こんにちは!奥川です。

 

今回は私の過去の恥ずかしい経験談から始めます。

 

私は昔からファッションに全く自信がありません。

20代の頃、年頃でもあったのでブランド物の服を買ったり、お洒落にも少し目覚めました。しかし、とにかくセンスがなく、コーディネートも全くダメダメ…

 

お金を掛けた割には「なんかダサい」という結果になることばかりでした(笑)。

 

結局、お洒落で有名だった友人に服を買うたびについてきてもらい、「これを買えば大丈夫」と言われた服をそのまま買うようになりました。

 

その友人は学生の頃から本当にお洒落で有名な人気者でした。

「ユナイテッドアローズ」や「コム・デ・ギャルソン」のようなブランドも好きでしたが、古着屋巡りも大好きで、とにかくファッションそのものが好きな人でした。

 

私のように「モテたい」「格好良く見られたい」という理由で流行を追いかけていたのとは、根本的に違っていたんですよね。

 

社会人になってからは仕事柄スーツを着ることが多くなり、以前ほど悩まなくなりました。

とはいえ、毎回その友人に服選びをお願いするわけにもいきません。

 

そこで私が考えた作戦は、とても単純でした。

「GAP以外では服を買わない。」

同じブランドで揃えれば全体に統一感が出るので、大きく失敗することはありません。

 

当時フィットネスクラブでジム責任者をしていたのですが、ある日後輩から、

「奥川さんって服のタグを見ると、いつもGAPですね(笑)。スタッフみんな陰で"GAP"って呼んでますよ。」

と笑われたこともありました。

 

まぁ、それは今でもあまり変わっていません(笑)。

漏れなく、それは笑い話で済みます。

 

なぜなら私はファッションを楽しむ"ユーザー"だからです。

 

しかし、もしこれがファッションを提供する立場だったらどうでしょう。

ショップ店員がファッションをほとんど知らなかったら。

ブランドのデザイナーが流行だけを追いかけ、素材や縫製、スタイリングの知識を持っていなかったら。

 

きっと私たちは、その人から服を買いたいとは思わないでしょう。

 

実は以前、専門学校時代に知り合った元ファッションデザイナーの女性と親しくしていた時期がありました。

三愛やユナイテッドアローズなどでデザイナーとして仕事をされていた方で、施術の練習にもよく付き合っていただきました。

 

彼女はよく、
「私はファストファッションは好きじゃない。」
と言っていました。

 

もちろん価格の問題ではありません。

素材やシルエット、縫製など、一着の服が出来上がるまでの背景を知っているからこその言葉だったのでしょう。

 

そして私には、
「奥川くんは、お洒落じゃなさ過ぎるから銀座は立ち入り禁止ね(笑)」
とよくからかわれていました。

 

当時は笑って聞いていましたが、今思えばとても印象に残る言葉です。

 

流行を知っていることと、本質を理解していることは全く違う。

そして、その違いは提供する側になればなるほど重要になります。

 

では、私たちトレーナーや運動指導者はどうでしょうか。

流行しているメソッドだけを知っていれば、本当に良い指導者と言えるでしょうか。

 

ユーザーとして一つのメソッドを実践することは何も悪いことではありません。

しかし、指導者として考えた時には、その背景にある生理学や栄養学、そして「なぜその方法が機能するのか」を理解していることが求められるのではないでしょうか。

 

今回ご紹介するコラムは、東京大学大学院で栄養学・生理学の研究活動を行い、その後も現場で数多くのクライアントを指導してきた藤田先生によるものです。

 

研究だけでもなく、現場だけでもない。

自らもトライアスロン競技に取り組み、持久系アスリートからダイエット目的の一般クライアントまで幅広くサポートしてきた、まさに「研究」と「現場」の両方を知る実践者です。

 

だからこそ、流行の食事法やテンプレートを紹介するのではなく、「なぜ人によって結果が変わるのか」「なぜ一律の指導ではうまくいかないのか」という本質を、生理学の視点から分かりやすく解説してくださっています。

 

今回のテーマはボディメイクに携わる方に特に関係する内容ですが、その根底にある「メソッドではなく本質を学ぶ」という考え方は、すべての運動指導者に共通するものだと思います。

 

ぜひ最後までご覧ください。

 

コラム:ピラティスブームの裏に隠れた「痩せない罠」

トータルコンディショニング研究会は、

「教える・教わる」ではなく、育て合う学びをもう一度。
「売られる学び」ではなく、交わす学びを。

をキーコンセプトに活動していきます。引き続き、ご支援ご協力の程をよろしくお願いいたします。

 

メインイメージ

 

現在、日本のフィットネス業界において、ピラティスはかつてないほどの巨大なブームを迎えています。

著名なモデルや韓国のトップアイドルたちが洗練されたスタジオでリフォーマー(専用マシン)を使い、しなやかに身体を動かす姿がSNSで拡散され、お洒落で洗練されたボディメイクの代名詞となりました。

 

従来の「ウエイトを担いで激しく追い込む筋トレ」に対するアンチテーゼとして、あるいは「バキバキにならずに、縦ラインの入ったお腹やスラリとした四肢を手に入れたい」という女性たちのニーズを捉え、スタジオの数は急増の一途を辿っています。

 

しかし、この華やかなブームの裏で、「週に何度もピラティスに通い、食事も気をつけているのに、体重が全く落ちない」「全然痩せない」という悩みを抱えるクライアントが急増しています。

プロであるはずのインストラクターやトレーナーが、ピラティスの持つ本来の効果とクライアントの「痩せる(脂肪を落としたい)」という目的のミスマッチに気づかず、盲目的にレッスンを提供してしまっているケースが少なくありません。

本コラムでは、ピラティスブームの背景にある「痩せない罠」について、解剖生理学的な視点からその根拠を紐解き、指導者が持つべき真の視点について解説します。

 

1. インストラクターが陥る「インナーマッスル神話」の盲点

現場のインストラクターが陥りがちな最大の盲点は、「インナーマッスル(深層筋)を鍛えて骨盤や背骨を整えれば、基礎代謝が上がって自然と痩せる」という理論の過信です。

 

ピラティスは、リハビリテーションを起源とし、腹横筋や多裂筋、骨盤底筋群といった体幹部のインナーマッスルを正確にコントロールすることで、姿勢を改善し、身体の機能を高める優れたメソッドです。

 

しかし、生理学的な事実として、これらのインナーマッスルは「姿勢を維持するため」の筋肉であり、持久力には優れているものの、筋肉の体積(ボリューム)自体は非常に小さいという特徴があります。

 

基礎代謝を大きく引き上げるためには、大臀筋(お尻)や大腿四頭筋(太もも)といった体積の大きい「アウターマッスル(表層筋)」に強い負荷をかけ、肥大させる必要があります。

インナーマッスルをどれだけ緻密に鍛えたとしても、体積の変化が小さいため、基礎代謝の向上によるカロリー消費量の増加はごくわずかです。

インストラクターが「骨盤を整えれば代謝が上がる」という言葉を魔法のように使い、それだけで体脂肪が燃えるかのように錯覚させてしまうことが、クライアントの「痩せない」という不満を生む根本的な原因になっています。

2. ピラティスで痩せない理由を紐解く解剖生理学的根拠

では、理路整然とピラティスを行い、食事のコントロールまでできているクライアントが痩せないのはなぜでしょうか。そこには3つの生理学的な理由が存在します。

 

① 運動量と消費カロリーの絶対的な不足

脂肪を1キログラム減らすためには、約7,200kcalのアンダーカロリー(消費が摂取を上回る状態)を作る必要があります。

 

しかし、ピラティスの1時間あたりの消費カロリーは、体重やレッスンの強度にもよりますが、おおよそ150〜250kcal程度に過ぎません。これは軽いウォーキングと同等、あるいはそれ以下です。

 

ピラティスは「身体の動かし方を学ぶ(脳と筋肉の神経回路を繋ぐ)運動」であり、心拍数を激しく上げて脂肪をエネルギーとして大量に消費するような「エネルギー消費型の運動」ではないのです。

クライアントが「スタジオでこれだけ頑張って動いたのだから、脂肪が燃えているはず」と思い込んでいる裏で、実際のエネルギー消費量は驚くほど少ないという現実があります。

② 「筋肉の慣れ(適応)」による省エネ化

マットピラティスを長期間続けていたり、いつも同じような強度のリフォーマークラスを受け続けていたりすると、人間の身体は驚くべき精度でその動きに「適応(省エネ化)」します。

 

最初のうちは、不慣れな姿勢を維持するために多くの無駄なエネルギーを使い、筋肉痛にもなっていた動きが、上達するにつれて「最も少ないエネルギー(最小限の筋出力)で、効率よく動かせる」ようになっていきます。

レッスン中に「汗をあまりかかなくなった」「以前ほどの疲労感がない」という状態は、クライアントが上達した証拠であると同時に、運動としての消費カロリーがさらに低下しているサインでもあります。

指導者がプログレッシブ・オーバーロード(漸進性過負荷の原則)を意識せず、同じ強度のエクササイズを繰り返させていると、身体は完全に停滞モードに入ります。

③ 「体重減少」と「サイズダウン(引き締め)」の混同

生理学的に、筋肉は脂肪よりも密度が高く、同じ体積であれば約1.2倍の重さがあります。

 

ピラティスによって体幹部の筋肉が引き締まり、骨盤の歪みが整ってポッコリお腹が凹んだとしても、それは「見た目の変化(アライメントの改善)」であって、「体脂肪の減少」とは別現象です。

 

クライアントが「体重」という数値を基準にダイエットを捉えている場合、インナーマッスルが発達して姿勢が伸び、ボディラインがどれだけ綺麗になっても、体重計の針が動かなければ「痩せない」と判断してしまいます。

指導者側が「見た目の引き締まり」と「脂肪燃焼(体重減少)」のメカニズムの違いを明確に説明できていないことが、このミスマッチを助長しています。

3. なぜピラティスは「やってる感」が強いのか?

消費カロリーが少ないにもかかわらず、クライアントが「ものすごく運動した気(やってる感)」になるのは、ピラティスが強烈な「脳の疲労」を伴うからです。

 

ピラティスでは、細かな骨の動き(エロンゲーションなど)や、独特な呼吸法、左右のバランスなどを常に意識し、集中し続けることが求められます。

これは固有受容感覚(身体のセンサー)をフル活用する作業であり、肉体的な疲労よりも「脳や神経系の疲労」が強く出ます。

終わった後に感じる心地よい疲労感を、クライアントは「激しい運動をしてカロリーを消費した」と脳内で誤って変換してしまいがちです。

これが、食事制限への甘えや、日常の活動量(NEAT)の低下に繋がります。

4. ピラティスで痩せないクライアントを救う指導者の視点

ピラティスを頑張っているのに痩せないというクライアントに対して、指導者が取るべき正しいアプローチは、単に「もっとレッスンに来てください」と回数を増やすことではありません。

 

① スタジオの外の「23時間の過ごし方(NEAT)」への介入

ピラティスで得た「正しい骨格の配置(ニュートラルポジション)」を、週に1〜2回のレッスンの中だけで終わらせず、スタジオを出た後の日常生活(歩く、立つ、座る)の動きにどう落とし込ませるかが重要です。

 

正しい姿勢を日常生活で維持できるようになれば、普段の歩行や階段の昇り降りといった何気ない動作における筋肉の動員率が上がり、日常生活全体の消費カロリー(NEAT)を底上げすることが可能になります。

スタジオでの1時間だけでなく、日常の活動量を増やすように行動変容を促すことこそが、真の食事管理をサポートする結果に繋がります。

② 評価基準のシフト(体重からアライメントへ)

クライアントに対して、体重計の数値に一喜一憂するのをやめさせるカウンセリングが必要です。

「ピラティスは体重を落とす運動ではなく、身体のパーツを正しい位置に戻し、服を綺麗に着こなすための骨格メイクである」というコンセプトを共有します。

ウエストやヒップのサイズ測定、あるいはタイトなウェアを着用した写真でのビフォーアフターの比較を行い、「体重は変わっていなくても、体型は確実に変わっている」という事実を視覚的に理解させることが、クライアントのモチベーションを維持し、不満を解消する鍵となります。

5. まとめ:ブームを超えた真の価値を提供する

現在のピラティスブームは、多くの人が自分の身体の「骨格や姿勢」に目を向ける素晴らしいきっかけとなっています。

 

しかし、「流行っているから」「お洒落だから」という理由だけで、脂肪燃焼を目的とするクライアントにピラティスだけを処方し続けるのは、指導者としての誠実さを欠いています。

 

ピラティスは、身体の土台(アライメント)を整える最高のツールです。

もしクライアントの目的が「大幅な体脂肪の減少」であるならば、ピラティスで動ける身体を作った上で、日常の活動量を増やすようにアプローチしたり、マイルドな食事の引き算を行ったり、時にはアウターマッスルを動かす有酸素運動や筋トレを組み合わせるような包括的な提案が必要です。

 

流行の波に流されず、解剖生理学的な事実をベースに、ピラティスの「できること」と「できないこと」を明確に見極めること。

そして、クライアントの本当の目的に寄り添ったロードマップを描くことこそが、このブームの中で一過性で終わらない、本物の指導者に求められる資質なのです。

 

<コラム執筆者紹介>
藤田英継先生

藤田英継(ふじたひでつぐ)先生

・合同会社PROTEIOS代表

・パーソナルトレーニングジムevergreen 代表

・東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境系 身体運動科学 修士課程修了

・2008年よりパーソナルトレーナーとして活動開始

・大学院では脂肪・糖質代謝を研究し、遺伝子・ホルモン・細胞レベルから身体づくりを学ぶ

・都心スポーツクラブで3年連続売上トップを獲得

・延べ1万人以上のセッション実績

・書籍執筆、雑誌監修、通信教育講座のプロデュースなども担当

・現在は健康リテラシー向上やトレーナー育成事業にも取り組む

 

編集後記

藤田先生のコラムは、今回も非常に示唆に富む内容でした。

私たちは、流行しているメソッドをそのまま提供する「ユーザー」で終わるのではなく、目の前のクライアントに合わせて最適な方法を組み立てられる「創造者」でありたいと私は思っています。

 

そのためには、一つのメソッドを信じ続けるのではなく、その背景にある原理・原則を理解し、「なぜ?」を問い続ける姿勢が欠かせません。

 

知識を集めることは大切です。

しかし、それだけならAIはこれからますます得意になっていくでしょう。

 

知識を検索し、整理し、要約することだけなら、AIは人間をはるかに上回る時代になりました。

だからこそ、私たち専門家に求められるのは、知識の量ではありません。

 

目の前のクライアントの身体や生活、価値観を理解し、その人にとって最適な答えを創り出せる力です。

 

AIには「答え」を探すことはできても、「その人に合った答え」を一緒に創ることはまだできません。

そこに私たちの存在価値があるのだと思います。

 

そして、もう一つ。

今は情報があまりにも多い時代です。

SNSを開けば、毎日のように新しいメソッドが現れ、「これが正しい」「いや、こちらが正しい」と様々な情報が飛び交っています。

まさに情報の濁流です。

 

一般のクライアントが、その中で何を信じれば良いのか分からなくなるのも無理はありません。

 

だからこそ私たち専門家は、自分自身がその濁流に流されるのではなく、本当に価値のある情報を見極め、クライアントが安心して進める方向を示せる存在でありたいものです。

私が好きな言葉があります。

 

「勉強とは勉め強いること。学問とは学びて後に問うがあるもの。」

 

ただ知識を集めるだけではなく、「なぜなのか?」を問い続ける。

私は、その姿勢こそが本当の専門家を育てるのだと思っています。

 

And, そのような専門家が増えることが、結果としてクライアントを幸せにし、業界全体の価値を高めることにもつながると信じています。

 

もしあなたが、
「流行を教える指導者」ではなく、
「一人ひとりに合わせた価値を創造できる指導者」
を目指したいのであれば、7月12日に開催する藤田先生のWebセミナーは、きっと多くの学びと気づきを与えてくれるはずです。

 

これは単なるセミナーではありません。

同じ志を持つ仲間と出会い、互いに学び、育て合うための第一歩でもあります。

 

ぜひ7月12日、一緒に学びましょう。
皆さまとお会いできることを楽しみにしております。

 

【セミナー開催のご案内】

7月開催の藤田英継先生の栄養学、生理学 Webセミナー

 

<藤田英継先生のセミナーお知らせ>

 

【7月5日(金) 録画配信】
三大栄養素の基本のき

https://www.okugawaseitai.com/r8-628-fujita

糖質・脂質・タンパク質。すべての栄養指導の土台となる知識を、生理学的視点から体系的に学びます。


【7月12日(金) ライブセミナー】
痩せない原因はクライアントではない ~トレーナーが見落とす代謝と栄養の盲点~

https://www.okugawaseitai.com/r8-712-fujita

クライアントは頑張っている。それなのに結果が出ない。その時、原因はクライアントでしょうか?それとも私たち指導者側の理解不足でしょうか?

 

身体は単純な足し算では動きません。代謝、ホルモン、自律神経、NEAT、栄養。これらが複雑に絡み合っています。

 

もしあなたが、
・メソッド巡りに少し疲れている
・SNSの流行に振り回されたくない
・もっと自信を持って指導したい
・顧客に合わせて本当の意味でパーソナルな提案をしたい
そう思うなら、今回の2つのセミナーは単なる知識習得ではなく、「メソッドを学ぶ側」から「メソッドを評価し使いこなす側」へ進むための第一歩になるはずです。

 

皆様のご参加をお待ちしております。