読書感想文28 綿矢りさ 勝手にふるえてろ  | 恥辱とカタルシス

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作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

本日2回目の更新ですね。

 

渋谷です。

 

 

 

 

綿矢りささんの「勝手にふるえてろ」を読みました。

 

金原ひとみさんを読むなら、綿矢りささんもセットかなと思って。図書館にあった「勝手にふるえてろ」。面白かった!でも、ちょっとびっくりしちゃったんですよね。

 

このお話、映画化されてるんですね。松岡茉優さん主演で。ネットでそこ見てびっくり。映画「勝手にふるえてろ」はコメディに分類されてるんですよ。

 

コ、コ、コメディ?そうなの?私、この本読んでちっともコメディ臭を感じなかった。

 

それどころかちょっと怖かったんですけど。怖い。はっきり言えばちょっとでなく怖い。

 

主人公のヨシカ、この子のキャラクター、笑い事でもなんでもなくてホラーでしかないんですけど……!

 

 

 

ヨシカは上京してきてOLをしている26歳の女の子です。処女。元オタク。趣味はウィキペディアで絶滅した生物について調べること。初恋の人だった「イチ」を忘れることができなくて、未だ処女である自分に若干誇らしささえ感じています。一途な自分に対する誇り。過去、クラスでいじられるか存在を認識されないかしかなかった自分が、男性経験がないことを正当化しようとしているかのような感じもあります。この主人公はっきり言って、歪んでます。

 

ある日寝ている間にボヤを出してしまったことがきっかけで、人間いつ死ぬかわかんないんだからやりたいことをやっとこう、ということで、過去好きだった「イチ」に何とかして会おうとします。そのやり方が、サイコ。

 

海外に行っているクラスメイトの名前を語ってmixiで同級生を集め、「イチ」がmixiをやってないと知るとそのクラスメイトの名前でイチの実家に電話をかける。同窓会の当日に、「私インフルで行けなくなっちゃったー」と同級生に一斉送信。……うそやろ。こんなんって笑い話なん?怖い、本気で怖い。

 

それでも結局イチとはうまくいかない。名前を覚えてもらってもない。自分からぶっこむ度胸はないわけです。


前後してヨシカは生まれて初めて告られます。イチとの対比で「ニ」と称される同じ会社の営業マン。独善的で俺大好き男ですが、営業マンはそうでなきゃいけません。私はそう思います。なのにヨシカはイチと比べてニをきもいきもい言います。真面目にヨシカに愛情表現してくれるニ。なのにヨシカはニの告白にちゃんとした返事もしません。ずるい。ずるいですよヨシカ。

 

そうこうしてるうちに、ニがヨシカにこんなことをもらしちゃう。ニはヨシカを攻略すべく、ヨシカと社内でうわべのみの付き合いをしている来留美にリサーチをかけます。そこで来留美が「ヨシカって処女だよ」とオブラートに包みつつばらしちゃう。それをニがヨシカにもらしちゃう。ヨシカ、憤怒です。


キレたヨシカがとった行動がまたサイコ。トイレにこもるヨシカを心配する来留美に、「実は……つわりなの」



ありえねー!処女懐妊!絶対バレる嘘なのに!しかも恥ずかしさのあまりもー会社休みたいヨシカは、産前産後休暇届けを出そうとします。いやいやいや、めちゃめちゃやって!

会社休んで部屋にこもるヨシカ。でも来留美から言い訳メールがくるだけで、ニからは全然連絡なし。悲しくなっちゃったヨシカは、自らニに連絡してすがります。「私のこと、愛してたんじゃないのー!」

優しいニはヨシカを許しちゃう。妊娠したとかいう最悪の嘘つく女だよ?最後の最後、ヨシカはこんなことを言います。「霧島くん、ねえ、怒ってるの?」

怒れ霧島くん!君はニ呼ばわりされていたんだぞ!でも優しい霧島くんは、ヨシカを受け入れてしまうのです。



うーん、ホラーやな。大体題名の「勝手にふるえてろ」っていうのも、センシティブゆえいじりに耐えられず震えていた少年時代のイチに対して、ヨシカが吐いた言葉です。処女であることがバレちゃって自暴自棄になったときに。それもえらく勝手な話だ。

自分がそんなイチを勝手に12年も思い続けてたくせにね。ねえこれコメディ?これホントにコメディなの?

綿矢りささんて、こんなにエキセントリックなお話を書く方だったんですね。面白かった。サイコでエキセントリックなヨシカの吐く毒がたまらなく面白かった。ぜひ、他の話も読んでみたいと思います。

やっぱり毒にも薬にもならないようなのより、私はこんな作品が好きだな。楽しかったです。

ではでは、次いってみよー。