新しい市場、創りの連続。既存マーケットをズラす戦略

はい、陰キャに誇りしかない。
ぼっち起業家、杉本幸雄です。コーヒーを淹れて、レコードを一枚かけてから仕事を始めることが多い。二十年ほど前に、経営コンサルタントとして法人を設立し、静かに起業しました。
わたくしが生きている目的と、ビジネスをしている目的は同じです。それは、日本に強くて優しい人を増やすこと。強さと優しさは、互いに矛盾しない。むしろ、余裕が生まれたときに初めて両方が同時に育つものだと考えています。
そのために、まずはわたくしのコンサルで人を【お金持ち】にしています。お金は目的ではなく、手段です。お金の余裕が生まれると、人は許せるようになり、優しさが自然に出てくる。そういう変化を何度も見てきました。
これまでに見てきたのは、約1万人の起業家、経営者、起業家予備軍。コンサルは延べ2万回ほど行い、110億円に達しました。本は商業出版で6冊目を出したところです。
派手な自己主張は得意ではないけれど、静かな確信は持っています。夜の散歩のように、少しずつ歩を進めること。小さな習慣の積み重ねが、やがて大きな違いを生む。そんな仕事を、これからも続けていきます。
新しい市場、創りの連続。既存マーケットをズラす戦略
朝のコーヒーを淹れるとき、
豆の香りが部屋の隅々に広がる。香りはいつも、
これから始まることの予感を連れてくる。
市場をつくるという行為は、たぶんこの香りに似ている。
最初は小さな変化で、
誰も気づかない。
だが時間が経つと、その変化は空気を満たし、やがて人々の行動を少しずつ変えてしまう。
わたくしが最初に「ズラす」ことを意識したのは、ネット通販の世界に足を踏み入れたときだった。通販プロデューサー®、ネット通販コンサルタント業を始めたことが、それ。
二十年前のことだ。
まだ楽天市場が生まれて数年のことで、Amazonさえ、今ほど有名でもなく身近でもなかった。
周囲の反応は冷ややかだった。銀行や税理士は、ネットで買い物をする人が増えるはずがないと言った。詐欺みたいなことはやめろ、とも。そういう言葉は、冬の風のように冷たく、しかし真っ当で普通の彼らにとっては、現実味があった。
それでもわたくしは、ほんの少しだけ視点をずらしてみた。商品を並べるだけの店ではなく、買う人の「物語」をつくることに注力した。商品の説明文を変えただけではない。商品名も検索対策として付け、今では当たり前の縦長のLPも量産、写真の撮り方、梱包の仕方、問い合わせに対する返事のトーン、発送のタイミング。小さな要素を一つずつ調整するようにクライアントたちにコンサル指導していくと、驚くほど、売れた。止まらない右肩上がりだ。
全体の印象が変わる。
市場そのものが、少しだけ傾くような感覚だ。
市場をズラすというのは、既存のルールを壊すことではない。むしろ、ルールの隙間を見つけて、そこに新しい習慣を差し込むことだ。人々は大きな革命を求めているわけではない。日常の中で、ほんの少しだけ便利になったり、心地よくなったりすることを求めている。そこに気づけるかどうかが、
わたくしのコンサルとしての勝負どころだ。
次に取り組んだのは、医師や弁護士といった「先生業」向けのネットマーケティング指導だった。優秀な国家資格者たちは、専門性が高いがゆえに、マーケティングの世界からは距離を置かれていた。誰も彼らに寄り添おうとしない。そこにわたくしは入っていった。彼らの言葉遣い、時間の使い方、患者や依頼者との関係性を丁寧に観察し、それに合わせたコミュニケーションの設計を行った。
結果として、そこでも一人勝ちのような状態が生まれた。なぜなら、医者でも弁護士でも、インターネットを使いこなすことは、経営を維持するための売り上げ創りに必須でありながらも、彼らは医学部でも、法学部でも、ネットマーケティングも経営戦略もほとんど学んでいないからだった。
この二つの経験から学んだことは、「誰も見ていない隙間」を見つけることの重要性だ。隙間は必ずしも大きくない。むしろ小さく、目立たない。だがその隙間に価値を差し込めば、競争は意味を失う。競争相手は、そもそもその隙間に気づいていないからだ。
そして数年前からは、内向的な社長専門の経営コンサルティング業に取り組んでいる。内向的な社長は、経営者全体の半分、少なくとも三分の一はいるだろう。彼らは陽気で社交的なコンサルタントやコーチのやり方に疲れている。大声で鼓舞されることを望んでいない。静かな戦略、深い思考、そして実行のための小さな習慣を求めている。ここでもまた、既存のマーケットを少しだけズラすことで、新しい需要が生まれた。
市場をズラすための具体的な方法を三つにまとめると、こうなる。
1. 観察を深めること
目に見えるデータだけでなく、言葉にならない不満や習慣を観察する。夜中にこっそり検索する行動、電話をかける前のためらい、メールを開く時間帯。そうした細部にヒントがある。
2. 小さな実験を繰り返すこと
大きな賭けは必要ない。小さな変更を複数回試し、反応を見て調整する。ジャズの即興演奏のように、リズムを変え、フレーズを試す。うまくいったものだけを残す。
3. 価値の伝え方を変えること
同じ商品やサービスでも、伝え方を変えるだけで受け取られ方が変わる。言葉の選び方、見せ方、接触のタイミング。これらはすべてマーケットの「重心」を動かす力を持っている。
市場をズラすことは、孤独な作業でもある。誰も最初は理解してくれない。銀行や税理士のように、既存の常識に縛られた声が大きく聞こえることもある。だが孤独は悪いものではない。孤独は、余計な雑音を取り除き、本当に重要なものだけを聞くための静寂だ。
わたくしはよく夜に走る。走っていると、頭の中の雑音が整理される。アイデアは走るリズムに合わせて現れる。市場をズラすアイデアも、同じようにリズムの中で育つ。最初は小さな違和感として始まり、それがやがて習慣になり、最後には市場の一部になる。
最後に一つだけ言っておきたい。新しい市場を創ることは、決して「一発逆転」の話ではない。むしろ、連続した小さなズレの積み重ねだ。毎日のコーヒーの淹れ方を少し変えるように、少しずつ世界を変えていく。その積み重ねが、ある日突然「一人勝ち」という結果をもたらす。
窓の外では、電車が静かに走っている。遠くで誰かがピアノを弾いているような気がする。僕はもう一杯コーヒーを淹れて、次の小さなズレを考え始める。市場はいつだって、ほんの少しの視点の移動を待っているのだから。

