いやあ、隙間時間に切れ切れに録画を観るというの、やっぱり視聴体験としての質は低いんだなと、ライブビューイングで二時間以上ぶっ通しで見て気がついた。

公演時に気が付かなかったことが色々目に付いたのだ、今回。
録画再生は何度かそれまでもしていたんだけど、何せシーンシーンで止めて家のことやったりしてた。これだと初見の印象をなぞる形になってしまうようで。
頭にある記憶を覆すとなると、ある程度時間をとって没頭する必要があるんだなと思った。



今回、見直して思ったこと。
「長道って、紫の上自身を捕まえたかったんだ。」
公演のときは光源氏を攻撃するために紫の上を手に入れようとした、それだけだと思ってたんだよね。

しかし今回放送を見て、長道が何度も「紫の上」と口にしていることに気がつく。
もしかすると「紫の上を捕まえる」ことの方が本当に目的で、そのついでに光源氏も追い落とそうとした、そんな感じだったのか?
「光源氏から娘を奪え。」ではなく「あの娘が欲しい。光源氏が邪魔するなら始末せよ。」だったのか?

考える。
朱雀帝の次は若宮。父親がそう定めた。つまり、朱雀帝は自分の子を帝に出来ない。
これは、弘徽殿女御としては許せないことだろう。自分はただのつなぎの国母、代々の皇家を継いでいくのは藤壺の系。こんな腹が立つ話はない。
なんとしても朱雀帝の子に皇統を継がせたいはずであり、それは長道も同じ。
しかし肝心の朱雀帝が子を持つつもりがなかったら?
「私が子どもを持っても仕方あるまい。」と、今の妃に夜伽をさせず、新たな妃を迎えることをしなければ?
弘徽殿女御と長道が新たな妃を後宮にいれたところで、やはり夜のお召しがなかったら?
その場合、弘徽殿女御にも長道にもどうしようもないのである。

二人は探していたのかもしれない。朱雀が心から欲する女性を。
そして朱雀の従者あたりから、そういう女性がいるという話を知った。だから紫の上を光源氏から奪おうとしたのかも知れない。

「光源氏はなんで父親の葬儀に紫の上を連れて行ったんだ?」と、公演時ちらっと思った。
それは「私の伴侶を見て欲しい。伴侶に私の父を見送って欲しい。」という光源氏の希望かなと考えたんだけど、それだけではなかったのかも知れない。
実は紫の上は、それ以前に既にさらわれそうになっていて、家に置いておけなかったとか?
父の葬儀なら無体なことはしないだろう、自分の身近に置いておいた方がいい、光源氏はそう判断したのに、長道は葬儀お構いなしだった。そういう場面だったのかもしれない。
(公演では光源氏が父親の死を知った直後に葬儀の場面になったけれど、当然ながら死の知らせから葬儀までは数日あくはずである。その間に何かあっても不思議はないのだ。)

幽閉されていたはずの紫の上が、なぜ弘徽殿女御と長道の光源氏毒殺の話を聞いていたのか、不思議だったんだけど。
「朱雀帝が望むので仕方無しに後宮に幽閉している厄介者」ではなく、「帝の寵愛を受けて、いずれは子を産んで欲しい女性」だったとしたら、後宮を歩いてても不思議はない。
ぜひとも健康でいてほしいだろうから。

そっか、そういう話だったのか。

いやー、一度見ただけでは物語って分からないものなんだね。
むろんこの見立ても正しいかどうかは分からない。けれど少なくとも、そう観ることが可能な話ではある。