タイトル:クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い

著者:西尾維新

発行:講談社文庫

発行日:2008年年4月15日

 

 

 

 

 

あらすじ 

自分ではない他人を愛するという事は一種の才能だ。

他のあらゆる才能と同様、なければそれまでの話だし、たとえあっても使わなければ話にならない。

噓や偽り、そういった言葉の示す意味が皆目見当がつかないほどの誠実な正直者、つまりこのぼくは、4月、友人の玖渚友に付き添う形で、財閥令嬢が住まう絶海の孤島を訪れた。

けれど、あろうことかその島に招かれていたのは、ぼくなど足下どころか靴の裏にさえ及ばないほど、それぞれの専門分野に突出した天才ばかりで、ぼくはそして、やがて起きた殺人事件を通じ、天才なる概念の重量を思い知ることになる。

まあ、これも言ってみただけの戯言なんだけれど―――

 

 

第23回メフィスト賞受賞作。

著者西尾維新は、アニメ化もされている化物語や刀語の作者でもあるため、知っている方も多いのではないだろうか。

その西尾維新のデビュー作が本作である。当時、20歳。

 

10年くらい前に一度読んでいるのだが、

今回の読了後の感想としての第一は「20歳でこれ書いたの!?」だった。

 

 

ミステリー小説、といっていいだろう。

一人称視点で書かれる物語は、主人公『ぼく』が『戯言遣い』と自称するだけあり、

また、西尾維新の特徴である言葉遊びをふんだんに盛り込んである。

551ページもある長編なのだが、1日で一気に読み切ってしまった。

それだけ話のテンポ感が良く、また先が気になるストーリー展開となっている。

 

10年くらい前に一度読んでいるし、

事件のトリック自体は、あまりに衝撃的なものだったので記憶に残っていた。

でも、肝心の犯人は覚えてなかったし、

後日談ですべての謎が解明されたとき、鳥肌が立った。

 

―――これ、当時二十歳の作者が書いたのか・・・

 

 

 

P32

「関係ないんだよ、才能なんて。俺はむしろそんなもの持ってなくてよかったと思っているね。才能なんて、くだらない」

「どうしてですか?」

「そんなしち面倒なもん持ってたら、努力しなくちゃならないだろ?

凡人ってのは気楽なもんだよ。

≪極めなくていい≫ってのは、絶対に利点だと思うぜ、俺は」

 

主人公同様、島に集められた天才の一人の付添人としてやってきた人物との会話。

世間では『天才』を『努力しなくても優れている』などと評価しがちな中、

著者は『天才は努力し続けなければならない』と対極に考えているのだな・・・と印象深かった。

 

そうだなぁ・・・

私はマルチポテンシャライトで、随分悩んだ時期もあったけれど、

今は何かの専門じゃなくてよかったと思っている。

ひとつの突出した才能は、環境によっては生き残れないことがあるから。

飽きることなく一つのことに取り組めるというのは、それも才能だよなぁ、と思う。

 

 

P35

流れるような人生を流されるままに生きてきた十九歳には、物語の流れを変えるだけの力はないのである。

 

 

 

P112

能力に秀でた人間には二種類ある。

選ばれた人間と、自ら選んだ人間。

価値のある人間と、価値を作り出す人間とだ。

 

例えば絶対音感や、生まれつきの体格。

神様からのギフトと呼ばれる生まれ持っての『特性』を、

また努力で生み出した『特性』を、

そう表現したか・・・。

価値のある人間と、価値を作り出す人間。

 

著者の経歴をWikiでざっくり調べたのだが、どうやら著者は後者のようだ。

西尾維新は努力によって、価値を作り出す人間になった。

著者も間違いなく『天才』だ。

弛まぬ努力の賜物により、自ら選び取った天才。

 

 

P257

問題。

信じるとは、どういうことか?

解答。

裏切られてもいいと思うこと。

裏切られても後悔しないと思うこと。

 

以下、芦田愛菜さんが、映画『星の子』完成報告イベントにて

「信じるとはどういうことか」と問いかけられたときの解答。

1分30秒~聞いてみてほしい。

(5) 芦田愛菜、高校生とは思えない大人な発言にキャスト困惑? 6年ぶり主演映画に笑顔 映画『星の子』完成報告イベント - YouTube

 

子役時代から世間の期待を背負ってきた人物の言葉には重みがある。

『信じる』というのは自身の行動であり、相手に依存するものではない。

『揺るがない自分』。

 

オブラートに包まずストレートに言うと、

つまり、やはり著者の言う「裏切られてもいい」と思うことに集結するのだと思う。

 

私にはいるだろうか。

信じられる相手が。信じたい相手が。

 

 

一人称視点で、『ぼく』が非常に悩ましい性格をしているので、

考えることが多く、個人的には感情移入しやすい作品だ。

 

 

―――高校の時の友人と、私の関係性が、

作中の『玖渚友』と『ぼく』の関係性に似ていて、

読んでいて友人に電話したくなった。

 

P292

「・・・なんで英語がわからないんだよ、いーちゃん・・・。

どこの国で留学してきたの?うん?南極?火星?」

「忘れたんだよ。使わないものを三ヵ月も四ヵ月も覚えてられるか。(省略)」

 

本当に似ているのだよ。こういうところが。

 

唯一、私が特別視しているのがその友人なので、

まぁ、あいつになら裏切られてもいいかと思える。

とりあえず私が今生きているのも、その友人のおかげなので、

さしずめ命の恩人といったところだ。

感謝、感謝。

 

 

西尾維新さんの作品が好きなので、ぼちぼち紹介していけたらなと思う昨今。

 

TOP画は以下からお借りしました!!

色味少し作品に合わせて変更させていただきました。

藤の花 背景イラスト2イラスト - No: 22582310/無料イラストなら「イラストAC」 (ac-illust.com)

藤は「決して離れない」の花言葉を持つ。

 

 

読んでいて『面白い!』ではなく『楽しい!』と思う作品は貴重である。

 

さすがに地上波放送は無理でした。

(5) OVA「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」第1弾トレーラー - YouTube

お買い上げください。

 

 

 

 

 

 

【108+】クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い(西尾維新)※追記 | 秋風の読書ブログ (ameblo.jp)