こんにちは、TC研究会代表の奥川です。
さて、今回は理学療法士の梅澤先生のコラムです。
人間の歩行動作とも関連の深い「寝返り動作」を取り上げてくださいました。
「寝返り動作」はアメリカ人の理学療法士でありトレーナーでもある、FMS(ファンクショナルムーブメントシステム)の考案者グレイ・クック氏がトレーニングの世界に導入した事から、トレーナーの世界でもアセスメントやコンディショニングの一環でクライアントに実施する先生も増えましたが
リハビリの世界では以前から、人の歩行動作を始めとした運動制御、その土台になるCPG(セントラルパターンジェネレーター)にも関連あると注目されていたと存じております。
今回より数回に分けて(2~3日に一回更新予定)その「寝返り動作」について急性期病院での外傷患者のリハビリから認知症専門病院でのリハビリ、片麻痺専門クリニックでのリハビリと非常に臨床経験豊富な理学療法士梅澤拓未先生にお話をしていただこうと思っております。
施術家、治療家の方はもちろんの事、少し他に差を付けたいというトレーナーの方にもおすすめの内容です。
是非ご覧ください!
以下本文です。
【寝返りの重要性と必要な要素①】
皆さん、こんにちは! TC研究会 理学療法士の梅澤です。
今回もコラムに興味を持って頂き本当にありがとうございます。
今回のコラムの内容は『寝返り』についてお話させて頂こうと思います。
今さら と思う方もいるかもしれませんね!
実は以前のコラムにも寝返りの内容を挙げさせて頂きました。
前回の内容では“寝返りと歩行の関係”と“寝返り動作のパターン”についてなどを書かせて頂きました。
今回は寝返りに必要な要素などについて、数回に分けて述べさせて頂きたいと思います。
一般的に私たち人間の生活の基本は“直立二足歩行”ですが、その直立二足歩行の基礎が“寝返り”ですよね。 何せ一番最初の移動手段ですからね。 生まれてから一般的には私たちが最初に必ず出くわす難しい課題です。
生まれてきて私たちは赤ちゃん時代に、この寝返り課題をクリアするために約半年もかけるわけです。
生まれたばかりの頃は、一日の起きている殆どの時間を目で色々なものを追ったり自分の手を舐めては ながめたり少しずつ自分の身体の感覚と運動をすり合わせていきます。そして手足を沢山動かすことで体幹機能や重心移動の練習も行っているわけです。
これらは寝返り(その後の直立二足歩行)のための準備をしているわけです。
大人になって寝返りがスムーズに行えていて、歩行がしっかり行えないという人は殆どいません。
但し、逆はありますよね 特に高齢者の方は体幹の回旋など殆ど行わずに手で柵を持ったりして強引に寝返っている様子などよく病院の患者様では見かけました。この様な方でも何とか歩行はできる方は多くいらっしゃいます。
更に言うと寝返りができなくても歩行(?)はできてしまうという方も中には時々います。この様な方は特別で手の力が強く手で引っ張る力で直線的に起きて強引に座り手の力を最大限に使用し起立し歩行器など使用して歩くわけです。
もちろんこれらを直立二足歩行とは言わないのでしょうが。
今は高齢者の方のお話をしましたが、このコラムを読んで頂いている方はトレーナーの方や施術家の方が多いと思いますが、実は皆さんのクライアントでもこの寝返りがしっかりと行えるようになることで、問題が解決することも多くあると思います。
例えば、肩や腰が痛いやもっと引き締まった体になりたいなどの望みなどです。
これらの根本の原因が、寝返りに必要な分節的な脊柱の回旋や体幹筋の使用が行えていないことが多いため、これらを解決することでクライアントの望みがかなう可能性があるというわけです。
本日の内容としては、寝返りを可能とするための重要な要素である、姿勢制御について簡単にお話させて頂きたいと思います。
先に述べますと この姿勢制御は 寝返りだけに必ず必要というわけではなく、私たちが地球上で重力に抗して生活するために必要な機能となります。
身体に障害のない方などはこの内容は最初はよくわからないかもしれませんが、実は通常は姿勢制御のために感覚、知覚、認知、運動システムが、体の筋骨格系との相互作用を通して働いています。
例えば、 新宿を歩いている時には、 道の幅・傾斜・明るさ・騒音・前から来る人・地面の素材などと自分の体の状態を統合する必要があり、これらに自分身体の質量中心(身体重心)を合わせた姿勢制御が重要となります。これらを殆ど無意識化に行っているわけです。
余談になりますが、皆さんは都会住まいの方が多いのであまりわからないかもしれませんが、私は埼玉の田舎に住んでおり時々しか新宿には行かないので、新宿に行くだけで実は結構疲れる感じがします。
特に人にぶつからにように歩いたり、周囲の人や物が速く動いているのでそれに気をはらったりしているためではないかと自分では考えています。
寝返りに話を戻しますと、上記のような時に身体の状態を安定させるために私たちが無意識的に作用させているものとして、フィードフォワード制御というものがあります。
これは今までの経験などによるものを元に、あらかじめ目的とする運動に必要な運動指令を脳内で計算しておき運動を遂行する制御です(予測的)。
都内住まいの人が新宿でスムーズに歩けるのはこのフィードフォワード制御の機能のおかげかもしれません。
一方私はというと、フィードバック制御というものに頼っていることが多いと思います。 これは予測的ではなく、その都度反応して対応する制御方法で、フィードフォワード制御に比べ各段に反応は遅れてしまいます。 その為私は時々人にぶつかりそうになったりするのではないかと思います。
私が中国や急性期病院で担当してきた脳卒中の患者様はこの様な機能 両方に大きな問題を抱えていたわけですが、皆さんのクライアントはそうではない方が多いと思います。
但し、身体の構造の変化などに問題が出てきて、これらと似たような問題が出ているクライアントは実は多いのではないかと考えます。
確認として一番わかりやすいのは “姿勢” をしっかりと評価することだと思います。
ここに問題があるということは、骨の位置 関節の位置 筋の長さや角度 に大きな影響を及ぼしているわけですから 姿勢制御及びフィードフォワード制御・フィードバック制御は正しく機能しないことがわかります。
寝返りで言えば 背臥位 側臥位 腹臥位 の姿勢を確認することが必須となります。
ここを改善することで寝返りやその後に続く起き上がり、起立、歩行も効率良く楽に行えるようになる可能性も大きいと思います。
今回の内容は、かなり抽象的な内容になっていますがトレーナーの方や中枢系の患者様をみない方にも実は必要な要素となっていると思いますので、興味を持った方は専門的な本などを読んで頂くと良いと考えます。
次回は寝返りと体幹機能との関係などについてお話させて頂ければと思います。
本日もコラムを読んで頂き本当にありがとうございました。
コラム執筆者紹介
梅澤拓未(うめざわたくみ)先生
理学療法士として、急性期病院・認知症専門病院・片麻痺リハビリ専門クリニックなどで13年勤務。
資格
理学療法士
呼吸療法認定士
認知症ケア専門士
介護支援専門員(ケアマネージャー)
福祉住環境コーディネーター2級
日本コアコンディショニング協会マスタートレーナー










