読書感想文123 瀬尾まいこ 卵の緒 | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

第二弾ですよ。

 
こんにちは、渋谷です。
 
 
 
女性作家でこんにちは、の時間です。本日は第2回、瀬尾まいこさんです。
 
今年の本屋大賞を獲られた方ですねー。「そしてバトンは渡された」でしたっけ。読んでないんですが、本屋さんでチラ見したところによると、保護者が入れ替わり立ち替わりする女子高生のお話でしたね。複雑な生い立ちの女の子のお話なのに、とても温かい作品なのだとか。
 
あんまりね……。私の好みではないんだろうなと思ってたんですね。幸せな子の幸せな話を読まされて何なんだっていう。そりゃ良かったねとは思うけど、私にとっては他人の話。困難を克服するような見せ場がないんじゃ食指が動かんわ、と思ってたんですね。
 
でもまあ、本屋大賞の作家さんだし。とりあえずデビュー作でも読んでみよーかなと思って借りてきたこの「卵の緒」。
 
うちの地元が主催の、坊っちゃん文学賞受賞作です。あの賞で華々しいのは「がんばっていきまっしょい」ぐらいだと思ってました。まさか、本屋大賞獲るような作家さんが排出されていたとは。
 
で、「卵の緒」です。この本には、表題作の「卵の緒」と「7's blood」という作品が収録されています。
 
これがなんと、両方とも複雑な生い立ちの子供の話なのよねえ……。
 
 
 
「卵の緒」は小学生の育生くんという男の子が主人公。彼は自分を捨て子だったのではないかと疑っています。これが不思議なことに、特に理由もなくそう感じているんですね。
 
お父さんはおらず、お母さんとふたり暮らし。お母さんとの関係は良好です。近所に住む母方の祖父母にも可愛がられています。それでなんで捨て子疑惑を抱くのでしょう。……まあ、ちょっと過敏な子なのかね。そして学校で「へその緒」なるものの存在を知り、「これで捨て子疑惑がはっきりするぞ!」と勇んで帰宅した育生くん。
 
お母さんに「へその緒見せて!」と詰め寄ると、「いやあねえ、あんたは卵で産んだんだから、へその緒なんてあるわけないじゃない」とはぐらかすお母さん。……えっ、すげえな母ちゃん、そうきたか……!
 
お母さんはまだ若く、18で育生くんを産んだ計算になります。このお母さんが恋をし、職場の同僚と結婚する段になって育生くんに真実を告げる。結局、育生くんはもらわれっ子だったんですね。ラストは新しいお父さんとの間に出来た妹と仲良く過ごす育生くん。うん、良かったね。新しいお父さんがいい人で良かったよ……。
 
 
 
「7's blood」は、異母兄弟の交流のお話。すでに亡くなっている父親が、浮気相手に産ませた子と同居することになった七子。弟の七生は母親が刑務所に入ってしまい、七子の母親に引き取られたんですね。ぎくしゃくする姉弟ですが、七生は男をとっかえひっかえする母親に育てられているので卒がありません。次第にふたりは打ち解けていきます。
 
七子の母親は、七生を引き取った途端に入院してしまいます。やがて亡くなり、ふたりっきりの肉親の絆は強くなるのに、七生の母親が出所して離れ離れになる日がやって来ます。うーん……でもまあ、ふたりともしっかりしてるし。きっと強い大人になるよ。ね、うん、頑張って。
 
 
 
そんなわけで、面白くないわけではなかったのですが、そんなに響かなかった瀬尾まいこさん。文章はしっかりしてますし、実際一気読みだったんですが、おそらくこの人が書きたいテーマが私には遠いところにあるのかと。「他人だって家族になれる!」「人の愛の底力を信じたい!」みたいなのが私、よー分からんのよ。表面上な意味では分かりますが。
 
ああ……そうですか……みたいにしかならない。決して面白くないとは言いませんが、はりきって他の作品を探すかと言えば……ないな。
 
なんかひりつく火傷の痛みみたいなのが好きなんですね、私。あったかい優しいお話、読みたい方にはオススメの作家さんです。
 
というわけで、ごきげんよう〜。