日本今話 武士は食わねど高楊枝 | todou455のブログ 火縄銃ときどき山登り

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 昔々,あるところにキツネさんと

 

おサルさんが住んでいました。

 

 

 

 その頃の,日の本では,悪い疫病のコロナが流行していました。コロナは質の悪い風邪ですから,寒さ厳しい歳の瀬を迎え,感染する人が爆破的に増大して大問題になっています。感染防止のため,ついに仙台御城下の歓楽街に対し,年末年始の営業自粛が申し渡されました。福島藩はもっと厳しいです。福島市全域の夜のお店に対し同じ申し渡しがなされました。

 

  おサルさんは,伊達藩領の丸森村で『桜坂』という料理屋を営んでいます。コロナを怖れたお客さん達は,お店に来てくれなくなりました。

宮城県丸森町 日本料理 桜坂

 

 昨日,キツネさんが,おサルさんのお店を訪ねたら,土曜日だというのにお客さんは,三人だけでした。結局,その日の売り上げは,税込み3000円です。これでは従業員の賃金にもなりません。今月はずうっとこんな感じだそうです。

 キツネさんは,おサルさんに,メニューにないオムライス定食を注文しました。少しでもおサルさんの売り上げに協力できると思ったからです。しかしおサルさんは,完全にやる気を失っていました。今さらキツネから1000円,2000円をもらってもどうしようもないと思ったのかもしれません。

顔から表情を消したおサルさんは,

「面倒くさいものを注文するな。今日の賄いは,オムライスにするから,それを食って行け。」とキツネさんに言いました。おサルさんの口調が強かったので,キツネさんは,何も言わずに出された賄い飯を食べることにしました。

下が,私の賄いオムライス。賄いですから,かなり手を抜いた作りになっています。上が,おサルの賄い飯です。お茶碗のオムライスというのを初めて見たキツネさんでした。 

 キツネさんは,帰り際にお金を支払おうとしました。すると,おサルさんは,

「料理人が,賄いで金を取れるか。おれは乞食じゃねえ。」と言って,おサルさんはお金を受け取ってくれません。

 お店が厳しくとも,お金がなくともおサルさんは,男であることを守りました。たぶんこのプライドが,コロナ禍の中,お店を持ち応えさせている原動力なのでしょう。『武士は食わねど高楊枝』とは,単なる見栄や外見ではなく,心を守ることだと思ったキツネさんでした。