なんかもう煙草臭い……。
こんばんは、渋谷です。
小説現代長編新人賞、受賞作探しはこれにて終了。今日で8冊目ですかね。大賞受賞作と、たまにある奨励賞受賞作を読みました。この小説現代の賞、時代小説が受賞することが多いんですね。
私、今んとこ時代小説を書きたいという志は持ってませんので、現代のお話で手に入るものを読んでみました。あ、1冊「幕末ダウンタウン」は時代物だったけど。いや、あれはコメディだから別か。とにかく、小説現代の傾向と対策は本日で終了です。8冊読んでみて思ったのは……、暴力的なエネルギーを持ったものが求められてるって感じかな。ほのぼの、とかほっこり、とかは蹴散らすようなものばっかりだったように思います。
「表面だけきれいに整えた恋愛小説」なんかは1冊もなかったな。オフィスラブもお仕事物も遠い世界のお話だった。泥臭く、痛々しいお話ばかりでしたね。でも私はそういうの好きだから、楽しい探索期間でした。で、最後の「東京駅之介」よ。
これは!泥臭いどころの話じゃなくて、私、もう辛くて読み進めるのもしんどかった……!
まず何がどうってね、本が煙草臭いのよ。図書館で借りたんだけど。予約までして待って待って借りた本なんだけど。
紙って匂いを吸い込むんだよね。前の読者―、どんだけ煙焚きしめた部屋で読んでんだよ!くっさくて、ただでさえ気が重くなるのに気分まで悪くなったよ!私は8年前までヘビースモーカーだったんですが、その私でも臭かったんだから全然吸わない人は部屋に置いとくことすら嫌だろうよ!借りたものなんだから気を遣えっつーの!お前の本じゃないんだよっ。
と、いい具合に怒ってみました。ファブリーズ降るわけにもいかんしなあ。とりあえず今日はベランダで風に当ててみたいと思います。次の人、ごめんね。私が焚きしめたわけじゃないの。前のやつが悪いのよっ。
そいで中身ももうしんどい。作者の火田良子さんは1975年生まれ。第二回……ですから、2007年の奨励賞受賞作です。この方の詳細は、ネットで探しても出てこないんですね。他の著作も見つかりません。だからこれ一冊なのかな。でも読んでみて納得。あまりに、あまりに特異な世界を描いたお話なんですもの……。
時代は戦後すぐ。主人公は東京駅之介という少年です。5歳。東京駅に捨てられていた孤児です。智恵子さんという慈悲深い女性に拾われ、のちに養子になります。でも、智恵子さんところの旦那の亨てーのがいかん。
飲む打つ買うの三拍子に、暴力を振るうわ駅之介を邪険にするわ。絶望した智恵子さんは、実子ふたりと服毒自殺で帰らぬ人になってしまいます。
智恵子さんを慕っていた駅之介は、絶望の果てに自分が捨てられていたという東京駅に向かいます。そこで、戦災孤児たちのホームレスの集団に混じって生きていくことになります。舵さんという元締めのもと駅之介は、オッペイという年長の少年に守られながら、立派ないっぱしのごろつきとなるべく命がけで生きていくことになるのです。
――このあたりで、私が思い出したのは月影先生ですかね。あの方、「幼い頃はスリ、かっぱらい、なんでもやったわ」とか病床でおっしゃってましたよね。ガラスの仮面。まさにああいう少年窃盗団の一味だった駅之介。もうねー、汚いのよ!もちろん風呂なんか入ってないし、糞尿まみれの虱まみれ、少年たち同士の友情、みたいなものも描かれていますが、それより圧倒的に汚いわ絶望的だわ!同じ年ごろの子供を持つ親として、もう他人の話として受け取ることができませんでした。実際こういう戦災孤児というのはいたのだろうし哀しい話ですが、目の前に突き付けられるとしんどいわあ……。
駅之介は風体は汚らしいですが、もともとのお顔が可愛らしいのですね。そして頭がいい。あっという間に少年たちに倣って立派なゴロツキになります。けれどそんな駅之介を闇から救い出そうとした人がいました。駅之介が東京駅で智恵子に拾われた時、対応した駅員。偶然にもその男が、肺炎を患って死にかけていた駅之介を拾い、看病し、養育してくれようとします。
そのままいれば幸せに生きていけるはずの駅之介。でも、生みの親に捨てられ、智恵子に捨てられ、もう何も信じられない駅之介はその救いの手すら振りほどいてしまう。人買いのハンチングに目を付けられ、首根っこ掴まれ売り飛ばされそうになる駅之介は、最後どうなってしまうのでしょうか……!
あー……、疲れた。なんか、とんでもなく疲れる話でした。闇金ウシジマくんとか、カイジとか、ああいうしんどさをもたらすお話です。しかも、「悪人だったんだから追い込まれてもしょーがないね」みたいな逃げを許してくれない作品です。「時代だから」「弱いものが潰されるのは仕方ない」、そういう納得の仕方しかできない。
しかも被害者が子供なんだよ。私は子供がいるので、子供が泣く話が嫌いです。泣いてもいいけど、最後にはちゃんとハッピーエンドを用意しておいてほしい。なのに最後も微妙な結末なんだよなあ、バッドエンド、とは言わんけど。
確かに読みごたえはある話でしたが、読後感……どころか、読んでる最中から気分悪かった。まあ、鼻が曲がるぐらい煙草臭かった、て言うのもありますけどねえ……。
そんなわけで、小説現代終了!あとは気になる本を読んでいこうかな。今日図書館で塩田武士さんと加藤元さんの本借りた。今回の受賞作チャレンジで知った作家さんです。楽しみ。あと、窪美澄さんと吉本ばななさんも借りたし。
その前に、あれも読んどこうかと思っている。「KAGEROU」。綾香の旦那さんが、ポプラ社新人賞を獲ったやつですね。話題になった本、ていうのも追いかけると楽しそうですよね。話題になった理由はなんなのか。そこに本当に輝きがあるのか、ただの商業的な都合なのか。
あっ、今日も明日がきそうだ!もう寝よう。あーまた週末。一週間早い。風のようだわ。
というわけで、おやすみなさい!