有吉京子「SWANー白鳥ー」の「アグリーダック」 | フィギュアスケート妄想・疾走者

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どこかの民族では、数の概念は「1、2、たくさん」しかなかったとかいう話を聞いたことがある。

一人でも、二人でも、大勢と組んでも、高橋大輔はかっこいい。

髙橋大輔現役復帰。

本人が展開してくれるであろうこれからにワクワクしつつ、私、妄想派なものでついリアルではない世界にも頭が飛んでいく。

そんな状態で思い出したのが、大昔に読んだ有吉京子のバレエ漫画「SWANー白鳥ー」だった。正確にいうとその漫画の中に出てくる創作バレエ「アグリーダック」。そう、「みにくいアヒルの子」。
この、劇中劇のような物語を思い出したのである。

きょうだいからも疎まれた醜いアヒルの子は、生まれた場所から離れ、自分が生きるべき世界を探してさ迷う。そして最後に自分が白鳥となったと知った主人公は美しく舞うのである。それがあらすじ。

ただしこれは単なるおとぎ話ではない。
主人公がさすらう世界はキラキラしたショーダンスや人間的なモダンバレエの世界。それらは魅力的ではあるものの「私の世界ではない」と主人公は立ち去る。
そして最後に白鳥、つまりクラシックバレエの聖なる美へとたどり着くのである。



キラキラした芸能界、ショーダンス、自分ではなく義経という役として氷の上に立った歌舞伎オンアイス。
様々な世界を旅した髙橋大輔。
しかし彼は、スポットライトもない、その身一つで美を作り出す競技の世界に戻っていった。
引退し、四年間様々な世界を経験した後、再び競技の世界に戻って来た大輔さんのようだと、ちょっと思ってしまったのだ。



そして、そうやって考えているうちに「アグリーダック」の外側の、漫画「SWANー白鳥ー」の主人公も、ちょっと髙橋大輔に似ているかな、という気がしてきた。

主人公の聖真澄は、北海道でバレエをしていた少女。田舎育ちの彼女は基礎にイマイチ難があり、かつ他にも欠点があるものの、その素質が買われて国立バレエ学校のメンバーに選抜される。
様々な面で不安定さを覗かせつつも、なんだかんだ巡り合わせで表舞台へと行ってしまうところがさすが漫画の主人公。
しかし彼女の欠点は「精神力の弱さ」だった。自分に限界を感じた彼女はアメリカ留学を選び、そこで不如意な境遇に消耗しつつも恋をし、苦しみ…。その中で成長し。
その後、日本のモダンバレエの旗手となる。

実は私、リアルタイムで読んでいたときには、この頃から作品に距離を置くようになった。
ゆらゆらと性格に弱いところがある少女漫画ヒロインらしいヒロインが、よりにもよってパワーを感じるモダンバレエで存在感見せる、それってありー?という気分になってしまったのだ。
彼女の恋人がどうも好きになれない性格というのもあって、この作品を読むの、あまり面白くなくなっていた。

しかしである。
倉敷の田舎の「優しすぎるんじゃないか」と言われた少年が。
大学デビューで舞い上がってヤンキー気質そのままのかっこに一度はなり。で、恋もしたらしく色気を増していき、人間くさい演技の出来る男性になっていくの見ちゃったらねー。
有吉京子先生、正しかったわけか、と、今頃になって思ってしまった。
「ガラスのハート」と言われつつ取るべきタイトルをそれなりに取っていった大輔さんと、なんとかコンクールで勝ち抜いたり大舞台で観客を魅了する真澄と、重ならなくもないしね。



で、主人公の真澄は、モダンバレエで脚光を浴びつつも、実は飽きたらない思いを抱えていた。だからこそ、最後にクラシックバレエへ向かう「アグリーダック」を演じるのである。

そんなところも、今、競技へと戻っていく大輔さんと、これまた重なるように思えたのだ。

手元に本があればちゃんと読んで、似ている点とかもっときちんとまとめるんだけどね。
残念ながら記憶だけで書いたので、違っているかもしれない。ま、そういうものだということでよろしくお願いします。



(ちなみに「アグリーダック」というバレエ作品はありません。有吉先生の創作です。)

それにしても、数十年経ってから、まさか「モスクワ編」とか出るとは思ってなかった。