タイトル:君は月夜に光り輝く+Fragments

著者:佐野徹夜

発行:メディアワークス文庫

発行日:2019年2月23日

 

 

 

 

 

 

【93】君は月夜に光り輝く(佐野徹夜) | 秋風の読書ブログ (ameblo.jp)

上記作品の続編――――というかアナザーストーリー的立ち位置の作品。

本作は是非、本編を読んでからお手に取ってほしいな、と思います。

 

 

あらすじ 

不治の病「発光病」で入院したままの少女・渡良瀬まみず。

余命ゼロの彼女が、クラスメイトの僕、岡田卓也に託したのは「最期の願い」の代行だった。

限られた時間を懸命に生きた、まみずと卓也の物語の「その後」とは――――。

「僕は今でも君が好きだよ」

少しだけ大人になった卓也と、卓也の友人・香山のそれぞれが描かれていく。

他、本編では語りつくせなかった二人のエピソードも収録。

生と死、愛と命の輝きを描き、日本中を感動に包み込んだ『君月』ワールドが再び。

 

 

 

 

短編が6作品収録(後ろ2つは書き下ろしで、他4作品は雑誌掲載作品)

 

■もし、キミと

まみずの亡きあと、ひとりで「死ぬまでにしたいことのリスト」の実行を続ける主人公。

わずか4ページ。そこに愛と友情が詰まってる作品。

 

P8

何度見ても、もう、やり残したことは何も残っていない。

全部やってしまった。

(省略)

これから何をしよう。

僕の、死ぬまでにしたいことはなんだろう。

本当にしたいことをしよう。

 

 

 

 

 

 

■私がいつか死ぬまでの日々

まみず視点の主人公との日々を描いた作品。

絶望の鬱々としたものではなくて、さっぱりと達観した、死を受け入れた少女の独白。

 

 

 

■初恋の亡霊

主人公の友人・香山視点で、まみずとの出会いを語っている。

 

 

 

■渡良瀬まみずの黒歴史ノート

8ページの短いお話。

入院中のまみずと主人公の、他愛ない日常風景。

 

 

 

■ユーリと声

書き下ろし作品。

まみずの死後、大学に進学した香山の生活が一人称で語られる。

偶然出会って関係を持ってしまった、香山の大学の卒業生の侑李ゆうりと、その子供こえとの不思議な関係のお話。

 

 

P103

「言葉に出来ないことがあって。だから音楽を聴いたり、ピアノを弾いたりするわけでしょう」

 

発光病で死んだ旦那の残したレコード店を営む侑李の言葉。

 

全然関係ないんだけれど、

ここのところスランプ気味(といいつつ単にやる気がないだけ)でね。

何やっても集中力ないし、やる気になれないし、狂ったように本を読んでいるわけですが。

どうすればいいのかわからないし、具体的に言葉にもできなくて。

そして、私は再びバイオリンを手に取った。

音楽やっているときは無我夢中だからね。きっとそのうち解決する。

(下手になりすぎてて、ちょっと泣いた)

 

 

 

P154

自分の人生を投げ捨てるのは心地いい。

真面目より不真面目な方が、誠実な気がする。

 

たぶんこれだな。

きっと、いまの自分は何かのプレッシャーを抱え込んでる。

だから真面目に他人の期待に応えようと努力して結果を出せないのは『不誠実』だから、

不真面目に、そもそも努力なんてかなぐり捨てて、

他人からの期待値をわざと下げて、自分の価値を保守しようとしてる。

 

 

 

 

 

P169

「子供ってフィルターで、別の人間って扱われてるみたい。そして、子供らしくない私が、ママは不満なの」

 

子供が大人らしく振舞ったり、

そういう達観した考えを持ったりすることに、問題はない気がする。

逆は問題あるけど。

 

そりゃあ、「大人らしい」という中には「頑固な」みたいなマイナスなイメージもあるし、

あまりに若い年齢で多様性を受け入れて達観した考えを披露したら、

今後のその子のアイデンティティ形成に不安を覚えるかもしれない。

逆に芯のある考えの大人っぽさは、今後どんどん年齢を重ねて、自分と異なる意見を見かけたときに上手いこと受容できるか・・・なんて、やはり不安になる。

まぁ、そんなの勝手な大人心配で、子供には関係けどね。

正直、大人で上記のことを考えている人はごくわずかで、

大抵は「自分の言動に反抗しない従順性」を子どもに求めているだけだと思う。

 

 

関連して

P195

彼女は、自分が深く傷ついているからこそ、そう振舞ってもいいと思っている。

その病んだ思考回路に、巻き込まれたくない。

 

大人は大人らしく振舞うべき、と私は思っている。

それは子供という次世代を保護し育成する成獣として、

社会性を持つ動物としては当たり前の規範だろう。

人間だって哺乳類、動物のひとつですから。

 

侑李さんは旦那を亡くした後、寂しいのかなんなのか、男をとっかえひっかえ。

アルコールに溺れているシーンも出てくるし、

声(侑李の子供)の深夜徘徊についてまともに叱れもしない。

そして声には立派な意思があるのに、それに向き合わず、再婚相手を決めてしまう。

そりゃあ、あなたの人生なんだから好きにしたらいいけれど、

子供がいたらそう自分勝手にするのはどうなのよ、と説教した気持ちですね。

 

居ましたけどね、知り合いで……。

恋愛中毒みたいな、めちゃくちゃな人が。

その子供の面倒を見たこともある。

(当時その子は中学生だったかな…?男の子で。)

他人事だから「あの人も困った母親だ…」くらいで済むけど、

当事者相当可哀想よ?

何人父親違いの子供作る気なのよ!?って思った。

子供に、ちゃんと向き合ってほしかった。

 

 

モンスター化しているクレーマーって、こんな感じだよね。

というか、主張が過度で異常な人たちって、みんな「自分は被害者だ!」って思ってる。

だから我儘言っても許されるとか、

自分と同じくらい相手が傷ついて然るべきだと思ってる。

周りから見たらあなたは加害者だ…。

客観性を著しく欠いているんだよなぁ。

自分の命を生かすことで精一杯なんだろう…。

 

 

 

 

 

■海を抱きしめて

医者になった主人公が一人、海で独白する。

僕は今でも君が好きだよ、と。

 

P220

僕は医者になる限り、君のことを忘れなくてもいい。

ずっと覚えていていいんだ、と思った。

 

大抵は辛いことがあったら人間忘却を選ぶけれど。

こうやって前向きに生きることになれた主人公でよかった。

本編のあとがきの件でも触れたけれど、

きっと作者様は少なからず主人公に自身を投影していた気がしたから。

 

 

 

 

最後に

P199

ちゃんと悲しむことができないと、いつまでも悲しみは残り続ける。

 

 

 

 

本編から約2年。

書き下ろしの文体は洗練された気がする。

今後の作品が楽しみだ。

 

 

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