まとまりのないものが

あなたをかたち作り

気がついたらそれは

あなたになってしまった


どう描いても

どう話しても

あなたにはならないのに


どれだけ隣にいても

どれだけ一緒に笑っても

あなたにはならなかったのに


それはあなたになってしまった


なんてわたしは無力なのだろう


もうあなたは

不変だ


朽ちていくわたしは

あなたそのものに

ため息をつく


なんてわたしは無力なのだろう

齧られた夕闇は

足音をたてて過ぎ去ろうとする


しかしそんなお前を

あの小さな子供は許してはくれない


いつの時代のものかもわからぬ

鉄の塊についたレンズを通して

お前を逃がさぬよう

団地の階段を駆け上がる


さあ


もうお前はあと少しで

夜の向こうへと逃げられる


そう思ったかい


まだ少年は駆け上がっている


お前がいてくれることを


お前が振り返ってくれることを


信じきって駆け上がっているんだよ


あの茶トラの野良猫は

お前になんかもう興味もない

齧ったことすら忘れてしまった


まだ少年は駆け上がっている



たくさんのひとに愛され

わたしをそんな世界に

手を引っ張ってくれた


そんな友は、もう先に行ってしまった


いつだって優しく気を使い

それでも話す言葉には芯があり

いつだってくだらないことに躓くわたしの

背中を軽くひと押ししてくれていた


そんな友は、もう先に行ってしまった


変わらず日々は進んでいく


当たり前のように続く未来が

当たり前のように続く明日が

立ち止まるわたしに気づかず

友を過去へと連れ去っていく


それが耐えられないから

わたしはまだ前を向けないのに

思い浮かべる友は

いつものように背中を押そうとしてくれる

いつものように横にいてくれる


わたしがいつかそちらに行ったら

また一緒に遊んでください


ただ、それだけが

友に願うこと


だからまだ

友よ


あなたとのつながりは

続いていくのだ


あなたは過去ではなく

いつかやってくる未来で

待ってくれている


わたしはそう信じて

進んでいく


歩いていく


生きていく


また馬鹿なことをやってるわたしを

笑って、安らかに

待っていてください