アーユルヴェーダに関わっていると、どこかで、この「アタルヴァヴェーダ」と出会う。

私の場合は、ネット検索での出会いでしたが。

 

ざっくばらんに言うと、「アーユルヴェーダのもと」となったもので、アタルヴァヴェーダから派生したものが、アーユルヴェーダ、という感じ。

 

共通している「ヴェーダ」、意味としては「知識」です。

聖なる知識、と言った方がそれっぽいな。神秘的な感じがする。

 

で、そのヴェーダが何の知識かっていうと、古代インドの祭式に関する、言語や儀式方法、思想、哲学などについての知識。祭り、といってもパリピなヤツではなくて、神々を讃えるためのもの。

 

ヴェーダが生まれたころのインド地方に居たのは、アーリア人。昔、習った…と思う。

彼らは自然や自然現象を、神やその行いとして畏怖し、また崇拝していて、祭場に神を招き、神を称賛する讃歌を唄うことで、神々から好意を得て、そうすることで災いから逃れたり、幸福を得ようとした。

インドだけでなく、いにしえの世というのは、どこだって自然崇拝がメジャーですね。

 

神々に失礼のないよう、祭式が間違いなく執り行われるようにするために、讃歌や詠歌、呪文集、手順書、解説書

、関係する哲学などが集められたのが、ヴェーダ、ということだそうです。

 

ヴェーダのなかでもっとも重要な讃歌や呪文集のことを「サンヒター」、それに付随する手順書は「ブラーフマナ」、哲学部分は「ウパニシャッド」と言って、とくにサンヒターのことを、狭い意味でヴェーダということが多いみたい。

 

祭式を執り行うのは祭官という職業で、祭官のなかにもいくつかの職種がある。

 

・リグ・ヴェーダの讃歌を唱えるホートリ祭官

・サーマ・ヴェーダの詠歌を歌うウドギートリ祭官

・ヤジュル・ヴェーダを唱えながら祭式の実務を担当するアドヴァルユ祭官

・進行を見守り監督するブラフマン祭官

 

リグヴェーダ…神々を賛美して、加護を求めるための讃歌

サーマヴェーダ…旋律にのせて歌われる讃歌

ヤジュルヴェーダ…動作とともに詠まれる言葉

 

あら、アタルヴァヴェーダだけ出てこない。

 

なぜならアタルヴァは歴史の浅いヴェーダで、初期のヴェーダからみると、1000年ほど新しいものだから。

 

あとその内容が、神々を讃える、というものではなく、もっと民間的な「呪法」に関わるものだから。

ほかのヴェーダと比べると、「ちょっとねぇ…格が違うというかねぇ…」という感じで、リグ・サーマ・ヤジュルの祭官たちは、自分たちのヴェーダのみが神聖なもので、アタルヴァヴェーダを正統視することを拒んだのだそう。カワイソウ。

 

けれど、「民間的」というのは「実践的」ということでもあって、次第にその知識が広く認められるようになり、「ブラフマン」という最高地位を独占したそう。

 

そんなアタルヴァヴェーダの内容は…

 

・万病を癒すための呪文

・病気を癒やし、呪詛から解放せらるるための呪文

・毒矢に対する呪文

・頭髪の成長を増進するための呪文

・長寿と健康を得るための呪文

・悪魔に対する呪文

・呪詛する者を克服するための呪文

・恋仇の女子を呪うための呪文

・女子の愛を得るための呪文

・嫉妬から解放せらるるための呪文

・怒りを解くための呪文

・集会において成功を収むるための呪文

・王の成功、繁栄のための祈願

・戦勝を得るための祈願

・新築の家を祝うための呪文

・大麦の豊作を祈るための呪文

・負債の罪より解放せらるるための呪文

・兄に先立って結婚する弟の罪を消すための呪文

・不吉な鳥に対する呪文

etc.

 

すごく興味をそそる内容。

 

アタルヴァヴェーダの祭式では薬草を使うことも多く、とくに健康や長寿に関する呪法では、実際に対象者の身体へアプローチすることもあったようです。

 

そこから、人体に対する考察や、薬草の活用方法が知識として蓄えられていき、派生したものが「アーユルヴェーダ」だと言われています。

 

想像もできないほどの時間を経て、つくられてきたもの。

簡単に「アーユルヴェーダがさ…」なんて、口にするのもはばかられるように思えてきます。


ありがたや、ありがたや、と、その叡智にあやかりつつ、いまはなかなか機会がありませんが、正しくアーユルヴェーダの魅力を伝えていければ、と思います。

mi.