読書感想文88 島本理生 ナラタージュ | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

あー、やっと読み終わったよ。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

島本理生さんの「ナラタージュ」を読みました。予告してたやつね。有村架純ちゃんと松潤で映画化もされた作品です。島本さんの代表作と言っていい作品のようで、前々から読もうと思っていたお話です。ほら次、恋愛ものに近いのを書こうと思っているからさ。

 

そうそう、この週末は全く小説を書いてませんが、金曜日までにほぼ9割書き上がった。ミステリーの短編。オール読物に出すから100枚以内じゃないといけないのに、9割の時点で108枚になってしまっているという。

 

なんだかんだ言って130枚ぐらいになってしまうのかなあ。締め切りは6月20日だから、それまでにちょこちょこ見直しをして規定枚数まで削ってしまいたいと思います。どうにか思った通りのものになりそうです。良かった。ただ、大幅に削らなきゃいけないのがね。どうなるやら。でも今週中にはとりあえずの仕上げをしてしまいたいと思います。推敲は時間をかけて、ゆっくりと。

 

この週末は家族のイベントがあって疲れました。そんな中読んだ「ナラタージュ」、んー、そうか、こういうのもアリなんだねえ……。

 

 

 

 

主人公は泉ちゃんという大学生の女の子。高校時代にいじめられた経験を持っていて、その時優しくしてくれた演劇部の顧問、葉山先生に恋心を抱いています。葉山先生が泉ちゃんに「後輩の卒業公演に人が足りないんだ、出てくれないか」と誘いを掛けます。それによって再会した泉ちゃんと葉山先生の恋物語が本筋。

 

なんですが、葉山先生も泉ちゃんも社会性が乏しいんですね。人と相いれることができないんだけど、そんな自分を覆い隠して何とか社会の片隅に息づいてるって感じ。二人はそんな「異端者」の空気をかぎ取ってか親密になっていきます。でも、卒業時に泉ちゃんが告白しても葉山先生は「今は誰とも付き合う気がないんだ」とか言ってはぐらかす。ちゅーだけしてあとはつかず離れずって感じです。セックスもしてないのに二人には何か通じ合うものがあって、お互いがお互いを意識だけはしている、でもそれ以上の進展はしない、というもどかしい関係。

 

なんかね、序盤から中盤はとっても退屈な展開。「やからなんやねん」のオンパレードで、本を開くたびに私は寝ちゃっていましたよ。つまんないなあ、と正直思っていた。

 

だってね、前半はひたすら泉ちゃんのぼんやりとした日常が続いていくんです。生きることに必死になる必要のない女子大生の、全然盛り上がらない学生生活。この子には特に夢もないし、欲もない。「何かをしたい」って熱くなることのない子なんです。

 

たまーに葉山先生のことが諦められなくていじましくつかかっていったりはしますが、結局安全地帯から出ようとしない。人に言われたことをこなすだけ。この子の日常を読まされてなんの面白いことがあるんや、と正直思いました。私、人から受け取るだけで自分を持っていない人って嫌いなんですよ。

 

演劇をモチーフにしてるのかと思いきや、全然専門的な話は出てこないしね。劇中劇もさらっとあらすじが出てくるだけ。なにが言いたいのかよく分かんない。面白くなってきたのは、精神面だけで泉ちゃんと繋がっていた葉山先生が、実は離婚していたはずの嫁とまだ続いていたことが判明して、やけくそになった泉ちゃんが付き合いだした小野君って男の子が結構な粘着男と判明したあたりからでしょうか。

 

 

 

いやね、この話、ここがなんか微妙でね。

 

誰も悪人がいないんですよ。みんなが人生を一生懸命生きていて、自分の心に正直であろうとして、相手を傷つけまいと心を砕いて、でも人を傷つけざるを得なかった自分を悔いて後悔して、みたいないわゆる「いい話」なんですよ。やけくそになった、なんて書き方をしちゃいましたが、泉ちゃんが小野君を受け入れたのも本当に小野君を愛せると考えたからだし、小野君が泉ちゃんを束縛しちゃうのも泉ちゃんへの愛があったからなんですね。

 

嫁と別れてなかったことを泉ちゃんに隠して気を持たせていた葉山先生すら、「……俺の弱さを許してくれ」みたいな感じで、嫁と再構築すると決めてるくせに最終的に泉ちゃんとやっちゃいますから。なんのこっちゃ。それをいい思い出としちゃう泉ちゃんもよー分らん。これはもう性格の問題なんでしょうが、私にはちょっと理解できなかった。みんなが本当は嘘をついてるような気すらした。だって、自分の好きな男が嫁のもとに帰っていくんだぜ?「おうちに泊めてください」が最後のお願いとかあり得る?……まあ、あり得るからこのお話は多くの方の心に響いたのでしょうが。

 

でも、私はそんなラストは嫌だ。なんで別の女を選んだ男にやらせたらなあかんねん(下品)。みんなが一生懸命最善を考えて人生に向き合った結果なんでしょう。でもすっきりしなかったな。私が書いたらこのお話のラストは間違いなく刃傷沙汰だな。そういう意味で、「こういうのもアリなんだな」と思ったんです。

 

「こういうのもアリ」というか、「世間はこうなのか」と言った方が正しいのか。「これが受けるのか」かな。この話のラストで刃傷沙汰が起きても誰も喜ばなかったと思うんですよ。泉ちゃんは小野君と別れ、葉山先生と一回だけセックスして一人淡々と生きていく道を選びます。そして数年後に出会った男性と結婚するんですね。その男性の知り合いが葉山先生の古い友人で、「あいつは昔君の話をよくしてた。君のこと、好きだったんだと思うよ」なんて言ったりするからまたその先どうなるか分かんないけど。

 

泉ちゃんが相変わらず冷静だったからこそ、余韻が漂うラストを迎えることができたわけで。私にはこういう風味の作品は遠かったけど。「世間が望んでいるもの」はこういうものなんだなって知ることはできました。私がこういうのを書けるかどうかは別として、読んでみて良かったと思える作品でした。

 

 

 

この作品は島本さんが20の頃に書いたものなんだそうです。とても簡潔であっさりした文体ですが、美しい表現が多々溢れていてとても読みやすかったです。こういう簡潔な、感情を含まない表現、いいなあ。書けるようになりたい。どうしても奇をてらおうとしちゃうのが私の悪いところだと思うので、参考にしたいなと思いました。しかしなー、やっぱ毛色が違ったわ。

 

なんか我が身を振り返って切なくなってくるわ。こういうのに共感できない私って、汚れているしズルい人間なんでしょう。欲望丸出しで生きてますからね!自分大好きで自分第一で口ばっか達者ですからね!でもこーいう女が書くものが好きだっていう人だって世の中にはきっといるでしょうから。

 

相変わらずえぐーいイヤな気持ちになるやつを書いていきたいと思います。でも読むのは次も爽やかなやつ。せめて眠くならないのがいいな(;^_^A

 

というわけで、おやすみなさい!