コンサル指導で避けるべき「3つの罠」


起業家コンサル20年・杉本幸雄


コンサルタントという仕事は、知識やノウハウを教える仕事だと思われがちです。


しかし、


20年以上にわたり、多くの経営者や専門家を指導してきて、私は違う結論にたどり着きました。


これまでの指導セッションは累計2万回を超え、クライアントの売上加算額は累計110億円を超えています。商業出版も6冊経験させていただきました。


ありがたいことに、多くの成果や実績にも恵まれました。


しかし、それでもなお、私が警戒し続けているものがあります。


それは競合コンサルタントでもありません。


AIでもありません。


不況でもありません。


「人との距離感を見失うこと」です。


コンサルタント業の成否、つまりクライアントの成否を分けるのは、与える知識量ではありません。


「人との距離感を見失わないこと」


これに尽きます。


もちろん専門知識は必要です。


経験も必要です。


技能も必要です。


しかし実際には、多くのコンサルタントは別の理由で失敗しています。


それは、


クライアントとの関係性に対する油断です。


今日は、私がコンサル指導の現場で常に自戒し、注意している「3つの罠」についてまとめてみました。




罠1 信頼されていると図に乗らない


クライアントから信頼されることは、とてもありがたいことです。


相談される。


打ち明けられる。


頼られる。


感謝される。


成果を認められる。


これはコンサルタントにとって嬉しいことです。


しかし、この状態が続くと危険です。


人は無意識に勘違いを始めます。


「私は信頼されている」


から、


「私は必要とされている」


になり、


やがて、


「この関係はずっと続く」


と思い始めるコンサルタントがいます。


ここが落とし穴です。


クライアントは決して友人ではありません。


仲間でもありません。


あくまでも契約関係です。


お金の関係が土台にあります。


だからこそ、私はコンサルタントとして常に自分に言い聞かせています。


「信頼されているときほど、距離感を保て」と。


緊張感を失った瞬間から、提案の質は下がります。


確認を怠ります。


思い込みが増えます。


甘えが生まれます。


そして、相手への敬意が少しずつ薄れていきます。


良い関係を長く続けたいなら、馴れ合いになってはいけません。


適度な緊張関係こそが、健全な信頼関係を支えるからです。


私は2万回以上の指導を行ってきましたが、成果を出し続けるコンサルタントほど、実はクライアントとの距離感に慎重です。


逆に、実力よりも親しさに依存し始めると、関係は崩れやすくなります。


信頼されることと、油断することは違います。


そこを混同してはいけないのです。




罠2 相手の言葉を鵜呑みにしない


クライアントが言っていることを、そのまま信じる。


一見すると素晴らしい姿勢に見えるでしょう。


しかし、優秀なコンサルタントは鵜呑みにはしません。


なぜなら、人は本人も気づかないまま事実を歪めて認識していることがあるからです。


また、見栄やごまかし、時には嘘もあります。


たとえば、


「集客がうまくいかない」


という相談があったとします。


しかし深く話を聞いていくと、実際には集客ではなくコミュニケーション能力に問題があるケースがあります。


あるいは、


「時間がない」


と言いながら、


実際には主体性が薄いだけかもしれません。


本人が理解している現実と、本当の原因、つまり真因は一致しないことが少なくありません。


だから私は、言葉よりも構造を見ます。


土壌を見ます。


因果関係を見ます。


相関関係を見ます。


発言よりも行動や習慣を見ます。


主張よりも数字や事実を見ます。


コンサルタントの仕事は、相手の言葉に同調したり共感したりすることではありません。


相手自身も気づいていない真因を発見することです。


おそらく、累計110億円以上の売上加算に関われたのも、表面的な問題だけを扱わなかったからだと思っています。


売上が上がらない理由は、売上そのものにあるとは限りません。


集客、営業、人間関係、習慣、商品設計、価値観。


根本原因はもっと深い場所に隠れていることが多いのです。


だから額面通りには受け取りません。


疑います。


洞察します。


より深く理解するために、一歩引いて全体像を観察するのです。




罠3 関係性は儚いものだと知る


私はいつも心のどこかで思っています。


「きっと契約解除になる」


と。


もちろん、解除を望んでいるわけではありません。


しかし、そう考えている方が自然です。


健全です。


どれほど成果を出していても、


どれほど感謝されていても、


どれほど長い付き合いでも、


契約関係は終わりを迎えます。


人間関係も同じでしょう。


これは現実です。


会社の状況が変わることもあります。


予算がなくなることもあります。


担当者が変わることもあります。


相手の優先順位が変化することもあります。


こちらに原因がなくても、契約は終わります。


だから私は、関係の永遠性を前提にしません。


いつ終わっても後悔しないように、毎回の指導に全力を尽くします。


次回がある保証など、どこにもないからです。


「来月も契約が続く」


ではなく、


「今日が最後かもしれない」


そう考えると、不思議と仕事の質が上がります。


感謝も伝えられます。


手も抜けなくなります。


そして結果として、関係が長く続くことも多くなるから不思議です。


商業出版を6冊経験しても、


長年コンサルティングを続けても、


この感覚だけは変わりません。


人は去る。


関係は終わる。


だからこそ、今この瞬間を大切にする。


私はそう考えています。


とにかく、人間関係は儚いものです。




まとめ


コンサルタント業という仕事は、人間関係の仕事です。


だからこそ危険なのは、知識不足ではありません。


関係性に対する慢心です。


私は20年間、この仕事を続けてきました。


指導回数は累計2万回を超え、クライアントの売上加算額は累計110億円を超えました。


商業出版も6冊経験しました。


しかし、その数字があるから安全になるわけではありません。


むしろ逆です。


経験が増えるほど、


成果が増えるほど、


信頼が増えるほど、


慢心する危険性は高まります。


だから私は今でも自分に言い聞かせています。



  • 信頼されても図に乗らない

  • 相手の言葉を鵜呑みにしない

  • 関係はいつか終わるものだと思う


少し冷たい考え方に聞こえるかもしれません。


しかし実際には逆です。


この3つを忘れないからこそ、相手への敬意を失わずにいられる。


緊張感を保てる。


そして、長く価値提供を続けられる。


コンサル指導で最も恐ろしい敵は、外部環境でも競合でもありません。


慣れです。


そして、


慣れから生まれる慢心なのです。


これはコンサルタントだけの話ではないかもしれません。


友人関係。


恋人関係。


夫婦関係。


親子関係。


あらゆる人間関係にも共通しているように思います。


相手が離れないと思った瞬間に、人は雑になります。


感謝を忘れます。


敬意を失います。


そして少しずつ関係が壊れていきます。


慢心がトラブルを引き起こす。


だからこそ、人は謙虚であり続けなければならない。


私はそう思っています。