四大陸選手権フリーダンス「オペラ座の怪人」。




弁当作りを(無理やり)終えて、朝食準備に入る前のわずかな時間。FODプレミアムで視聴する(5分間練習すら見られなかった)。




演技最初の印象は、これまでになく美しくて、いい練習をしてきたんだなと思う。

うっとりと見ていたけれど、途中から大輔さんの方に気になる動きが、あれ?哉中さんと合ってないようなという動きが、ときどき入ってくる。そのたびに左上のカウンターをみては、「あ、でもGOEプラスだし、気のせいか?」と思うことを繰り返す。

落ち着かない。何せ、その「おかしい」動き、妙に蠱惑的なのだ。普通のミスは綻びにすぎないと感じるのだけれど、どこか魅力がある、しかしアイスダンスの良さとは違うような。

やっぱり高地が影響している分演技にブレがあるのかと思い、それでも最後まで逃げ切ってと思いつつ見ていたけれど、転倒。

うん、全日本選手権のときとは違って、意外ではなかった。




おかしいと思ったのは、多くの輔オタの皆さんと同じく、キスアンドクライで高橋大輔選手が全日本ジャージを着ていない、渡されても着られないところを見てだった。

大輔さんが、あの律儀な人が、全日本ジャージを着ない?あり得ない。


とはいえカメラは次の小松原・コレト組に切り替わる。見られる状況だというのに日本代表の演技を見ないわけにはいかない。そしてそれが終わったら朝食準備のタイミングになり、四大陸選手権のことは頭から追い出して取り掛かった。




そして時間ができてSNSをチェックしたら、酸素が少ない状況の怖さを憂える言葉が並んでいて、改めてぞっとする。




蠱惑的と私が感じた動きは、いつも通りにいかない体から、体に染みついている魅力的な形をなんとかして取り出したものだったのだろうか?


そういえば後半の幸せそうなクリスティーヌ、全日本のときはファントムにも見せているような笑顔だったけど、今回の演技ではファントムからずれたところを見ていた感じだったんだよな。

見ているときは「その方がクリスティーヌらしいよな」なんて考えていたんだけれど、ひょっとすると哉中さん、大輔さんには自分の演技に共鳴する余裕がないというのを感じて、あえてファントムから意識をそらしたのかもしれない、などと思ってしまう。

ま、ただの素人の浅い考えに過ぎないけどね。




意識しているのにうまく動けなかったり、意識そのものが薄れてしまったのかもしれない状況の中で、なお、パートナーを守っていた。これも、体の中に染みつくまで蓄積されているものなのだろう。

カップル競技の男性は、それを身につけてこそ、なんだろうな。木原龍一選手もまたそうであるように。




今までの努力で積み上げてきたものが崩れるような状況。土が崩れた後に現れた岩肌の美しさを見るような。

それは美しくて、しかし苦かった。どこかで感じたことのような、と思ったら、2014年の中国杯男子フリーのハン・ヤン選手と羽生結弦選手の演技だったと思い出す。

あのときは「あんな演技は、いらない」と思ったんだっけ。


今回もそうだな。

かなだいの「オペラ座の怪人」は、これまでで一番美しくて、多分動画は何回も観るだろうけれど。

でも、やっぱり、土に埋もれていた岩肌を見るより、土の上に咲いた艶やかな花の方を、私は見たいと思うのだ。