読書感想文87 道尾秀介 球体の蛇 | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

うーん、人生いろいろっすねえ……。

 
こんばんは、渋谷です。
 
 
 
道尾秀介さんの「球体の蛇」を読みましたよ。これは夫の本棚から拝借した一冊。
 
今書いてるミステリーなのがもうすぐ書き終わりそうなので、大体的に分かりやすいミステリーはこれで最後にしようと思って読み始めました。まだ7割目ぐらいで謎解きには至ってないんだけど、大体の流れはできたので。ていうか、100枚未満の短編のはずだったのに時間かかったなあ。だって、なんか仕組みが複雑でちょっと書いたら頭がぼーっとしてきてよく分かんなくなってきちゃうのよ。
 
真面目に書いてるんですが。なんか私が書くやつにしては難しくて、うまくいってるのかが分かんなくて悩みに悩んでしまう。難産っていうのはこういうのを言うんですかねえ。はよ次に行きたい。でもまだクライマックスを書かなきゃ。もうちょい頑張りましょう。
 
で、明日は図書館に行って色んな種類の一般小説を借りてこようと思っている。その前に最後の道尾秀介さん。「球体の蛇」、思ったよりミステリーじゃなくて人生ドラマ、だったかな。
 
 
 
主人公は高2のトモくんという男の子。中2のころに両親が離婚し、親権を持った父親が東京で女と住むっていうんで、お隣に住んでいた乙太郎さんのおうちで引き取られることになります。このおうちは、乙太郎さんの奥さんの逸子さんと長女のサヨちゃんが亡くなってしまって、乙太郎さんと次女のナオちゃんの二人暮らしの家庭です。
 
このトモくんはなかなかの屈折ぶりで、道端で見かけた美人さんが出入りするおうちの床下に潜り込んで、エッチな声を聴いては興奮しちゃう変態さんだったりします。天井裏でうろうろする変態は知ってますが、床下は初めて聞いたかも知れん。
 
この美人さんとトモくんはただならぬ仲になるのですが、美人さんこと智子さんは今は亡きサヨちゃんによく似た女性だったりします。旅人を誘い込む森のような、深い闇を持ち自ら命を絶ったサヨちゃん。初恋の人だったサヨちゃんと同じ、破滅的な香りがする年上女性智子さんに惹かれるトモくんですが、そんな恋がうまくいくはずがありません。智子という女性を真ん中に据えて、トモくんに好意を寄せるナオちゃん、智子と身体を重ねてしまう乙次郎さん、サヨの身代わりのように智子を求めるトモくんが、もどかしい思いを三つ巴の様相で絡ませていくことになるのです。
 
 
 
まああれね、読み終わって感じるのは、「言いたいことがあるんなら、ちゃんと口で言わんと伝わらない」ってことね。
 
登場人物はみんないい人で相手を思いやっているんですが、相手を思うばかりに、と同時に自分にほんの少しの勇気が足りないばかりに、言葉が足りなくてちょっとした誤解を生みだすのよね。一人の女と同時にできちゃうおっさんと男子高校生と、おっさんの娘でトモくんに惚れちゃってるナオちゃん。で、あっちもこっちもで「あの人を傷つけたくないからこれは伏せておいて」って枕詞をおいてから中途半端な告白をする。気を遣うあまりにすべては語らない。それでいいんだと思ってるんです。痛い事実は知らない方が相手のためだって。でも、本当に相手を思うのならば本当はそれって違いますよね?
 
結局のところ、事実を知らなきゃ当事者は「騙された」って思っちゃう。人間だからこその優しい気持ちがすれ違いを生む。そして最後には、「相手を思いやる嘘」が大きな嘘を生み出し、トモくんの人生を決定づけていくのです。
 
……んー、これね、腹立つ人は腹立つ話なのかもしれないな、と思うんですよ。なんせまどろっこしいんです。登場人物がみんな言いたいことをちゃんと言わないから。関西系の人とかB型の人とか結構理解しがたい話かもしれない。今現在私、この立場に置かれているんだ。身体を壊した人がいて、でもそれを内緒にしなくちゃいけなくて、でも内緒にしてちゃいけない気がして悩んでる。
 
悩んでる本人は秘めておきたいのかも知れない。でも、周りの人間はその人を思うからこそ知りたかったとも思う。結局は当人の希望が一番だから、口をつぐんだままでいるつもりだけど、これが本当に正しいんだろうか。誰もが納得する結末って結局はあるんだろうか。
 
ほら、私関西生まれでB型だから。「球体の蛇」も、最終的にはたった一人が納得する結末が待っていました。トモくんはそのたった一人を守っていくと決めてラストを迎えました。どうかね……隠された真実に誘導されて辿り着いて、それで人間は納得できるものなのでしょうか。ナオちゃーん、トモくんのことが好きなんだったらもうちょっと正面からぶつかった方がよかったんじゃないかと思うよ!小細工で手に入れた愛は壊れやすいんじゃないかと思うよ!モチーフだったスノードームみたいにね!結婚生活って決してゴールインではないからね!
 
 
 
 
……というわけで、なんせ人間ドラマだった「球体の蛇」。いや、いいんです。私この後人間ドラマを書こうと思ってるから。「これって恋愛だったのかな」って、最後のページで登場人物が気付くような人間ドラマを書こうと思ってるから。だからまあナイスタイミングっちゃナイスタイミング。でもまあ、ミステリーではなかったかな。
 
抒情的な場面が多く、引き込まれて一気に読み終えてしまいました。恋未満の恋、次の私が書きたいと思ったものが書かれていました。ちょっとした狂気とね。道尾秀介さんは底知れませんね。
 
さあ次からは女性作家メインで一般小説を読んでいきますよ。癖のあるやつが読みたい。でも今更キミスイとかも読みたい。読みまくります。楽しみだな。
 
というわけでまたねっ。
 
おやすみなさいー!