火縄銃の尾栓の抜き方について,当ブログに問い合わせがあったので,手持ちの馬上筒を実験台として,尾栓の抜き方を説明します。今回の尾栓抜きは錆がひどくなかったので,油漬けだけで,何とか抜くことができました。しかし,普通はこううまくいきません。尾栓を抜くのは油漬け以外に3つの方法をあり,順番にその方法を用いていきます。尾栓抜きはとても根気がいる作業なのです。
馬上筒の抜栓成功
抜栓直後 研磨後
整備前(ビフォー)
整備後(アフター)
抜栓前の尾栓の状況
油漬け前の状況です。相当使い込まれた馬上筒で,火穴の
老けが大きいです。尾栓自体はしっかりしていて,錆の付着も
少ない方でしたので,油漬けだけでやれると思われました。
抜栓油漬けの必需品
私は,油漬けの油には,クレ5-56DXを使用しています。
また,打撃面が大きな木槌が必要です。私は直径6センチ
の木槌を愛用しています。
尾栓抜きの勘所
抜栓は,ネジを回すというイメージではなく,銃身内部の
錆を粉砕するというイメージで行わねばなりません。
尾栓は下のイラストのように赤色で示した錆により,尾栓と
銃身が一体化してしまっており,回すというイメージで行え
ばネジを破損させかねません。
錆を破壊するため,浸透力の強い油を錆に染み込ませ,
木槌で振動を与えて錆を破砕していくわけです。私は油
漬けの前に木槌で50回以上打撃振動を与えています。
木槌の打撃の時には,火皿や銘の破損に注意してくだ
さい。万力を使用せずに打撃を加える場合は,火皿が
接地面に当たることのないよう注意してください。テコの
原理により火皿を変形させてしまう危険があります。
注意
一般に油漬けだけで尾栓が抜けるのは,全体の2割くらいだと思います。尾栓抜きはかなり根気のいる作業です。私も最初の頃は一本抜くのに二か月くらいかかりました。この尾栓を抜く作業を専門業者に頼めば,大体6万円から12万円の範囲のお金がかかります。それほど難しい作業なのです。金額に幅があるのは,鉄砲の口径の大きさによるからです。経験のない人が簡単にやれることではありません。