新しいお話、書き始めました。
こんばんは、渋谷です。
さあ始まったよ新しいお話!死ぬ気満々の女子高生が、死ぬ前にロストバージンしようと思って変わったおじさんを追い掛け回すお話です。
こう書くとなんかラブコメみたいですが、意外にシリアス。変わったおじさんは元ヴィジュアル系バンドのヴォーカルなんですね。死にたい人とか引き止めたい人とか、死んじゃった人とか死んじゃった人を忘れられない人とかもうすぐ死にそうな人とかが出てきててんやわんや。処女喪失したくてたまらない女子高生が暴れますが、私が書くものにしては珍しくエロシーンはなしです。だってテーマは「死」なので。
生きていくって、死ぬっていったいどういうことなんでしょうねえ。どうせ死ぬのに何のために生まれてくるんだ。色々考えて生きてはきたんですよ。考察のために縋ったのは主に仏教。あと哲学。でも結局人間は「生きるために生きる」らしい。なんじゃそりゃ。全然答えになってないっちゅーの。
テーマソングはBUCK-TICKのNEW WORLD。自分的には面白いものになりそうな気がしていますが、そうなればいいな。そんな新しいお話を書きながら読んだ窪美澄さんの「晴天の迷いクジラ」もなんとテーマは「自殺」。うーん、タイムリーだねっ。
でもちょっとねえ、間延びしたような。なんせ長い。私の好きな窪さんの作品で山田風太郎賞受賞作なのですが、ちょっとクリーンヒット、とはいかなかったんですよねえ……。
主要な登場人物は三名。デザイン事務所で働くデザイナーの由人くんと、その事務所の社長野々花さん、野々花さんの故郷で女子高生をしている正子ちゃんです。
この三人はそれぞれ悩みを抱えていて、もうすぐ死んじゃいそうです。由人くんは彼女に振られ、ブラックな会社の激務に押しつぶされうつ状態。野々花さんはその会社を潰しちゃいそうだし、過去に捨ててきた子供のことが心残りでこれまたうつ状態。正子ちゃんは異常に干渉してくる毒母に苛まれうつ状態。みんなもう死んじゃいたいと思っています。この三人が野々花さんの故郷に集結し、座礁し全国的なニュースになっていたクジラを救いたいと願う。
クジラって一度座礁したら海に返しても大体死んじゃうんですって。死にたいと思っている人間は、周りがどんな声を掛けようが死ぬときには死ぬ。浅瀬で今にも息絶えてしまいそうなクジラと自己を重ね合わせ、三人は今までの人生を振り返ります。ラストには光が見え、あたたかい感情が読者を包みます。いい話。いい話……ではあるんですが。
なんせねえ、この三人の生い立ちの話が長いのよ!長い!文字数がどうこうっていう問題じゃなくて、キャラ自体に輝きがないから(酷い言い様ですが、自殺を望む追い詰められた人間だってことは事前にこっちには明かされてるので)その過去を読まされても心を動かされることがないのよ。読んでる方も「死にたくなる理由をこれから語るのですね?」と身構えているわけですから。ものすごーく丁寧な描写で、その状況に至るまで幼少期から書き綴られるのですが、何ら盛り上がらん!
前回読んだ西加奈子さんの「さくら」も丁寧な描写で三兄弟の生い立ちから崩壊までが綴られていましたが、あっちは全然退屈しなかったんだよなあ。むしろ心地よく三兄弟の幼少期に浸ることができた。なにが違うんだろう……キャラの違い?漂う幸福感?わかんない。でも、決定的な違いがあるんだよなあ……。
でも、やっぱり私は窪さんが好きだなと思うんですね。死にたい三人は疑似家族として海が見える田舎町で数日を過ごします。追い詰められた精神は次第に解きほぐされ、自分が元いた場所を振り返る余裕までが生まれる。毒母に冒されていた正子ちゃんは、探しに来た両親の目の前で自殺を企てる度胸も湧いてくるし。いいねっ、それぐらいはやっちゃらないかん!
九州の片田舎の美しい海の風景。細かく追ったからこそその先に広がる広い広い世界。いいですね。窪さんって私がすっきりするなーと思う結末を持ってきてくれる作家さんだなと思います。描写も美しいし。ただ今回は、すごく回りくどかった。「ふがいない僕は空を見た」の勢いだったら、半分の量で話が終わってたんじゃないかななんて勝手に思う。しかもその方が、私的には好みだったような……なんて。
まったくもう、一作家志望が色々とエラそうですね。でもまあ素直な感想。参考にして、今書いてる話は事実を端的に突き付けていくような文体で書きたいと思います。主人公が死にたい理由も懇切丁寧に書かない。何となく想像してくれ、ぐらいに突き放してみよう。
タイムリーに、似たテーマの話が読めて良かったです。窪さんは他のお話も読んでみたいと思います。
あ、明日がきそう。寝よう。では。
おやすみなさいー!