タイトル:氷菓

著者:米澤穂信

発行:角川文庫

発行日:2001年11月1日

 

 

 

 

 

米澤穂信氏による<古典部シリーズ>と呼ばれている推理小説。

2012年には京都アニメーション制作でアニメ化されている。

 

 

―――この手の作品のアニメ化を、否定するわけではないけれど、小説の良さがちっとも映像化されないこと、できないことに、やや不満を覚えるね・・・

アニメはアニメで、非常に独創的表現を持っているし、手がけているのは京アニだし、ここから氷菓の原作を手に取った人もいるだろう。

声優さんもキャラクターの感情表現も、実によかった。アニメにはアニメの良さがある。

でも、小説版を読んでほしい。

この作品は、ストーリーもよいけど、表現を見てほしい。

文字を、文学を映像化するのは、非常に難しいなぁ・・・

 

 

P89

この旅、面白いわ。

きっと十年後、この毎日のことを惜しまない。

 

 

 

 

何事にも基本"省エネ"を貫く高校1年生の主人公、折木奉太郎は、

姉からの頼みで部員0の古典部に所属することになる。

が、実際には時間差で入部していた"千反田ちたんだえる"が居り―――

そして何故かいろんなことに興味を持つ千反田に振り回されることになる。

密室になった教室。毎週借りられる本の謎。

そして三十三年前に学校で起きた意味深な事件。

高校生4人が"古典部"で織りなす青春推理小説!!

 

といったあらすじです。

(アニメ版では出版当初と放映時期のズレから、"四十五年前の事件"と調整が加えられている)

 

 

 

いやぁ、面白かったし、久々に『文学を読んだ!』と気にさせてくれる作品だった。

主人公の一人称視点で語られ、ノリもテンポもよく、雰囲気はライトノベル。

本格ミステリーとはまた違う、気軽に読める推理小説。

(※私は『ミステリー小説』と『推理小説』を別ジャンルとして区別している)

そして何より、文学的、と感じる言い回しと表現力。

これは間違いなくシリーズ読破するね。

ラストのシーンでは、本当に鳥肌が立った。

氷菓、ね。なんて、なんて意味を込めるのかしら―――

 

 

 

P109

遠垣内とおがいとは、俺の提案に今度こそ本当の怒りを覚えたようだ。

理知的な顔立ちを歪ませて、俺を睨みつけてくる。

対する俺は、別にどうということもなくそれを受け流す。

古今東西、視線で怪我をした人間はいないのだ。

 

 

 

素晴らしいなと思った!!

睨まれたり凄まれたりしただけでは怪我しないからね!

私も恐れずいこう。もうそんなやんちゃをする歳ではないけれど。

 

 

 

P122

全ては主観性を失って、歴史的遠近法の彼方で古典になっていく。

 

古典部の歴史的文集、"氷菓"の第二号の序文。

本作の本質的な部分。

何故か失われている創刊号。意味深な表紙絵と序文。

 

この"全ては主観性を失って、歴史的遠近法の彼方で古典になっていく"の表現が、本当に好きで。

素晴らしいね。

 

 

 

P176-179

場面の切り替わり。

それぞれの心情と、セリフと、風景描写。

どうしてここを、映像で再現してくれなかったのか―――残念である・・・

 

 

P21-P22

「閉まっていたって、折木さんが入ってきた時に、そこのドアがですか?」

清楚な女学生の変化に戸惑いながら、俺は頷く。

千反田は意識してか無意識にか、つ、と一歩前にでる。

「ということは、わたしは閉じ込められていた、ってことですね」

 

野球部のノックの快音がここまで聞こえてくる。

 

 

この!一連の!場面切り替えの描写!!

あえて物事から目を逸らす、という婉曲的な手法!!

見習いたい!すごい好きだね。

2000年代初頭のライトノベルによく見られた表現。

まぁ、私が最近のラノベを読めていないから、あまり比較にならないが。

 

 

キャラクターたちの名前に一癖あって、なかなか読みにくいのはちょっと難点ね。

まぁ、漢字の変換が出てこないってだけなんだけど・・・・

 

作者の知識量がうかがえる表現がちょいちょいあって、実に勉強になった。

『一線を越える』という表現と同じような意味に『ルビコン川を渡る』というのがあるらしいのだが、初めて知った。

ルビコン川ってどこ?って調べたら、"共和政ローマ末期にイタリア本土と属州ガリア・キサルピナの境界になっていた川"(Wikiより)だそうだ。

他にも『狡兎死して走狗烹らる』。読めないし意味も知らなかった。

あとは『無聊を慰める』。

暇な気分を晴らす、みたいな意味などだけど、これもあまり聞かない表現かな、と。

読んでいて知識が増える系の物は非常に良いですね!!

 

 

 

 

TOP画は以下からお借りしました!

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積み本が30を超えたので、年内に2巻目を読むのは難しいだろうけど・・・

年明けには読みたいな・・・