飲食業は「趣味」か「多店舗展開」か?―経営の選択肢と戦略


飲食業を始めたいと、

わたくしはクライアントの息子さんから相談されました。息子さんはアイデア豊富で調理も上手です。

そして、「美味しい料理を提供すれば成功できる」と考えがちです。しかし、飲食業の経営は決して甘くありません。手間がかかる上に、在庫管理の煩雑さやコストの高さに対して、利益率が思ったほど伸びない現実があります。


そのため、わたくしは

飲食業を選択する際には、「趣味として楽しむか、多額の資金調達をして多店舗展開で利益を追求するか」のどちらかのあり方を選ぶべきだと、お応えしました。



飲食業の厳しさを理解する

飲食業は、以下のような要素が収益構造に大きく影響を及ぼします。


家賃

好立地であればあるほど高額になり、固定費として経営を圧迫します。家賃が余分にかからない自宅や自社所有の物件であれば、優位性は高まります。

人件費

従業員の確保や育成は難しく、人件費の管理が重要になります。ですから、給与の支払いがなくても働ける、自分自身だけか、家族経営がお勧めです。募集費用、育成費用、社会保険などの福利厚生がシミュレーションに入っていないケースも見受けられます。

営業時間

長時間営業すれば売上のチャンスは増えますし、家賃もお得になりますが、人件費や光熱費の負担は増加します。もちろん、体力や精神面は疲弊します。

価格設定

値付けは経営そのものです。値付けで、売上と利益額が決まります。その売上や利益が資金繰りを支えます。

単価が高くても客足が遠のけば意味がなく、適正価格の設定が必要です。何を売るか、そしてターゲティング、店構えなどとも、価格設定は表裏一体の関係にあります。


こういう話を、

息子さんにすると、いかにも反対しているかのように伝わるかも知れませんが、反対ということではありません。


事実ベースで、話しているだけです。


「趣味レベル」で経営する選択肢

飲食店を個人で経営し、利益度外視で楽しむ選択肢もあります。


例えば、週末だけの営業や、趣味として好きな料理を提供する形態です。この場合、収益性を最優先する必要がないため、経営のプレッシャーが軽減されます。休みたい時には休めばいいですし、手持資金の範囲内で何でも決めればオッケーです。


とはいえ、もしお店を継続するためには最低限の収益構造を確保しなければならず、家賃や人件費の管理は必須になります。


わたくしの住まいの東京自由が丘では、毎月必ず新規店舗オープンと、閉店廃業のお店があります。中には、とてもキレイに改装してオープンしたにも関わらず、わずか2カ月間程度で閉店するお店もある印象です。趣味にしても、早すぎないか、初期費用をドブに捨てたとご近所さんから揶揄される始末でしょう。


「多店舗展開」で安定したビジネスを構築

飲食業で安定した利益を確保するには、規模の経済を活かした多店舗展開が鍵になります。これはコンビニ経営でも同様です。最低でも10店舗以上のチェーン展開を視野に入れ、以下のようなポイントを押さえることが重要です。

資金調達

初期投資を確保し、効率的な経営基盤を作る。

オペレーションの標準化

料理の品質・サービスの均一化を図り、経営管理を効率化する。

ブランド力の強化

店舗数を増やすことで認知度を向上させ、リピーターを獲得する。



まとめ

恐らく、息子さんは、こんな話の展開は望んでおらず、

「何を出すの?」

「美味しそう」

「試食会して欲しい」

みたいな、夢を見ていたのではないかと推察します。


しかしながら実際は、上記のような話と、 

「初期費用は?」

「事業計画書は作った?」

「これまでの経験や実績は?」

と、

わたくしから言われてしまい、とても苦しそうにされていました。


飲食業は、利益を求めるならば「個人店」よりも「多店舗展開」が有効です。一方で、「趣味として楽しむ」というあり方も、満足度の高い選択肢となるでしょう。どちらを選ぶにせよ、それなりの【お金】と【決意】が必要です。


自由が丘でなくても、

長年、飲食業を個人店で経営されているオーナーは、とても優秀か、頑張り屋ということは間違いないでしょう。


高価格にして、味も雰囲気も充実させているか、

安値で趣味を維持するために、アルバイトをされている方もいらっしゃいます。


こうした視点を持つことで、クライアントの息子さんが適切な決断をできるようになるかもしれません。



とにかく、後悔や

予期せず家族を巻き込むことは避けたほうがいいかなと想います。