タイトル:世界から猫が消えたなら

著者:川村元気

発行:マガジンハウス

発行日:2012年10月25日

 

 

 

 

 

あらすじ 

30歳郵便配達員の主人公は、ある日医師に末期がんと宣告される。

絶望の淵に立たされたまま自宅に帰ると、そこにはアロハシャツを着た自分と瓜二つの顔をもつ「悪魔」が待ち受けていた。

「実は…明日あなたは死にます」と非情な宣告と同時に、悪魔は一つの取引を持ち掛ける。

「世界からひとつだけ何かを消す。その代わりにあなたは1日の命を得ることができるんです」

その取引に応じた主人公は世界から次々と"物"を消していく――――

 

 

 

 

LINE公式アカウントで連載小説

2013年の本屋大賞にノミネート

2016年に実写映画化……

 

他にもラジオドラマ化したり、コミカライズしたり、随分話題となった図書だ。

川村元気氏の、初の小説。

 

 

 

 

 

いやぁ~~~

泣いたね。

こんなに泣くかぁってくらい泣いた。

家族愛はずるいわ。

(ご存知の通り、私は家族関係ボロボロなので、家族の話には弱い)

 

 

以前にも川村さんの作品読んで、

『儚い』とか『繊細』だとか思ったけど、この人の作風なのね。

春の朝焼けみたいな、そういう雰囲気のお話だった。

現実と過去を行ったり来たりしながら、細い糸を撚るように進んでいくお話は、どこまでも優しい。

 

 

 

P26

なんて簡単な取引なんだ。

だいたいこの世の中は、くだらないものとガラクタに満ち溢れている。

オムライスの上のパセリ、駅前で配っているティッシュ、分厚い家電の説明書にスイカの種。

(省略)

でもよく考えれば、世界に溢れるありとあらゆるものは、その「あってもなくてもよい」ぎりぎりの境にある。

ひょっとしたら人間そのものですら、そうかもしれない。

僕らが生きているのは、そんなでたらめな世界なのだ。

 

娯楽はほぼそうだよね。

あってもなくても、生命維持には関係しない。

ただ、そこに「生きる意味」があるだけ。

「生きる意味」、喜びとか、快楽とか、そういうもの。

それから、それらを得るために、できるだけ生活を便利にしたもの。

なくても生命維持にはそれほど困らないけど、

いまさら無くなると困る存在で溢れている。

 

 

 

 

 

P128

決まり事がある、ということは同時に不自由さを伴うということを意味する。

だが人間は、その不自由さを壁に掛け、部屋に置き、それだけでは飽き足らず、行動するすべての場所に配置している。

挙句の果てには自分の腕にまで時間を巻き付けておこうとする。

でも、その意味が今はよく分かる。

自由は、不安を伴う。

人間は、不自由さと引き換えに決まりごとがあるという安心感を得たのだ。

 

自由度と責任は比例するよね。

自分が自由であればあるほど、

全世界に対して何か保障してあげなければならないような気持になる。

世界に責任を持たされている気がする。

「できない人の代わりに、できる人がやるべきだ」という考えのせいかもしれない。

 

逆に、「できない理由」があれば、言い訳になるものね。

「忙しかった」から「勉強しなかった」とかね。

 

みんな、自由が欲しいというけれど、

本当は不自由を求めているのではないかと、時々思う。

大海を知って、自分の命に責任持つよりも、

水槽の中のペットとして不自由な自由を謳歌している方が、楽だ。

自分が死んでも、餌を忘れたり、水温調整をミスった飼い主のせい。

自分の命すら責任を持ちたくない、なんて考えが、多い気がする。

 

 

 

 

 

 

 

P153

眠っているキャベツを無理やり母さんの膝の上に乗せ、浴衣を直して部屋を出た。

車いすを押して海岸へ向かう。

まだ外は薄暗く、肌寒かった。

もっと海の近くへ、と母さんが言うのだが、湿って重たい砂につかまり、車いすはなかなか前に進まない。

すると海岸線の向こうに朝日が昇り始め、キラキラと海面を照らし始める。

あまりにも美しいその景色に圧倒されて僕ら家族は立ち止まって、ただ海をじっと見つめた。

 

戻らない過去はとても眩しくて、優しくて、夢から覚める直前の心地よさだよね。

過去ばかり美化されて、未来はいつだって薄暗い。

 

 

 

 

 

物語の締めがよかったなぁ!!

こういう終わり方大好き!!

 

 

初の小説だからかもしれないけれど、

とにかく表現がストレート。

ストレートに胸をえぐりにくる、美しくて切ない描写。

個人的には以前読んだ『四月になれば彼女は』より好み。

まぁ、どちらも命の儚さの話だけど、家族愛と恋愛とだから比較にならないかもね。

 

 

 

本当にすごい泣かされた作品だった。

切ないね。

 

 

 

TOP画は以下からお借りしました!あらまあ!なんてかわいい!!

こたつの上で寛ぐ生後5ヶ月の三毛柄の子猫 - No: 25081154|写真素材なら「写真AC」無料(フリー)ダウンロードOK (photo-ac.com)

 

 

 

 

 

 

 

 

本書を気に入った方には以下もおすすめ!

 

 

同作者のお話。こちらは恋人、初恋の人とのお話。

【56】四月になれば彼女は(川村元気) | 秋風の読書ブログ (ameblo.jp)

 

 

家族愛。こちらも作品にも泣かされました…

【112】ガラスの封筒と海と(アレックス・シアラー)(訳:金原瑞人・西本かおる) | 秋風の読書ブログ (ameblo.jp)

 

 

泣ける短編集。優しい雰囲気の作品。

【10】コンビニたそがれ堂(村山早紀) | 秋風の読書ブログ (ameblo.jp)

 

 

 

 

こう見ると結構作品に泣かされているな、自分…

家族愛に限定して涙腺がめちゃくちゃ弱い。

 

 

他にもおすすめの本があればコメントで教えてくださいね!

では素敵な読書ライフを!