ドラマ評:キムタクドラマ「PRICELESS」は、フーテンの寅さんだった! | 白河桃子オフィシャルブログPowered by Ameba

ドラマ評:キムタクドラマ「PRICELESS」は、フーテンの寅さんだった!

今季のドラマ、皆さま何を見ていますか?

私は「大奥」とSMAP・木村拓哉(40)さんの主演する
フジテレビ系「PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~」
を楽しみに見ております。

キムタクといえば、男があこがれる職業「レーサー」「パイロット」「社長」
「総理大臣」「検事」「御曹司」、をすべて演じてきた男。

わたしも「なぜ、40代男子は『華麗なる一族』に萌えるのか?」を
テーマにした記事を書いたことがあります。

ところが、今回の役はホームレス。ドラマ開始からあっという間に会社は解雇、
ケータイも家も(爆破で)失い、ホームレスに転落するというストーリー。

段ボールを貰って野宿したり、ビールの一杯を飲むのにも四苦八苦するキムタクが見られます。

そんなわけで、その役柄の珍しさ(時代だよねーという意見と、ついにネタ切れと言う意見も)と視聴率ばかりが取りざたされていますが、このドラマ「期待したよりもずっとおもしろかった」のです。

昔むかし、木村さんが若いころ「無言のまま演じるコント」を見た記憶があります。
番組も内容も忘れましたが、非常におもしろく「この人ってチャップリンみたい。
コメディアンの才能があるんだなー」とずっと思っていたのです。

まさにこのドラマは彼のコメディアンとしての才能が遺憾なく発揮されている。
わざとらしい決め台詞やオーバーアクションがなくても、ちょっとした間や動き、
台本の行間のようなものが、妙におかしみを醸し出すのです。

ドラマは毎回彼が「ちょっとした縁でかかわった人の人生を変える」という
ストーリーでもあります。

何年か前にドラマ通の友人(仕事柄、トレンディドラマを全部見ている)が、
「今って人とのかかわりが希薄だから、キムタクみたいな人が熱く過剰なほど
毎回人にコミットするドラマが見てみたい」
と言っていました。

彼女の言った通り「過剰な人へのコミット」がドラマのストーリーを動かしていくのです。

そして「わらしべ長者」展開です。無一文で500円を稼ぐために自動販売機の釣銭をあさる身の上から、一話ごとにかかわった人から何かをもらい、それを次の資本として
転がしてのし上がっていく。今回はついに小さいながら事業主になります。

ピンチに陥るとチャンスが舞い込む・・・ストーリー展開は割と見え見えなのですが、
飽きずに見られるのは本当にこの役が
木村さんにぴったりとはまっているからでしょう。

脇を固めるすっとぼけた中井喜一とカリナもとても良い味を出しています。

華麗なる一族はまた別の俳優でリメイクされるかもしれません。

しかしこの役は違う。彼だからこそおもしろいドラマになったのだと思います。
役者にとって「この人でしかできない役」に出会えることは行幸です。

ふと思えば、人に過剰なほどコミットする、人情深い男・・・これって誰かに似ている。

私の頭の中に浮かんだのは、あの国民的映画の主人公、フーテンの寅さんの顔!

ファンの方に怒られそうなのですが、あちらも昭和の国民的アイドルです。
国民的アイドル木村拓哉さんが、平成のフーテンの寅でも不思議はない。

木村拓哉のPRICELESSは、キムタクがフーテンの寅さんになって
わらしべ長者するお話なのでした。

「あるわけねぇだろ、んなこと!~」とおっしゃらずに、
だまされたと思って一度は見てほしいものです。