うちの父は、私が物心ついた頃から糖尿病だった。

甘いものとお酒が大好きで、いつも夜中にチョコレートと洋酒をたしなんでいた気がする。

 

そんな父はいま、順調に糖尿病を進行させて、合併症のオンパレードだ。

左目の失明、脳梗塞、腎機能低下による透析治療etc、透析に行く父を見送りながら、遺伝を受け継いだ自分も、気をつけなければ、と思っている。

 

父のような2型糖尿病、すなわち生活習慣等による後天的な糖尿病は、基本的には食事療法と運動療法による症状改善が必要だ。

それでもなかなか改善できない、そもそも最初からその気がない、薬の飲めば良いと思っている、そういう場合は、薬剤による治療に頼るほかない。

 

おそらく古代からある病で、もはや国民病でもあるので、糖尿病の治療薬というのは、とてもさまざまな種類がある。アーユルヴェーダ医学でも、糖尿に関する薬剤は多くある。

 

今回は、現在日本で使われている糖尿病治療薬について、再確認のためにまとめてみる。

 

まず、糖尿病治療薬には、おおきく2種類のタイプがある。

 

食事などで摂取した糖分は、インスリンというホルモンの作用によって、血液中から筋肉や脂肪組織へ取り込まれる。このインスリンが十分な量を分泌できない、もしくは、インスリンの効きが悪いと、血液中に糖分が溜まっていって、高血糖、となる。

 

なので、治療薬としては、

①インスリンの分泌量を増やすもの

②インスリンの効きを高めるもの

 

 

インスリンが過剰に分泌され続けると、筋肉や脂肪の細胞が、インスリンに対して抵抗性を持つ(取り込み率が悪くなる)ようになり、インスリンの効きが悪くなるそうです。

 

なので、②のインスリンの効きを高めるものは、インスリンを節約する薬剤、とも言えます。

 

 

①インスリンの分泌を促進するもの

 

【スルホニル尿素薬】

・経口血糖降下薬のなかで、最も古い

・確実で強い効き目がある

・1日を通じて血糖値を下げるため、食後以外の低血糖に注意が必要

(血糖が低くてもインスリン分泌を促してしまう)

・空腹感によって、過食が起こりやすい

・インスリンによる脂肪合成作用が起こりやすい

⭐︎代表薬剤

オイグルコン、グリミクロン、アマリール

 

【速効性インスリン分泌促進薬】

・スルホニル尿素薬に似た働きだが、吸収・分解が速い

・インスリン分泌量はあるのに、分泌のタイミングが遅い状態に有用

・主に食後の高血糖対策となる

・服用薬30分で効果が発現、約60分で効果最大、約4時間で効果消失

・上記理由により、食直前の服用とする

・低血糖の副作用に注意

⭐︎代表薬剤

スターシス、ファスティックグルファスト、シュアポスト

 

【DPP-4阻害薬】

・インクレチンを分解するDPP-4という酵素の働きを妨げる

※インクレチン…食後に十二指腸や小腸から分泌されるホルモン

※高血糖の状態に合わせて、膵臓からのインスリン分泌量↑上げて、グルカゴン(血糖値上げるホルモン)↓減らすように働く

・DPP-4の働きを阻害することで、インクレチンの働きを良くする

・食後でなくても、高血糖であれば作用する(血糖値依存性インスリン分泌)

・単独使用では低血糖を起こしにくい

⭐︎代表薬剤

マリゼブ、ザファテック、エクア、スイニー、ジャヌビア、グラクティブ、ネシーナ、テネリア、オングリザ

 

【GLP-1受容体作動薬】

・GLP-1はインクレチンの一種で、DPP-4阻害薬と同じような働きをする

・プラス食欲を抑える作用もある

⭐︎代表薬剤

リベルサス

 

②インスリンを節約するもの

 

②-1、インスリンの効きを高めるもの

 

【ビグアナイド薬】

・肝臓におけるグルカゴン作用を阻害して、糖新生を抑制することで血糖値を下げる

・骨格筋における糖の取り込みを増やして、インスリン感受性(抵抗性)を改善させる

・インスリンに依存しないので、低血糖を生じない

・消化管からGLP-1の分泌も刺激するので、DPP-4阻害薬との相性がよい

⭐︎代表薬剤

グリコラン、メトグルコ

 

【チアゾリジン薬】

・骨格筋や肝臓におけるインスリン抵抗性を改善する

・肝臓での糖新生が抑制され、末梢組織での糖利用が高まる

・脂肪細胞を小型化する作用がある

・むくみ、体重増加のリスクがある

⭐︎代表薬剤

アクトス

 

②-2、糖の吸収や排泄を調整するもの

 

【α-グルコシダーゼ阻害薬】

・腸管での糖の吸収を抑えて、インスリンを節約する

※α-グルコシダーゼ…糖の加水分解を手助けする酵素

〈例:でんぷん〉

〔デンプン(多糖類)〕①→〔マルトース(二糖類)〕②→〔グルコース(単糖類)〕

単糖類になって初めて、体内に吸収される

①で働くのはアミラーゼ(だ液、すい臓)

②で働くのがマルターゼ(小腸)

マルターゼやスクラーぜ(スクロース…ショ糖をグルコースとフルクトースに分解)、ラクターゼ(ラクトース…乳糖をグルコースとガラクトースに分解)が、α-グルコシダーゼ(小腸)

・α-グルコシダーゼの働きを阻害することで、糖質の消化、吸収を遅延して、食後の急激な血糖上昇を抑える

・遅延するだけなので、吸収総量を抑制するわけではない

・オールスパイス、ナツメグ、セージ、タイムなどのスパイス・ハーブも、同じような作用を持つらしいよ

⭐︎代表薬剤

グルコバイ、ベイスン、セイブル

 

【SGLT2阻害薬】

・過剰な血糖を尿中に排出することで、インスリンを節約する

※SGLT2…体にとって大切な糖を維持するために、腎臓の糸球体で作られた原尿から糖を再吸収する作用もつタンパク質

・SGLT2阻害薬は、糖の再吸収を阻害す

・体内で糖が使われず体外へ出ていくので、体重減少が起こりやすい

・尿糖の増加により、尿路感染のリスクがある

⭐︎代表薬剤

スーグラ、フォシーガ、ルセフィ、デベルザ、カナグル、ジャディアンス

 

③インスリン分泌を高めながら、インスリンを節約するもの

 

【イメグリン】

・すい臓でのインスリン分泌を促す作用と、肝臓や筋肉でのインスリン効果を高める

・最近14日の投与制限が解除されたばかりなので、これから実用が増えていくと思われる

⭐︎代表薬剤

ツイミーグ

 

糖尿病治療薬は、数種類の組み合わせで使用される事が多いし、合剤も多いので、頭のなかを整理できてよかったですにっこり

 

たくさんの薬があるけれど、基本は食事と運動療法ですよ。

mi.