読書感想文38 村上春樹 風の歌を聴け | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

あーなんかわかるようなわからんような……。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

今日も今日とて本を読みましたよ。村上春樹さんの「風の歌を聴け」です。

 

村上さんのデビュー作ですね。私、村上春樹さんって多分2冊ぐらいしか読んでないような気がするのよ。

 

高校ぐらいのときに流行に乗って読んでみて、「……んー、なんか合わない」と思って以来手付かずになっているような気がする。ほぼ食わず嫌いに近い。何を読んだんだったかなあ。「ノルウェイの森」だったような気もするけど、もう記憶にない。

 

毎年毎年「今年こそノーベル文学賞か⁉」って騒がれてるのにね。読まぬわけにはいくまい。というわけで、デビュー作から読んでみることにしたんです。村上春樹さん。出版順というわけにはいかないかもしれませんが。

 

それで「風の歌を聴け」。1979年の作品だそうで、私が生まれた年ですよ。40年前。けれど今読んでもとても魅力的な文章でした。

 

あ、その前にこんなにファンが多くてあまりに高名な作家さんについて、私なんかがあれこれ書くのにも若干ビビってるんですが。

 

でもまあ書きます。私が思う私の感想文。ここはそれを書く場所なので、何を書いても許される場所のはず。ということで。

 

 

 

主人公は神戸の山の手に実家がある金持ちの息子。東京の大学に通ってますが、夏休みで実家に帰省してます。このお坊ちゃんの夏の記録なんですね。

 

お坊ちゃんは40年前の大学生なのに車を与えられてて、バーで相棒の「鼠」という男とビールばっか飲んで過ごしてます。いわゆる「鼠先輩」ですね。鼠先輩と何人かの女の子と主人公のけだるい夏。特段何が起こるという話ではありません。主人公は今までに3人の女の子を抱いていて、3人目の女の子は付き合ってる最中に自殺してしまいます。でもそれを悔いて悔いて、みたいな熱を持ってるわけでもない。その夏に出会った手の指を1本失った女の子との恋愛に熱くなるわけでもない。

 

貧乏沼から這い出してきた人間からすると、「何ぬるいことぼんやり呟いとんねん兄ちゃん!」的な、鼻につく青年の青春日記なんですね。だから昔の私は村上春樹さんを合わないと感じたんでしょう。必要なものは何でも与えられてきた人間の、傲慢にも近い憂鬱が青年の周りには満ち満ちています。

 

でも、その「有閑マダムの青年版」みたいな主人公が、鬱々とひと夏を過ごす姿が、淡々と書き連ねられる文章があまりに美しい。この作品は村上春樹さんの処女作なんだそうですが、それでこんなきれいな文章が書けるってすごいなあ。全編が詩。言い回しは外国文学の翻訳を読んでいるかのよう。実際村上春樹さんは翻訳も多数手がけられていますから、昔っから外国文学に親しんでいたんでしょうね。

 

実際この作品は冒頭から「デレク・ハートフィールド」という作家への讃辞から始まっているようなところもあります。外国文学、お好きだったんでしょうね。実際にはこの「デレク・ハートフィールド」なる作家は実在しないそうなんですが。たくさんの本を読み音楽を聴いてこられたんだろうなというのが、よくわかる文化の匂いにあふれた小説です。40年前にこのオシャレ風が吹いたら、若者たちは夢中になっただろうなあ。それは何となく想像はつく。

 

しかしね、私の感想を書くと、なんか虚構だなあと思う。この主人公自体が。この主人公を描いた作品自体が。恵まれた人生をぼんやり過ごして最終的には結婚して、何となく過去を振り返っていニヒルな気分になっている主人公。

 

文学にはいろんな形があって、いろんな人が読んでいろんな感想を持つ。それはよく分かったので、この作品も一つの文学なんだなって思うけど、私には重みを感じなかったな。あれこれ伏線も含蓄もありましたけどね。でも私が欲しいのはもっと重くてしんどいやつなんだ。軽いものに意味がないと思ってるわけじゃないけど。

 

多分ほんと、焦点置く場所の違いなんだよな。私ははっきり言って恵まれたうえでそれに疑問を持つような人間が嫌いだ。「金持ちに生まれたことを辛く思う」とか君はアホかねと思う。そこになんのカタルシスがあるんだ。ほんとけだるさがだるくなってくる。これが好みってやつなんでしょうか。

 

 

 

でも、文章の綺麗さと奥深さには特筆すべきものがあった。これを追ってみたいなと思った。相変わらず地に足のついてない青年の世迷いごとにイラつかされたりするのかしらとは思いつつ。

 

あと面白かったのが「エア・コン」やね。「チーズ・クラッカー」「ジンジャー・エール」「ビーチ・タオル」

 

その点なんやねーん!!

 

細々外来語が「・」で挟まれるのよ。読みにくっ!でもこれが当時はオシャレだったんだろうなあ。

 

多分同じクラスにいても仲良くなりはしないタイプだっただろう村上春樹さん。

 

この先も追っかけしたいと思います。知らない男を知るのだ。それはきっとスリリングなことに違いない。

 

次はめんどい男、田中慎弥さんを読みたいと思います。私、村上春樹より田中慎弥派だわ。きっと少数派。

 

読書って色々あって面白いね!

 

ではでは、おやすみなさい!