東寺南天門を入ると正面に金堂が聳えている。逆に金堂からは南天門が見えている。
南天門を入ると、左側に写生をしている女性がいた。修業大師像の方にも、もう一人いたようだが、
あまり気にしていなかった。ところが、境内見学を二時間くらいして門を出ようとする時にも、彼の女性
は、熱心に描いている。私が近付いていくと気配を察したのか、こちらを見て微笑んだ。
“ちょっと見せてください!” というと快く頷かれて、又、筆を重ねていた。水彩画で金堂を主題として
いる。“下手なんですよ” と幾分謙遜されていたが、どうしてどうして素人目にも雰囲気のあるうまい絵
である。ここで素直に “お上手ですね”といえば良かったが、“いい御趣味ですね” と言ってしまった。
彼女は、“こうして描いていると何もかも忘れるんですよ” と答えていたが、雪がちらつく境内である。
たしかに、それに打ち勝つ力が作用しているのだろう。勿論京都東寺の金堂は絵になるがである、
わたしにすれば、そこで絵を描いている女性も含めて京都であり、絵になるのである。
そして私はその意味を込めて“有難うございました” と言って南天門を去った。2月25日でした。
周南市 東郭
