こんにちは、naoです。



昨日わたしにとって一番気がかりな地理試験も合格し、それと同時に2週間以上の新人研修も終わりとなりました。


新人研修でのメインとなる勉強は、地理試験なのですが、もう一つだけ、東京で働く運転手としてかなり重要な事を教わりました。


それは、銀座地区での乗車禁止エリア(通称、乗禁地区)でのタクシーの動きです。


まずは、そのエリアの地図を掲載します。



乗禁地区のことを簡単に説明すると、この地図の赤い線で囲まれた地域内では、決められたタクシー乗り場以外での乗車が禁止となります。

時間帯は平日夜の10時〜翌1時の時間帯です。


駅で言うと、赤の線の左上がJRの新橋駅で右上が有楽町駅で、その下の銀座五丁目〜八丁目を取り囲む区間となります。


銀座高級クラブのお客様と従業員たち、新橋で思いっきり飲んで終電を逃した人たちが、タクシーを求めて乗るため、タクシー乗務員としても、稼ぎが熱い地区となります。


歴史的には高度経済成長期の昭和40年代に、この地区のタクシーが無法地帯化して、それを正す意味で取り締まりが始まったとのことです。


では、この取り締まりは誰が行い、その取り締まりに引っ掛かると、どうなるのでしょうか?


取り締まりというと、警察が浮かびますが、警察の場合は、交通法規に関する取り締まりのみで、このエリアの掟については取り締まりはしません。


東京都にはタクシーセンターと呼ばれる施設があり、そのスタッフが夜間に数十名このエリアを見張っていて、掟を破ったタクシーを見つけて、その場で取り締まる形になります。

(ちなみにタクシーセンターは、わたしが昨日テストを受けに行った場所で、東京23区でタクシーの仕事をする方は、必ずここを訪れる事になります。)


そして、取り締まりを受けると、タクシーセンターから会社に連絡が行き、会社からはきつく叱られます。


ただ叱られるだけならいいのですが、会社と個人に対してペナルティが課せられて、最悪はその会社や個人の銀座地区出入り禁止という事になります。

運転免許証の点数制度に似ていて、ある点数以上の違反をすると免許停止になるような感じで、出入り禁止になるのです。


他人の行為により、ドル箱となる稼ぎ場所が無くなったら、周りも黙ってはいられないのでしよう。

1度のミスなら多少は許されるかと思いますが、何回か掟を破った乗務員は会社にもいられないし、次の会社に移ることも出来ない(業界内での連絡の徹底)事になります。



この地区の恐ろしいのは、そのエリアで乗せるのが禁止だけではないんです。

乗せるのが禁止だけなら、その地域に立ち寄らなければいいんです。


タクシーには空車時に乗車拒否をしてはいけないルールが有ります。

これは法律で決まっていて、乗車拒否をした運転手はペナルティを受けます。

これもタクシーセンターの監視員が見張ってます。


例えば、新宿で夜間9時半頃まで飲んでいた方が、タクシーに乗ったとします。


行き先として、銀座を告げられました。


この時点で、わたしを含めた新人は心がザワザワすると思います。

10時を過ぎた頃に銀座地区に着く事がわかっているからです。


先ほどのエリア、確認のためにもう一度地図を出します。



このエリアは五丁目〜八丁目と書かれた場所(ピンクの道路)以外では降ろすことは可能です。


そして、このエリア内で新宿からのお客様を降ろしました。

降ろした瞬間に、空車を待っていた酔っ払ったお客様が乗って来たとします。


普通の場所や、昼の銀座なら降ろしたと同時に乗っていただくのは、運転手にとってはとても嬉しい事です。


しかし、乗車禁止地区ではペナルティの対象になるので、お乗せできません。


普通に考えると、乗車を断れば良いだけなのですが、空車時の拒否をしてはいけないルールが立ちはだかります。


どちらもルール違反でその場を動く事が出来ません。(動いた時点で摘発されます)

そこで、以下のような動きをして、摘発を回避しなければなりません。


タクシーはその場で1ミリも動かさずに鍵を抜きます。

鍵と、タクシーに備え付けられている写真と同じリーフレットを持って車外に出て、2つを頭上で見せながら、監視員に対し「これから(乗り込んできてしまった)お客様に説明する」ポーズをとります。

乗っているお客様に車外に出ていただき、リーフレットを見せながら、銀座の乗車禁止の説明をして、自分のタクシーには乗せる事が出来ないので、乗った場所に近いタクシー乗り場を地図で案内します。 


銀座に慣れているお客様なら、こんな事にはなりませんが、知らない方はタクシーに乗り込んできても仕方がありません。

このブログを見ている方でも、大半の方は知らなかったのでは無いでしょうか?


このような事が、普通に起こるんです。


基本的には乗禁地区で降ろしたら、空車にする前にすぐに扉の鍵をかけて、空車にします。

(ここ最近はインバウンドでの海外からのお客様も多いので、タクシーに自力で乗ってくるのを防ぐためです。)


そして、乗禁地区内で手を挙げたお客様に対しては、助手席の窓だけを開けて、リーフレットで先ほどと同じように説明して、乗られないようにします。


こんな冷や冷やしながら、この地区をやり過ごさなければいけないんです。

新人だから許されるというのも無いので、初日からこの掟を守らなからばなりません。



会社の研修でのお話をします。


この掟を破ってしまったドライバーの、ドライブレコーダーの様子を見させてもらいました。


乗禁地区で手を上がったお客様をお乗せして、走り出そうとした瞬間。

車の前に1人、後ろに1人、運転手側に1人が現れて、3方を囲んで動けない状況になりました。

タクシーセンターの監視員です。


運転手は掟を破ってしまったことをすぐに察知して、お客様がいるにも関わらず、

やっちまったー!

と、頭を抱えてしまいました。


運転手は経歴5年で、そこそこ長い経歴の方でした。


時はコロナ禍真っ最中で、やっと現れたお客様でした。

普段なら気がついていたかもしれませんが、コロナ禍なのでタクシーも人も少なかったので、気がつかなかったのかもしれません。


わたし自身、来週には独り立ちとなる予定です。


この例もそうですが、「やっちまったー」という事がないように、気をつけたいと思います。