ザ・アイス大阪、29日昼公演を配信で観た。
かなだいの白い衣装のソーラン節は目にも涼しく良かったが、家で見るというのは生活の雑事が絡んでくる。
リビングのテレビにパソコンを繋げて見ている私の後に、ダイニングで昼食食べ出した下の子がいるのだ。落ち着いて観れないというか。
なので大輔さんの演目でインパクトがあったのは、下の子が自分の部屋に引っ込んだ後の(他の家人は出かけていた)「ダンスオンザフロア」、つまり陸ダンスのAdoの「新時代」の方だった。
スタート時。
演技直前、普通の高橋大輔の顔と、一瞬で変わり、これがかっこいい。こちらのハートが撃ち抜かれる。
そして踊り。軽くて力抜けているようで、テンポよくうなり、しなる体。あーやっぱり陸ダンスの大輔さんはいい(いや、「も」だけどね。氷上だっていい)。
エイモズくんの見せ場パートに行くので手を彼に向けるポーズですら、演技の一部として神経が行き届いてる。なのでこちらも自然と目がいく。さすが。
と、最初はポーズに反応したのだけれど。
なんか大輔さん、ときどきエイモズくんの方に視線が向くような動きしてない?
同調した動きのあと、エイモズくんが自分を押し出すような動きをするところで、あえてゆるっとするというか。
私は高橋大輔のファンなので、視線は基本的に大輔さんを追うのだ。その、ズームアップしている視野を広げて、エイモズくんとの調和した動き、二人全体を視野に入れるようにしてくるというか。
音楽の一音一音を体の動きで拾い上げて表現すると言われる大輔さんは、音だけでなくエイモズくんの動きすら自分の動きに反映させているような、そんな感じなのである。
これがアイスダンス効果かしらん?自分以外をも見せる技術。
世界選手権の「オペラ座の怪人」を見た時に思ったのだ。
「演技の正面を、クリスティーヌのいる方にしている?」と。
シングルのときは基本ジャッジを正面と思いつつ、背中の観客まで意識しているような大輔さんの演技。
それが、むろん背中を観客が見ても隙がないポーズになっているのは変わらないものの、背中側の観客には意識を(少ししか)向けていないように見えた。
クリスティーヌ(哉中さん)のいる方が大輔さんの演技の正面。彼女に体を向けつつ、彼女の向こう側の観客を主に意識して演技をしている、そんな感じ。
「これが『フレーム』というやつかしらん?」
大輔さんの演技に注目しようとしても彼の向いている方向に哉中さんがいるので、見ている方は自然と哉中さんに注目する。
観客の視野を必要以上に広げないという点で、フレームになっているのかなと思ったのである。
そういう「自分じゃない他者に観客の興味を持たせる」という技術を、この陸ダンスでも使ったのかなと思ったのだ。
ふと思う。
「Love On The Floor」のシェリル・バークと、今の大輔さんの二人で踊っている姿が見たいなあと。
あのダンスショーのクライマックスシーンのフラメンコ、二人の動きは音楽に同調してはいた。けれどお互いの良さを引き出すような絡みのある動きではなかった。
LOTFでのシェリルは「他者を見せる技術を持たないダンサー」だからこそ高橋大輔を選んだ可能性がある。後日、彼女は語っていたのだ。ボールルームダンサーとしてパートナーと踊るのが基本のシェリルにとって、ソロで踊る舞台であるLOTFは一つの挑戦だったと。つまり、クライマックスにおいて他者を見せる力を持つダンサーと組んでは、この舞台をやる意味はなかったかもしれないのだ。
ただ、今ならば。
パートナーと踊ることでキャリアを築き、その後一人で踊る意味と価値を理解したシェリルと、一人で演じてキャリアを築き、その後パートナーと演じる意味と価値を理解した高橋大輔が共に踊る。
それって、絶対面白いだろうな、と思ったのである。