■ 大腿骨体と頚部の形状を徒手検査法で推測する意義

 

近年、股関節の前捻角を徒手的に検査し、その結果から股関節頚部の形状を推測して、股関節可動域の傾向や適したエクササイズフォームを導き出す指導法が広がってきています。

 

 

 

これは私自身、非常に良い流れだと感じています。実は私は10年以上前から、この重要性を強く意識してきました。

 

『直るO脚、直らないO脚』⇒ https://ameblo.jp/okugawa-seitai/entry-11465988322.html

 

 

 

きっかけは、股関節痛に悩むあるプロゴルファーの施術でした。

彼は整形外科や治療院をいくつも回り、さらにパーソナルトレーニングも様々な指導者から受けましたが、改善は見られなかったのです。

 

 

  ■ 「膝が外に開く」を直そうとして悪化

 

初診の問診で話を伺うと、痛みが出始めた背景が見えてきました。

アマチュアゴルファーへのレッスン中に「膝が外に開く」と指摘され、笑われたことがきっかけで、それを直そうと股を内に閉じる・内に捻じる動作を繰り返し、さらに股関節内旋を広げるストレッチをやり込んでいたそうです。

 

 

 

その結果、股関節の痛みが強まり、やがて腰痛にも発展し、治療院や病院を巡ることになったとのことでした。

 

 

  ■ クレイグテストで「後捻股」と判明

 

私は「股関節前捻角の問題ではないか」と考え、クレイグテストという徒手検査を実施しました。

すると結果は「後捻股」。つまり、そもそも股を内に捻じる動作が骨格的に負担になるタイプだったのです。

 

その場では、専門書の図を用いて「骨格的に内旋方向は無理をすると負担が大きい」ということを説明しました。(もちろん、レントゲンのように確定診断ではない点は伝えています)

施術は、緊張している筋肉の緩和や関節モビライゼーションを全身に行う程度にとどめました。

 

そして1週間後の再来院時──彼は笑顔で「痛みがほとんど消えた」と報告してくれました。

この経験を境に、私は股関節の症状だけでなく、慢性的な腰痛などを持つ方にも股関節前捻角の評価を必ず行うようになったのです。

 

 

  ■ 徒手検査を行う意味

 

「徒手的評価はレントゲンより信頼性が劣るのに、なぜやるのか?」

 

 

こう思う方もいるかもしれません。

 

私もその懸念は理解しています。

 

 

それでも徒手検査を行うのは、現場で大きな意義があるからです。

 

例えばクレイグテストでは、大転子の突出肢位から股関節中間位を推測し、脛骨と床面の角度から前捻角を見極めます。

 

前捻角が大きければ「前捻股」

 

小さければ「後捻股」

 

後捻股では外旋可動域が広く見えます。これは、大腿骨の頚部が通常より内側にねじれていないため、中間位でも見た目上は外旋に見えるからです。逆に、内旋可動域は狭く見えます。

 

 

 

まさに、冒頭のゴルファーと同じ状態です。

 

 

  ■ 無視すれば危険

 

こうした骨格の特徴を無視して内旋運動を強要すると、股関節に大きな負担を与える危険があります。

 

 

クライアントが違和感を伝えてくれれば良いですが、我慢してしまうタイプであれば、指導者が気づかないまま股関節への負担が積み重なっていくかもしれません。

 

 

 

また『運動機能障害症候群のマネジメント』には、こうした形態の違いが筋や筋膜系に過大なストレスをかけ、痛みにつながるケースが具体的に示されています。

 

 

実際、後捻股の女性に内旋を強制した結果、外旋筋群が過伸長され股関節痛になった例が紹介されています。もちろんその逆(前捻股に外旋を強制するケース)も然りです。

 

 

 

さらに、膝・頚部・足部などが股関節の代償として変形や障害を起こすケースもあります。

 

 

 

クラシックバレーダンサーのプリエが取れない原因が「前捻股」だっ事に気付かず、股関節外旋を強要して代償的に「下腿外旋症候群」となってしまったケース。

 

 

後捻股の女性の「とんび座り」による脛骨外旋の悪化など、関連は多岐にわたります。

 

 

 

これらを表面的な症状(下腿外旋症候群、脛骨外捻悪化)だけを見ていては問題解決を遠ざけるアプローチをしてしまう可能性が大きいと思いませんか?

 

 

 

例えば、下腿外旋症候群などは「膝伸展時に下腿を内旋させるエクササイズ処方」という改善プロトコルもありますが…そもそも論で原因が股関節ならどうなるでしょうか?

 

 

 

事前に評価する事はそのようなリスクを軽減させます。

 

 

  ■ 頚体角(外反股・内反股)の重要性

 

これは「股関節前捻角」だけの話ではありません。

股関節頚体角(大腿骨体部と頚部の角度)も重要です。

 

平均は約125度。

 

大きいと「外反股」→外転が得意で、O脚傾向

 

小さいと「内反股」→内転が得意で、X脚傾向

 

こちらも前捻角と同様に、骨格に合わないアプローチは大きなリスクとなります。

また頚体角を推測しておくことで、代償的な変形や障害を予測することにもつながります。

 

 

  ■ 勉強会で学べること

 

文献を調べれば、こうした検査法を学ぶことは可能です。

しかし実際に「人を相手に練習できる機会」は非常に限られています。

 

今回の8月31日の勉強会では──

 

前捻角・頚体角の徒手検査法の実際

 

検査から得られるメリットと、実施しない場合のリスク

 

機能解剖学的な理論背景

 

ペアでの繰り返し練習

 

をじっくり行います。

 

「知ってはいるけど自信を持って実施できない」

そんな状態を、この勉強会で確実に解消していただけると思います。

 

 

  ■ 最後に

 

股関節の形は人それぞれ違います。

だからこそ、その違いを正しく見抜き、最適な指導・施術に活かすことが大切です。

 

 

 

下で紹介する8月31日の勉強会で、その力を身につけてみませんか?

皆さまのご参加を心よりお待ちしています。

 

8月31日新宿 ”見抜く目”を養う!前捻角・脛骨捻転・足部配列の徹底理解 勉強会