東大入試の現代文では、基本を使いこなせているかどうかを試す問題が、どの大学にも増して多く出題されていることを、これまで話してきた。
ここで、以前書いた「3つの基本」をおさらいしておこう。
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①対比
②抽象と具体
③分節化
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また、これらの3つよりも、階層は一段低くなるが、
以下のような論点も「基本」となりうる。
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④答案に必ず「主語」が書かれている。
⑤答案の因果関係が正確である。
⑥カテゴリーの分け方が正確である。
⑦指示語の具体化ができている。
⑧本文中の接続語や指示語や同義反復表現をヒントにした、解答要素の引用範囲の絞り込みが正確である。
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まだまだあるかもしれないが、基本事項として私が現在思いつくのがこの8つである。
どれをとっても、特別なものはなく、一見するとごく普通のことだ。
大学受験はおろか、高校受験や中学受験でも必ず強調されうる事項だろう。
しかし、一方で、
東大ではこれらの基本事項を「うっかり忘れてしまった」答案について、自動的に0点がつけられてしまう問題がかなりの数、出題されているであろうことを指摘したい。
例えば東大現代文1997年第5問(1) は、
上記の①②③⑦⑧をたった1題で包括的に試す良問だったといえるが、
特に②の「具体的表現の一般化」ができていない答案には、バッサリ0点がつけられてしまったことだろう。
実際、当時のこの問題で0点の答案が非常に多く出たことは想像に難くない。さぞかし当時の採点官は採点が楽だったことだろう。
これは採点が厳しいということではなく、
むしろ、基本をおろそかにした受験生が自動的に0点となるような問題を東大側が巧妙に多く作っているからだと思われる。
このような問題のことを、本ブログでは「0点へと誘う問題」と定義したい。
1997年のあの随筆の問題は、典型的な「0点へと誘う問題」だったと私は推察している。
本ブログで、今後の研究課題としたい事項の一つは、
この「0点へと誘う問題」をどのように見分けるかだ。
これは私もまだ研究途中なので部分的にしか紹介できないが、以下説明したい。
まず、1997年の随筆では大きな問題とはならなかったが、東大現代文で最も多いのは、
≪わざと”主語に傍線が引かれていない”ケース≫で、しかもその傍線部を「どういうことか」説明しなければならない問題だ。
このような際に、絶対に押さえておきたいのは
④の「答案に必ず『主語』が書かれている。」というポイントだ。
つまり、このような問題では主語を「自分で補わなければ」いけない。
東大側は、いちいちこんなことに丁寧に誘導をつけない。
本ブログでも、練習問題としてこのような問題を多く紹介していくつもりだが、
東大の場合は、主語がない答案にはバッサリ0点がつけられてしまう可能性があることを予め覚悟したい。
また、⑥の「カテゴリーの分け方が正確である。」というポイントも注意したい。
代表例を挙げれば東大現代文の2011年第1問(3)などであるが、
例えば「サッカーと野球」を比較するべき問題で、誤って「サッカーとスポーツ全般」を比べてしまうと、
カテゴリーの分類がわかっていないということで0点にされる可能性が高い。
※例えば、自然科学で、階層(カテゴリー)の違うものを誤って同列のものとみなし、比較対象にして実験してしまうのは、絶対にやってはいけないことだ。教授からものすごく怒られるだろう。
東大国語の合格者平均点は、
2015年~2017年までは、一貫して文系60点台、理系40点台前半で推移しているようだ。
しかし、一方で2014年のように文系で40~50点台、理系で20~30点台の低得点合格者が続出した特異な年もあり、この年は惨憺たる出来だったようだ。
この2014年に「0点に誘う問題」が多く隠れている可能性がある。私もまだよく研究できていないが、2014年に関しては特に入念に出題傾向を調べてみる必要がありそうだ。
東大受験生の皆様は、東大現代文の過去問を解き、
自力で答案を作成することになるだろう。
また、その自力で作成した答案を「満点答案」に近づけるように、きっと「推敲」を重ねるに違いない。(←あ!自分の答案をWordなどに保存していつでも見れる状態にしておくのが効果的ですよ!)
そんな時に、自分の作った答案が、本ブログの冒頭で挙げた「8つの基本事項」、特に下位の階層に属する④~⑧のポイントを満たしているかどうかを、ぜひチェックしてみてほしい。
なお、「0点へと誘う問題」は何も東大現代文だけの専売特許ではないようだ。
例えば東大英語でもそのような「基本を見落とした受験生を0点に振り落とす」問題がある。
Youtubeでそのような問題が紹介されていたので、最後に本ブログでも読者の皆様に共有しておきたいと思う。↓