いい天気なのにー。
こんばんは、渋谷です。
いいお天気の土曜日でしたね。ウォーキングマニアはウォーキングに出かけましたが、うちの夫と子供ときたらインドアでいかん。
誘っても二人でプレステやってて聞いちゃいない。「ママ出かけるよ!今出かけたらもうしんどくて午後はゴロゴロするよ?いいの?一緒に行かんの?」と訊いても「行かーん!」
で、午後からゴロゴロしながら本読んでたら、夫に「だらついてるねえ」とか言われる始末。
なんのこっちゃ。まあ私はマイペースなので勝手に散歩行って勝手にゴロつきますけど。
せっかくのいい天気を無駄にできる二人は、似た者親子ですわ。私はどうも二人とは気質が違うようです。父と子が似ているのは当然ですけどね。春先の散歩、最高なのにねえ。
さて、そんなわけで午後ゴロつきながら読んだ「Esprit 機知と企みの競演」。短編集です。収録作家さんが
藤田宜永
岸田るり子
乾緑郎
天祢涼
曽根圭介
中田栄一
となっております。
この本は依然読んだ「Shadow 闇に潜む真実」と同じで、「日本推理作家協会賞」の選考に残った作品をまとめた短編集なんですね。だから粒ぞろいのはずが、今回はちょっと外れ……と言っちゃなんですが、「ん?」と思う作品が思ったより多かった。これ、好みなんでしょうけど、好みって言葉でまとめるのもどうなんかねえ。
例えば、途中まで主人公があまりに稚拙な謎解きに満足しちゃってる、みたいな。「おいおい、絶対それ違うだろ」みたいなところでしめしめしたりしてる。もちろんそのあとに奇想天外なラスト(大体残り2ページとかで)が待ってるんですが、なんか私この流れが嫌いみたいです。途中でしらけちゃう。「この後真相にたどり着くんだろうな」とは思うけど、その前にもう熱が冷めちゃう。今回この流れの話が入ってました。うーん。
あと、犯人を追い詰めて、言質をとることで一件落着、も嫌い。古畑任三郎でよく見た気がしますけど。あれ、偶然の要素が大きいですよね?なんかご都合主義だなあ、と思っちゃう。犯人が口を滑らせなかったらどうするんだ?警戒されて尻尾を出さなくなっちゃうよ?まるでプロレスの試合を見てるみたいです。
だから今回はうーん、が多かったかな。自分の好みをちゃんと認識できたのは良かったですけど。そんな中で、面白かったのはやっぱり曽根圭介さんの「妄執」と乾緑郎さんの「機巧のイヴ」でしょうか。
「妄執」は友達にストーカーを持つ男が主人公。引きこもりの友達一馬が元カノにストーキングしてるんですね。「こいつっキモ!ストーカーとかないわー。でも友達だから無視れないし」と主人公は思ってます。止めなきゃいけないとは思いつつ、なんか止められない。そして自分の彼女にも言い寄ってくる男がいて悩んでます。彼女も同じ会社にいて、言い寄ってくるのも同じ会社の上司なんですね。
一馬と主人公は、学生時代に一人の女の子を付け回したとしていじめられていました。主人公は「自分の彼女だったのに一馬が付け回した」と記憶しています。自分は人と「ケーブル」で繋がることができて、「ケーブル」で繋がった相手とはすべての心情を交換することができると思っている。やべえ……やべえね。そう、一馬は間違いなくストーカーですが、それを止められない主人公は本当に正常なのか。
「ケーブル」の話が出てきたところでタネがバレちゃいそうなもんですが、曽根さんの筆致で最後まで引き込まれてしまいます。本当に上手な方だと思います曽根圭介さん。やっぱり好きだわ。長編も読んでみたいなあ。
「機巧のイヴ」はこんな題名だけど時代小説。お侍が遊女を身請けしようとするんですが、目当ての遊女には心に決めた人がいます。だもんでお侍、遊女を身請けして自由にしてあげてから、からくり技師に遊女そっくりのからくり人形を作らせようとします。この作品の中では、からくり人形っていうのが平賀先生のカタカタしたやつじゃなくて「アンドロイド」って感じなんですね。ラブドール的な意味で遊女羽黒のからくりを作らせる。そして羽黒を買い上げ出奔させる。
そして技師から羽黒のからくり人形を買い受ける。どう見ても本物の羽黒にしか見えない。羽黒には心に決めた男がいて、その男のもとに逃げたはずなのに。疑心暗鬼にかられたお侍はラブドール羽黒を切っちゃう。すると羽黒から出るのは人間のものでしかない赤い血。この羽黒は人形だったはずなのに。
お侍は騙されていたのです。羽黒をただ愛していた。羽黒の幸せを思っていた。誰がお侍を騙したのか。からくり人形だったのは、本当は誰なのか……。
ああー、面白かった。これは全然思いつかなかった結末でした。時代小説だからこそ成り立つ悲恋。逆にSFでも成り立つかな。でもSFなら面白みは半減かも。時代小説だからこんなに切ない話になるのですね。すごく良かったです。
というわけで、次もこのシリーズを読みたいと思います。はまるわー。ほんと面白い。そして勉強になります。
賞獲り作品ばっかり読んでますが(この短編集も賞にノミネートされた作品ばかりです)、この方が効率が良くて。すぐにでも小説家になりたいので、時間をムダにしたくないんです。なんか生き急いでるんです。最近の私。
ホントはゆっくり当たり外れ(自分にとって)を引きながら、好みの作家を探していくのが、読書の醍醐味なんでしょうけどねえ。ピンポイントに当たりを引きたい。せっかち、とは昔から言われてきましたが、間違いなくそうだな。時間があればすぐうろうろ散歩に出かけるしねえ。
というわけで次に行きまーす。
ではまたっ!