内向的な起業家は、言語化さえできれば「感情の渋滞」が起きない。  
そして、それはわたくし自身の20年以上のひとり経営の中で、もっとも静かで強力な武器だった。(起業家コンサルタント 杉本幸雄)


午前中の自由が丘は、いつも少しだけ機嫌がいい。  
街の空気が、わたくしの内側の静けさと歩調を合わせてくれているように感じる。  
高台の風は乾いていて、湿度も温度も、わたくしのような陰キャで内向的な起業家にはちょうどいい。  
世界がわたくしを急かさない日だけが、わたくしの仕事を深くする。

ブラックコーヒーを片手に、わたくしは今日も言葉を整えるところから一日を始める。  
言葉を整えるという行為は、わたくしにとって呼吸のようなものだ。  
呼吸が乱れれば、感情が渋滞する。  
言葉が乱れれば、世界が濁る。

わたくしは静かに働くタイプの起業家だ。  
大声を出すことも、群れることも、どうにも性に合わない。  
むしろ、ひとりぼっちで淡々と考えているほうが、ずっと遠くまで走れる。

20年以上、ひとり経営でクライアントの売上を110億円以上押し上げてきた。  
その過程で、コンサル指導セッションは気づけば2万回を超えていた。  
毎日書き続けているビジネスブログは、16年目に入った。  
商業出版も6冊になった。  
どれも派手ではないが、静かに積み重ねた結果だ。  
そして、そのすべてが「静かな思考」と「言語化」から生まれた。  
これは、わたくしの人生の中でもっとも確かな事実だ。

陰キャで内向的な起業家は、感情が渋滞しやすい。  
他人の言葉に反応しすぎたり、場の空気を読みすぎたり、  
処理しきれない情報が胸の奥で滞留する。  
わたくしも長いあいだ、この現象に悩まされてきた。

しかしある日、気づいた。  
渋滞しているのではなく、言語化されていないだけなのだと。

言葉にならない感情は、ただの霧だ。  
「モヤモヤしている」という表現は、よく出来ている。  
霧は形がないから、どこに置けばいいのか分からない。  
だから胸の中や頭の中をうろうろし、疲労を生む。

わたくしはこの霧を、毎朝コーヒーを飲みながら、ひとつずつ言葉に変換していった。

「今日は嬉しい」  
「これは得意だ」  
「ここまでが、自分の役割」  
「これは大事だ」  
「これはやらない」  
「これは嫌い」

そんな単純な言葉でいい。  
言語化とは、感情の交通整理そのものだ。  
標識が立てば、渋滞は起きない。  
渋滞が消えれば、世界は静かに流れ始める。

わたくしの人生目的は、  
「強くて優しい人になる。強くて優しい人たちを増やす」ことだ。

そのためには、まず自分自身が静かに整っていなければならない。  
陰キャで内向的、物静かな起業家が長く走るためには、  
派手な宣言よりも、静かな言語化のほうがずっと役に立つ。

わたくしは言語化によって、自分のキャラクターを理解した。  
口下手で、反すう思考で、刺激に敏感すぎて、疲れやすい。  
しかしこの特長は、観察力と本質抽出力という形で、  
わたくしの仕事に深い精度をもたらしてくれている。

言語化は、自尊心の土台にもなる。  
「わたくしはこういう人間だ」と言えると、  
他人の評価が心の中に侵入してこなくなる。  
さらに、他人の評価そのものが変わる。  
境界線が静かに引かれ、わたくしの世界が守られる。

物静かな陰キャ、内向的な起業家は、言語化さえできれば、  
感情が渋滞しない。  
渋滞しなければ、疲れない。  
疲れなければ、長く走れる。

そして長く走れる人だけが、ちゃっかり勝つ。  
わたくしはそう信じて、今日も静かに走り続けている。