仙台藩のイロハのリ | todou455のブログ 火縄銃ときどき山登り

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火縄銃を切り口として
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金山城伊達・相馬鉄砲館に持ち込まれた下の写真の長銃身の火縄銃について意見を求められたので,お答えします。

 

 この鉄砲は,全長140センチ,口径14ミリの仙台鉄砲であり,その銃身の長さから考えると野外戦に使用される鉄砲ではなく,城に備え置かれ精密狙撃に使用する狭間筒と呼ばれた高品質の鉄砲と考えられる。興味深いことに,この鉄砲のすべて部品には『リ』という管理番号が付けられている。このことから,この鉄砲は,大名家所有の鉄砲で、合戦時に藩士に貸し与えられる官給品の鉄砲と考えるのが自然である。
 通常,官給品の鉄砲につけられる管理番号は数字を用いるのであるが,この鉄砲の管理番号にはイロハ文字を使用している。おそらくは,高性能な狭間筒が,他の鉄砲に紛れ込まないようにイロハ文字を使用したのだろう。またイロハ47文字を利用したのは,同じ長さの狭間筒が47丁前後作られていたためなのかもしれない。
 
銃身にも『リ』の管理番号
 
尾栓ネジにも『リ』の管理番号
 
引き金にも『リ』の管理番号
 
機関部の地板にも『リ』の管理番号
 
火挟みにも『リ』の管理番号
 
弾き金にも『リ』の管理番号
 
 このように鉄砲に番号が記されているのは,多くの鉄砲を管理するのが目的であったが,同じタイプの火縄銃の部品に取り違いが生じ,バラバラにならないようする工夫でもあった。今でいうところのロッド番号である。

日本の火縄銃は、一丁一丁が職人の手作りのため、規格化や共通化が完全には徹底されず、同じ口径の銃でもわずかな違いが生じることが多かった。火縄銃に使う黒色火薬は硫黄を含んでおり,金属を錆びさせてしまうので,射撃後は分解清掃が欠かせない。多数の火縄銃を分解清掃する中で,各種の部品に取り違いが生じると,火縄銃の機関部が動かなくなったり命中率が極度に悪くなったりする恐れがある。この部品の取り違いを防ぐために銃身や銃床などの部品に番号が付されたのでもある。

  結論を言えば,この鉄砲は仙台城の二の丸兵具庫に保管されていた管理番号『リ』を付せられた仙台藩の狭間筒である。そして,この鉄砲のすごいところは,銃身ばかりでなく,引き金をはじめとする全ての部品に『リ』という番号が付され,当時の姿のまま残っていたことだ。このような希少品を守っていくことは,コレクターや研究者の使命である。

 

よそ様の鉄砲のことですから,コメント欄は閉めておきますね。

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