天下一になるための猛練習 | todou455のブログ 火縄銃ときどき山登り

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公式ハッシュタグ 令和6年1月22日 骨董品ランキング1位

  射撃名人のブロ友さんから,鉄砲の上手な人には,共通した特徴があると聞かされた。

①器用であること。 

②メンタルが頑強であること。 

③お金に余裕があること。

この三つだそうだ。

 たしかに射撃は,練習にお金のかかるスポーツである。毛利伊勢守流砲術を創始した佐伯藩主の毛利高政は,射撃練習で十反帆船一艘分の火薬を数年で使い果たしたというから,驚くしかない。十反帆船なら,おそらくドラム缶で12本分の積載量はあっただろし,当時火薬原料の硝石は輸入に頼っていたから,よほどお金がかかったことは間違いない。

 

伊勢守流の大鉄砲

         上から順に,

        秋風の筒     全長201.0cm 口径1.8㎝    榎並屋勘左衛門 作

        焔魔王の筒   全長277.9cm  口径2.2㎝    芝 辻  清 衛 門  作

        四海波の筒   全長281,5cm  口径2.5㎝     榎並屋勘左衛門 作  

 

   バルセロナオリンピックの日本ライフル射撃選手団の総監督だったS先生は,若かりし頃に射撃練習で貨車一両分の弾薬を撃ち尽くしたという。世の中には暇な人もいたもので,貨車一両分の弾薬を計算したところ,おおよそ五十万発と弾き出した。かりに一発100円だとしても五十万発ならその総額は五千万円だ。もはや驚きを通り越して,あきれ果てるしかない金額である。射撃で一流になるのは,情熱と猛練習のほかに経済力が必要なのだ。

 種子島への鉄砲伝来後,射撃を好んだのは将軍足利義輝を始めとする大名たちだった。なにしろ鉄砲伝来時,種子島の領主だった種子島時尭は,二挺の鉄砲を金2000両で手に入れたという。金2000両が現在のいくらにあたるかについては、諸説あるが種子島の鉄砲館は,鉄砲2挺で1億円以上との説を取っている。私もその意見に賛成だ。鉄砲一丁が五千万以上もするなら,もはや鉄砲を持てるのはよほど財力のある者に限られる。

 

 

種子島の鉄砲館の説明プレート

 

 鉄砲伝来後,多くの砲術師が現れ鳥や獣を仕留める狙撃技術を記した砲術伝書を作成した。このような伝書を作成したのは,猟師のためになろうと殊勝なことを考えたからではない。鷹狩の鷹を鉄砲に持ち替えた大名たちのレッスンプロになって大金を稼ぐためだ。なにしろ自分の射撃技術を上達させるためには,貨車一両分の弾薬を撃たねばならぬのである。天下一になるためには,猛練習とお金が欠かせないということだ。

 

毛利伊勢守流砲術伝書 禽獣目付目録

金山城伊達・相馬鉄砲館所蔵