タイトル:銀河鉄道の夜

著者:宮沢賢治

発行:新潮文庫

発行日:昭和36年7月30日

 

私が最も敬愛する作家、宮沢賢治の代表作。

永遠に未完成のままの作品。

完成した姿を拝めなかったのは非常に残念ではあるが・・・

『未完成』であることにすら魅力を感じる作品でもある。ロマンである。

 

宮沢賢治という偉大な作家の魅力については、いろんな専門家が議論しつくしているのでまあいいだろう。

なので私から見た宮沢賢治の魅力を語らせていただこうかと思う。

以下、新潮文庫の『銀河鉄道の夜』に収録されている物語より。

 

まずは音の表現。

『ぶなの葉がチラチラ光る』(虔十公園林)

『間もなく水はサラサラ鳴り(省略)』(やまなし)

『凍み雪しんしん、堅雪かんかん』『キック、キック、トントン』『北風ぴいぴい』『西風どうどう』(雪渡り)

 

 

続いて色彩表現。

『お星さん、西の青じろいお星さん』『お星さん、南の青いお星さん』『北の青いお星さま』『東の白いお星さま』(よだかの星)

 

『雪はチカチカ青く光り』

『(略)林の中の雪には藍色の木の影がいちめん網になって落ちて、日光のあたる所には銀の百合が咲いたように見えました』(雪渡り)

 

『(略)そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとおって、ときどき目のかげんか、ちらちら紫いろのこまかな波を立てたり、虹のようにぎらっと光ったりしながら(略)』

『ルビーよりも赤くすきとおり、リチウムよりも、うつくしく酔ったようになってその火は燃えているのでした』

『下流の方の川はばいっぱい銀河が大きく映って、まるで水のないそのままのそらのように見えました』(銀河鉄道の夜)

 

 

なんて鮮やかで艶やかな表現だろう、と思った。

宮沢賢治の耳には、目には、世界は広々と純粋無垢に映っていたように感じる。

享年37歳。体調の急変からたった2日で帰らぬ人となった。(Wikipediaより)

 

彼の作品の大きな特徴として『自己犠牲の精神』がある。

『銀河鉄道』然り、『グスコーブドリ』然り、『よだかの星』にも共通する。

カムパネルラはザネリのために川に入り、ブドリはイーハトーヴの人たちを生かすため自ら死を選び、よだかは鷹に殺されるなら虫を食べるのをやめて飢えて死のうと考える。

彼の生きた時代では仕方のないことだったかもしれないが・・・

常に生と死が隣り合わせで、生きることを考えるには死ぬことを考えざるを得なかったように思う。

 

大好きな作品だ。それ故あまり語りたくない。

読み手それぞれに、心で感じてほしい。

 

オススメは『銀河鉄道の夜』『グスコーブドリの伝記』。

2つとも収録作品の中では長編になるが、是非読んでいただきたい。

 

私だけかもしれないけれど、『銀河鉄道の夜』とジブリ作品『耳をすませば』の表現はとても似ているように感じる。

しずくの物語の中の、場面の切り替わりとか。

どうだろうか?