
周南市の西光寺川から「かわせみだより」を発信しています。
春から初夏にかけて抱卵したカワセミは約20日で孵化し雛となります。
写真は、今年の夏のもので、まだ、胸毛などが黒っぽく残っています。
ところが、この幼鳥が見事に水中ダイビングをして、お魚を獲るのには
驚きです。テレビなどで雛が巣離れ時、初めて飛び立つシーンが出て来
ますが、カワセミの場合は水中の魚まで獲るのですから、感心します。
進化の過程で、生き抜く技術を獲得したのでしょうが、カワセミの事を
書いた詩は、中国の漢詩に見られます。翡翠という宝石は、もともと
カワセミから来たと云われて日本でも翡翠と書いてカワセミと読むこと
もあります。中国では、現在、翡鳥、翠鳥と云います。
漢詩の長恨歌(白居易)は、在天願作比翼鳥、在地願爲連理枝で有名ですが
天子の御旗はカワセミの羽根で飾られていますし、楊貴妃の髪飾りもカワセ
ミの羽根が用いられていました。
カワセミの羽根は青く美しい故に、人に利用されてきたようで、カワセミの
ことを思えば、可哀そうなことです。
そこで、漢詩の中で、カワセミの美しさを讃えた漢詩はないのだろうかと
探してみました。後漢時代の蔡邕(さいよう 133年~192年)の詩の
なかの「古詩源」に翠鳥という漢詩があり、内容は比喩では、ありますが
カワセミ本来の美しさを詩っていました。
《2016.12.18 周南市 東郭》

翠鳥
蔡邕『古詩源』
庭陬有若榴 庭陬(ていすう)に 若榴(ざくろ) 有り
綠葉含丹榮 綠葉(ろくよう)に 丹榮(たんえい)を 含む
翠鳥時來集 翠鳥(すいちょう) 時に來り集ひ
振翼修容形 翼を 振(ふ)りて 容形を 修(おさ)む
囘顧生碧色 囘顧(かいこ)すれば 碧色(へきしょく)を 生じ
動搖揚縹靑 動搖すれば 縹靑(ひょうせい)を 揚る
幸脱虞人機 幸(さいわい)に 虞人(ぐじん)の機を 脱して
得親君子庭 君子の庭(てい)に 親しむを 得(え)たり
馴心託君素 心を馴らして 君が素(そ)に 託し
雌雄保百齡 雌雄(しゆう) 百齡を 保たん

「翠鳥(すいちょう)時に來り集ひ、 翼を振(ふ)りて容形を修む。
囘顧(かいこ)すれば碧色を生じ動搖すれば縹靑(ひょうせい)を揚る」
は、現代風にいえば、”カワセミが来て集まっている、翼を振って容姿を整え
ている、ふりかえれば、青緑色をし動けば、はなだ色になる” と表現して
います。
