『cumulonembo 19』尾澤酒造場・長野
もう40年以上も前のことです。
夏休み、母と弟と飛行機に乗って青森に発ったとき、機体が積乱雲に巻きこまれました。
YSのプロペラ機が、ガタガタ、ミシミシと音をたてて上下に揺れ、小さな悲鳴が漏れ聞こえたり、泣きだす子供がいたり、機内に緊張感が満ちたことを覚えています。
でも、何故か不思議なくらい、私は怖くありませんでした。
積乱雲から抜け出し、無事、定刻通りに着陸したとき、母の顔色が土色であることを確認したときも、私には特別な感情はありませんでした。
数時間たって、「落ちると思ったわ。でも、あんたら残して一人で死ぬより、あんたらだけ死なせるより、いっそみんな一緒に死ぬ方がえぇと思った」と、母が言ったとき、親の本音を聞いた思いがして、はじめて感慨にふけったのでした。
子を残して一人で逝くことに対する親の未練、もし子どもたちだけが逝ってしまったときの親の悔い、それならいっそ、みんな一緒に逝った方がいい…… 。
そんな肯定も否定もし辛い親の思いに触れ、妙な潔さを感じたものです。
‘ cumulonembo ’ は、積乱雲という意味のイタリア語。
お酒が呼び覚ましてくれる過去があります。
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