AKB前田敦子さんお疲れ様・・・若さとキャリアとアイドル論 | 白河桃子オフィシャルブログPowered by Ameba

AKB前田敦子さんお疲れ様・・・若さとキャリアとアイドル論

AKB48の前田敦子さんが「卒業」する・・・私が動揺しても仕方がないのですが、かなりの衝撃的なニュースでした。男子アイドル文化論を早稲田で講義したことがある私は、女子アイドルについても、結構ウォッチングしています。研究書なども必ず読んでおります。ドキュメンタリー映画も行きたかったけれど、誰もつきあってくれなかった・・・

前田さんはまだ20歳。20歳で頂点を極めて退くわけですね。本当にお疲れ様でした。

彼女の引退を機に、若い女性のキャリアについて、考えてみたいと思います。

日本は少子高齢化社会なので、若いという事実はどんどん貴重になっていく。必然的に若い女性たちはちやほやされます。なにしろどんどん数が減っていく希少種だからです。

若さを武器にするキャリアを考えれば、キャリアを開始する年齢はどんどん前倒しになっていくわけです。

昔なら「せめて大学ぐらいは行って」と親が説得するかもしれませんが、今は「大学に行っても良い就職や結婚が約束されているわけではない」時代です。勉強よりもほかに成功する道があれば、親も応援するでしょう。

だからエクザイルのダンスの学校に小学生がたくさん通うわけです。AKBのオーディションにも、「レベルの高い女の子」たちが続々と押し寄せているそうです。

若い女性たちは、本当に生き急いでいるような気がします。

しかし、キャリアとしてみた場合、20歳で頂点を極めてしまうキャリアはどうなのだろうか? その後はどうするのだろうか? という問題が残ります。

大女優高峰秀子さんは、1929年(昭和4年)に映画『母』への出演で子役でデビュー。戦前・戦後を通じて日本映画界の大スターとして活躍。引退は1979年(昭和54年)です。なんと、キャリア50年。エッセイなどを読むと本人の意思ではなく、彼女の背負う多くの人の生活のためだったようです。

14歳でデビューした前田さんが、今後50年のキャリアを芸能界で築けるのだろうか? それとも別の道があるのか・・・

女性には別の道もあります。結婚という道です。

モーニング娘。やグラビアアイドルなど結婚ラッシュを見ていると、最近は芸能活動も「こしかけ芸能界」というか、結婚相手を得るために「自分に付加価値をつける」道のひとつに思えることがあります。

地方の高校で一番かわいかった女の子が芸能界に進出し、若いうちに頂点を極め、元の場所では得られなかったようなワンランクもツーランクも上の結婚をするわけです。

女性としての付加価値がつくキャリアとは、昔はCA、モデル、ミス、女子アナなどでしたが、今は「アイドル」という稼業も、その最高峰に位置するのでしょう。(残念ながら、弁護士や外資系金融ウーマンなどの女性高収入キャリアは、女性としての付加価値には、まだあまり貢献しません)

さて、前田敦子さんはこれから、どんなキャリアチェンジを図るのか?

ひょっとしたら、キャンディーズみたいに「普通の女の子」に戻って、少しゆっくりしたいと思っているかもしれませんね。

なぜなら、彼女には芸能人女性にありがちな「前へ、前へ」というキャラクターが見られないからです。「センターとしての重圧に耐えてきた」とよく言われますが、センターになりたかったのではなく、部活のように「みんな一緒に頑張れたらいい」という気持ちだったのかもしれない。

最近の女の子たちは、「総選挙」などのように、無理やり競争させない限り「トップをとりたい」という意識は希薄です。

読者モデルのプロダクションをやっている友人が言っていました。最近の読者モデルたちは「女優になりたい」とか「一流のモデルになりたい」と希望する人は少ないそうです。

人気の読モとしてブログを書いてお金もそこそこ貰え、あとは結婚して可愛いママになって、またブログで稼ぐ・・・そんな将来を描いている人がほとんど。誰も「苦労してまで上に行きたい」とは思わないのですね。

前田敦子さんたちAKBも、そんなゆとり世代の女の子たちの一人。私はAKBにはもーにんぐ娘。の全盛期メンバーのようなギラギラした欲を感じません。欲がない彼女たちをギラギラさせ、必死にさせるには、総選挙やじゃんけんでのセンター争いのような仕組みが必要で、それが見事に当たったということでしょう。

しかし、たとえ無理やりでも、仕事は本当に人を成長させます。望むと望まざるにかかわらず、高いポジションを与え、本人が必死に努力すれば、人は成長する。前田敦子さんは見事にそれを証明してみせたのです。

アイドルの定義を私は「未完であること」と思っています。伸びしろがある限り、アイドルはアイドルでいられるのです。韓国アイドルと日本のアイドルの違いは、「完成されたアイドル」と「未完のアイドル」のどちらを愛でるかという、楽しみ方の違いではないかと思います。

そういう意味で、AKBは究極のアイドルでしょう。大集団としていつまでも完結することがないのです。永遠の未完なのです。

そして完成された者は去っていかなくてはいけない宿命があるのです。悲しいけれど。

前田敦子さん、本当にお疲れ様でした。
20歳のあなたは今後、どんな女性になっていくのでしょうか?それも楽しみではあります。

そして、ファンは決してあなたと共有した時間を忘れることはないでしょう。

アイドルの役割とは何かと考えると、時代そのものを体現しているのだと思います。今後、何十年たっても、あの埼玉アリーナにいた人は、自分の人生の軌跡と重ね合わせ、鮮やかに、あの瞬間を振り返ることができる。

なぜならその時間は「アイドルと共有した」というキラキラした魔法がかかった時間だからなのです。



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