとちょっといい気分になれるんです。言っときますけど私はそういうことはやってませんよ。まあそういう時代もあった、ということで。

 

ちなみに今は液体のブロンって売ってないんじゃないかなあ。要は、悲しいぐらいにお粗末な依存症、って感じです。そんな巻子さんが、病院の下見に行ってくると言って帰ってこなくなっちゃう。心配して待ち続ける夏子ちゃんと緑子ちゃん。べろべろに酔っぱらって帰ってきた巻子さんは、緑子ちゃんのお父さんに会ってきた、なんて言うのです。

 

 

 

 

ちょっとはた目から見る分には、精神的にエキセントリックなところのある巻子さん。

 

緑子ちゃんを愛しているのにうまく伝えることができません。緑子ちゃんも愛情が伝わってないから自分という存在を大切にできない。でもべろんべろんの巻子さんは、元夫とどういう話をしてきたのかなんか腹を割って帰ってくるんですね。「あんたなんでお母ちゃんの目を見んの。口をきかんの。馬鹿にしとんの?どういうつもりやの!」

 

すると不安が頂点に達していた緑子ちゃんも応戦してくるわけです。お母ちゃんはもう帰ってこないんじゃないかと心底不安になっていたわけですから。半年ぶりに口を開いてお母さんを罵倒し、ふたりはなぜか夏子ちゃんが賞味期限切れで捨てるつもりで出してた卵を自分の頭にぶつけながら怒鳴りあいます。ぶつけ合いながら、じゃないからね。自分の頭に各自ぐしゃぐしゃぶつけながら。なにやってるんだ。でもこの葛藤とその先にある和解がすっごく良かった!

 

やっとお互いの気持ちが分かりあえた巻子さんと緑子ちゃん。夏子ちゃんは大変でしたな。卵、っていうのは女性のお腹にぎっちり詰まっている卵子の暗喩なのでしょう。卵子を割って割ってやっと本音をぶつけ合った親子。良かったね!なんかすっきりしたよ!

 

この本にはもう一作、「あなたたちの恋愛は瀕死」という短編も収録されていました。まあこれはちょっとブラックユーモアかな。受け取り方にもよるけど。私はブラックなホラー寄りのコメディなのかなと解釈した。みっちり化粧した女が、行きずりのセックスしたくて街頭のティッシュ配りのお兄ちゃんに声をかけたとたんに殴り倒される話。……多分だけど、主人公は老婆なのかな。ギョッとする化粧をしたおばあさん、駅前とかにたまにいますよね。ああいう人を私は想像しました。

 

やけど、殴らんでも。暴力はいけませんよ。確かに80過ぎたおじいさんに口説かれたりすると何とも言えない気持ちになりそうですけどね。殴ったらいかん。うん。しかし発想が面白い。

 

 

 

と、言うわけで面白かった川上未映子さん。他のもよもっ。でも次はまた別の人の作品を。何冊か借りてきてるのです。誰のにしようかな。

 

楽しみですね。今夜は遅いのでもう寝ます。

 

では、おやすみなさい!

 

 

 

 

 

 

あー、やっと読み終わったよ。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

島本理生さんの「ナラタージュ」を読みました。予告してたやつね。有村架純ちゃんと松潤で映画化もされた作品です。島本さんの代表作と言っていい作品のようで、前々から読もうと思っていたお話です。ほら次、恋愛ものに近いのを書こうと思っているからさ。

 

そうそう、この週末は全く小説を書いてませんが、金曜日までにほぼ9割書き上がった。ミステリーの短編。オール読物に出すから100枚以内じゃないといけないのに、9割の時点で108枚になってしまっているという。

 

なんだかんだ言って130枚ぐらいになってしまうのかなあ。締め切りは6月20日だから、それまでにちょこちょこ見直しをして規定枚数まで削ってしまいたいと思います。どうにか思った通りのものになりそうです。良かった。ただ、大幅に削らなきゃいけないのがね。どうなるやら。でも今週中にはとりあえずの仕上げをしてしまいたいと思います。推敲は時間をかけて、ゆっくりと。

 

この週末は家族のイベントがあって疲れました。そんな中読んだ「ナラタージュ」、んー、そうか、こういうのもアリなんだねえ……。

 

 

 

 

主人公は泉ちゃんという大学生の女の子。高校時代にいじめられた経験を持っていて、その時優しくしてくれた演劇部の顧問、葉山先生に恋心を抱いています。葉山先生が泉ちゃんに「後輩の卒業公演に人が足りないんだ、出てくれないか」と誘いを掛けます。それによって再会した泉ちゃんと葉山先生の恋物語が本筋。

 

なんですが、葉山先生も泉ちゃんも社会性が乏しいんですね。人と相いれることができないんだけど、そんな自分を覆い隠して何とか社会の片隅に息づいてるって感じ。二人はそんな「異端者」の空気をかぎ取ってか親密になっていきます。でも、卒業時に泉ちゃんが告白しても葉山先生は「今は誰とも付き合う気がないんだ」とか言ってはぐらかす。ちゅーだけしてあとはつかず離れずって感じです。セックスもしてないのに二人には何か通じ合うものがあって、お互いがお互いを意識だけはしている、でもそれ以上の進展はしない、というもどかしい関係。

 

なんかね、序盤から中盤はとっても退屈な展開。「やからなんやねん」のオンパレードで、本を開くたびに私は寝ちゃっていましたよ。つまんないなあ、と正直思っていた。

 

だってね、前半はひたすら泉ちゃんのぼんやりとした日常が続いていくんです。生きることに必死になる必要のない女子大生の、全然盛り上がらない学生生活。この子には特に夢もないし、欲もない。「何かをしたい」って熱くなることのない子なんです。

 

たまーに葉山先生のことが諦められなくていじましくつかかっていったりはしますが、結局安全地帯から出ようとしない。人に言われたことをこなすだけ。この子の日常を読まされてなんの面白いことがあるんや、と正直思いました。私、人から受け取るだけで自分を持っていない人って嫌いなんですよ。

 

演劇をモチーフにしてるのかと思いきや、全然専門的な話は出てこないしね。劇中劇もさらっとあらすじが出てくるだけ。なにが言いたいのかよく分かんない。面白くなってきたのは、精神面だけで泉ちゃんと繋がっていた葉山先生が、実は離婚していたはずの嫁とまだ続いていたことが判明して、やけくそになった泉ちゃんが付き合いだした小野君って男の子が結構な粘着男と判明したあたりからでしょうか。

 

 

 

いやね、この話、ここがなんか微妙でね。

 

誰も悪人がいないんですよ。みんなが人生を一生懸命生きていて、自分の心に正直であろうとして、相手を傷つけまいと心を砕いて、でも人を傷つけざるを得なかった自分を悔いて後悔して、みたいないわゆる「いい話」なんですよ。やけくそになった、なんて書き方をしちゃいましたが、泉ちゃんが小野君を受け入れたのも本当に小野君を愛せると考えたからだし、小野君が泉ちゃんを束縛しちゃうのも泉ちゃんへの愛があったからなんですね。

 

嫁と別れてなかったことを泉ちゃんに隠して気を持たせていた葉山先生すら、「……俺の弱さを許してくれ」みたいな感じで、嫁と再構築すると決めてるくせに最終的に泉ちゃんとやっちゃいますから。なんのこっちゃ。それをいい思い出としちゃう泉ちゃんもよー分らん。これはもう性格の問題なんでしょうが、私にはちょっと理解できなかった。みんなが本当は嘘をついてるような気すらした。だって、自分の好きな男が嫁のもとに帰っていくんだぜ?「おうちに泊めてください」が最後のお願いとかあり得る?……まあ、あり得るからこのお話は多くの方の心に響いたのでしょうが。

 

でも、私はそんなラストは嫌だ。なんで別の女を選んだ男にやらせたらなあかんねん(下品)。みんなが一生懸命最善を考えて人生に向き合った結果なんでしょう。でもすっきりしなかったな。私が書いたらこのお話のラストは間違いなく刃傷沙汰だな。そういう意味で、「こういうのもアリなんだな」と思ったんです。

 

「こういうのもアリ」というか、「世間はこうなのか」と言った方が正しいのか。「これが受けるのか」かな。この話のラストで刃傷沙汰が起きても誰も喜ばなかったと思うんですよ。泉ちゃんは小野君と別れ、葉山先生と一回だけセックスして一人淡々と生きていく道を選びます。そして数年後に出会った男性と結婚するんですね。その男性の知り合いが葉山先生の古い友人で、「あいつは昔君の話をよくしてた。君のこと、好きだったんだと思うよ」なんて言ったりするからまたその先どうなるか分かんないけど。

 

泉ちゃんが相変わらず冷静だったからこそ、余韻が漂うラストを迎えることができたわけで。私にはこういう風味の作品は遠かったけど。「世間が望んでいるもの」はこういうものなんだなって知ることはできました。私がこういうのを書けるかどうかは別として、読んでみて良かったと思える作品でした。

 

 

 

この作品は島本さんが20の頃に書いたものなんだそうです。とても簡潔であっさりした文体ですが、美しい表現が多々溢れていてとても読みやすかったです。こういう簡潔な、感情を含まない表現、いいなあ。書けるようになりたい。どうしても奇をてらおうとしちゃうのが私の悪いところだと思うので、参考にしたいなと思いました。しかしなー、やっぱ毛色が違ったわ。

 

なんか我が身を振り返って切なくなってくるわ。こういうのに共感できない私って、汚れているしズルい人間なんでしょう。欲望丸出しで生きてますからね!自分大好きで自分第一で口ばっか達者ですからね!でもこーいう女が書くものが好きだっていう人だって世の中にはきっといるでしょうから。

 

相変わらずえぐーいイヤな気持ちになるやつを書いていきたいと思います。でも読むのは次も爽やかなやつ。せめて眠くならないのがいいな(;^_^A

 

というわけで、おやすみなさい!

うーん、人生いろいろっすねえ……。

 
こんばんは、渋谷です。
 
 
 
道尾秀介さんの「球体の蛇」を読みましたよ。これは夫の本棚から拝借した一冊。
 
今書いてるミステリーなのがもうすぐ書き終わりそうなので、大体的に分かりやすいミステリーはこれで最後にしようと思って読み始めました。まだ7割目ぐらいで謎解きには至ってないんだけど、大体の流れはできたので。ていうか、100枚未満の短編のはずだったのに時間かかったなあ。だって、なんか仕組みが複雑でちょっと書いたら頭がぼーっとしてきてよく分かんなくなってきちゃうのよ。
 
真面目に書いてるんですが。なんか私が書くやつにしては難しくて、うまくいってるのかが分かんなくて悩みに悩んでしまう。難産っていうのはこういうのを言うんですかねえ。はよ次に行きたい。でもまだクライマックスを書かなきゃ。もうちょい頑張りましょう。
 
で、明日は図書館に行って色んな種類の一般小説を借りてこようと思っている。その前に最後の道尾秀介さん。「球体の蛇」、思ったよりミステリーじゃなくて人生ドラマ、だったかな。
 
 
 
主人公は高2のトモくんという男の子。中2のころに両親が離婚し、親権を持った父親が東京で女と住むっていうんで、お隣に住んでいた乙太郎さんのおうちで引き取られることになります。このおうちは、乙太郎さんの奥さんの逸子さんと長女のサヨちゃんが亡くなってしまって、乙太郎さんと次女のナオちゃんの二人暮らしの家庭です。
 
このトモくんはなかなかの屈折ぶりで、道端で見かけた美人さんが出入りするおうちの床下に潜り込んで、エッチな声を聴いては興奮しちゃう変態さんだったりします。天井裏でうろうろする変態は知ってますが、床下は初めて聞いたかも知れん。
 
この美人さんとトモくんはただならぬ仲になるのですが、美人さんこと智子さんは今は亡きサヨちゃんによく似た女性だったりします。旅人を誘い込む森のような、深い闇を持ち自ら命を絶ったサヨちゃん。初恋の人だったサヨちゃんと同じ、破滅的な香りがする年上女性智子さんに惹かれるトモくんですが、そんな恋がうまくいくはずがありません。智子という女性を真ん中に据えて、トモくんに好意を寄せるナオちゃん、智子と身体を重ねてしまう乙次郎さん、サヨの身代わりのように智子を求めるトモくんが、もどかしい思いを三つ巴の様相で絡ませていくことになるのです。
 
 
 
まああれね、読み終わって感じるのは、「言いたいことがあるんなら、ちゃんと口で言わんと伝わらない」ってことね。
 
登場人物はみんないい人で相手を思いやっているんですが、相手を思うばかりに、と同時に自分にほんの少しの勇気が足りないばかりに、言葉が足りなくてちょっとした誤解を生みだすのよね。一人の女と同時にできちゃうおっさんと男子高校生と、おっさんの娘でトモくんに惚れちゃってるナオちゃん。で、あっちもこっちもで「あの人を傷つけたくないからこれは伏せておいて」って枕詞をおいてから中途半端な告白をする。気を遣うあまりにすべては語らない。それでいいんだと思ってるんです。痛い事実は知らない方が相手のためだって。でも、本当に相手を思うのならば本当はそれって違いますよね?
 
結局のところ、事実を知らなきゃ当事者は「騙された」って思っちゃう。人間だからこその優しい気持ちがすれ違いを生む。そして最後には、「相手を思いやる嘘」が大きな嘘を生み出し、トモくんの人生を決定づけていくのです。
 
……んー、これね、腹立つ人は腹立つ話なのかもしれないな、と思うんですよ。なんせまどろっこしいんです。登場人物がみんな言いたいことをちゃんと言わないから。関西系の人とかB型の人とか結構理解しがたい話かもしれない。今現在私、この立場に置かれているんだ。身体を壊した人がいて、でもそれを内緒にしなくちゃいけなくて、でも内緒にしてちゃいけない気がして悩んでる。
 
悩んでる本人は秘めておきたいのかも知れない。でも、周りの人間はその人を思うからこそ知りたかったとも思う。結局は当人の希望が一番だから、口をつぐんだままでいるつもりだけど、これが本当に正しいんだろうか。誰もが納得する結末って結局はあるんだろうか。
 
ほら、私関西生まれでB型だから。「球体の蛇」も、最終的にはたった一人が納得する結末が待っていました。トモくんはそのたった一人を守っていくと決めてラストを迎えました。どうかね……隠された真実に誘導されて辿り着いて、それで人間は納得できるものなのでしょうか。ナオちゃーん、トモくんのことが好きなんだったらもうちょっと正面からぶつかった方がよかったんじゃないかと思うよ!小細工で手に入れた愛は壊れやすいんじゃないかと思うよ!モチーフだったスノードームみたいにね!結婚生活って決してゴールインではないからね!
 
 
 
 
……というわけで、なんせ人間ドラマだった「球体の蛇」。いや、いいんです。私この後人間ドラマを書こうと思ってるから。「これって恋愛だったのかな」って、最後のページで登場人物が気付くような人間ドラマを書こうと思ってるから。だからまあナイスタイミングっちゃナイスタイミング。でもまあ、ミステリーではなかったかな。
 
抒情的な場面が多く、引き込まれて一気に読み終えてしまいました。恋未満の恋、次の私が書きたいと思ったものが書かれていました。ちょっとした狂気とね。道尾秀介さんは底知れませんね。
 
さあ次からは女性作家メインで一般小説を読んでいきますよ。癖のあるやつが読みたい。でも今更キミスイとかも読みたい。読みまくります。楽しみだな。
 
というわけでまたねっ。
 
おやすみなさいー!

ゴールデンウィークが終わるよっ!

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

長かった10連休、休み疲れの方も多くいらっしゃるんじゃないでしょうか。

 

もちろん休みが多いっていいことなんですけどねえ。そうは言っても10日は長いわ。

 

主婦には修行のような10日間でしたよ。やっと終わる。小説書ける。

 

この連休中まったく書けなかったんですよ。ついでに書くとなんか変なものになっちゃいそうな気がして。で、休みの間に気付いた。

 

三人称で書いてた短編、一人称に書き直してみようと思って。一人称、プラス三人称他視点。主人公が変人なので、その方が変人の変人らしさが伝わりやすいかなって。

 

まあ明日から書いていきましょう。とにかく自由はすぐそこだ!あー楽しみ。そんなことを思いながら本を読みました。道尾秀介さんの「水の柩」です。もう遅いから、簡単に。

 

 

 

中二の男の子が主人公の、青春ミステリーです。ミステリーな要素っていうのは、書き手である道尾さんが構成によってもたらしたちょっとしたトリックで、それがなければ普通に男の子の成長ストーリー。

 

ゴリゴリのミステリーを求めて読むとちょっと物足りないかもしれないなあ。でも、美しい風景と「天泣」と称されるお天気雨、何者にもなれない少年、命を捨てようとしている少女。つぶれかけた実家の旅館、地方の鬱屈、ダムの下に沈んだ村に残された秘密、十分に楽しめました。ちょっと全体小説的なスケールさえあった。

 

主人公の少年逸夫くんは、家族や実家が経営する旅館の従業員たちに囲まれ、何不自由なく大きくなった男の子です。人に囲まれ愛されて。そんな自分を「平凡でつまんない人間」だと思っている。平凡じゃない何かを手に入れたいと思っています。

 

そんな逸夫くんに、「タイムカプセルに入れた未来の自分への手紙」を別のにすり替えたいから、一緒に掘り起こしてよ、と無理難題を投げかけるのが敦子ちゃんというクラスメイト。両親は離婚しており、お母さんは子供に興味を持たずにしかも学校ではいじめられています。敦子ちゃんの願いを叶えるため、ふたりは夜の学校に忍び込み泥まみれになりながらタイムカプセルを掘り起こし、計画を遂行します。

 

さて、敦子は過去に書いた手紙を、どんな内容のものに入れ替えたのか。そのあとひとり、自殺をすべくダムに向かう敦子。そもそもプロローグが、「敦子が自殺しに向かったダム」を再び訪れる逸夫くん、という設定だったので、最悪の結果を想像しながらページをめくりました。でもさすが道尾さん、その先には優しく美しいラストが待っているんだよなあ……。

 

 

 

かいつまんでのあらずじなので、いまいち何が何だかなのですが(;^_^A

 

一番大きな主題は、敦夫くんが「平凡な人生をどのように彩るのも自分次第だと気付く」というところなのかなと思います。ぼんやりした男の子なんだけどね。敦子ちゃんを救い、一皮むけて男になりましたよ。父ちゃんとは殴り合うし。実家のつぶれかけの旅館継ぐことを決心するし。

 

敦夫くんのおばあちゃんの描写もすごくよかったな。本当は恵まれない生い立ちだったのに、過去を忘れたいがために周囲に虚勢を張っていたおばあちゃん。お年寄りって、一人一人に大きなドラマが隠れてるんだよね。別に隠してあるわけじゃないけど、その辺をのんびり散歩してるおばあちゃんだって、一冊の小説になりそうな過去がある。面白いね。お年寄りの話、ちょっと聞いてみたいなって思った。私みたいな若輩にだって過去がある。いわんやお年寄りをや、だね。

 

思いがけず心が洗われました。面白かったです。さあではいい気分のまま寝よう。

 

では、おやすみなさい!