皆さん、こんにちは! TC研究会 理学療法士の梅澤です。 今回の内容は パーキンソン病について少しお話させて頂こうと思います。2部構成で、1回目は症状についての内容を中心とし、2回目は治療についての内容としていこうと思います。

 

 私が以前勤めていた病院ではパーキンソン病の患者さんに対して手術療法などを行っていたため 非常に多くのパーキンソン病患者さんのリハビリをしてきました。 それ以外にも訪問リハビリや実習中もパーキンソン病の患者さんと関わることが結構多くありました。

 

少し話しはそれますが、以前理学療法士(以下PT)についての内容をコラムで書いており、ここでも簡単にお話させて頂くと、PTは学生時代に医師や看護師と同様 実習というものがあり、実際に病院や施設などに行って リハビリの見学や実施をさせて頂くことが必ずあります。 その期間などは国の定めによって各学校などがカリキュラムを組むのですが、 最終学年時には一つの病院や施設に連続で約8週間を2~3回 実習に通います。私は3回だったので、最終学年時は約半年間実習をして 最後に国家試験を受けました。  

 

その時にパーキンソン病の患者さんのリハビリを何度か担当させて頂きました。

15年くらい前の一般的な実習で担当させて頂く患者さんは だいたい決まっており 

・脳卒中 ・大腿骨の骨折 ・人工股・膝関節置換術 ・脊椎圧迫骨折 ・パーキンソン病 などは実習生がかなり高い確立で関わらせて頂いていました。 

現在は呼吸器や循環器やがんやスポーツ障害や認知症など様々な疾患の患者さんと関わることが多いと思います。 現在はそれだけ高齢化や医療の進歩などにより病院や施設がかなり多様化していることが原因として考えられます。

 

パーキンソン病の話しに戻しますと、15年前でも多かった この病気は現在 高齢化により更に患者数は増加の一途をたどっています。

 

2014年のメタ解析の結果から、全世界におけるパーキンソン病患者数は2015年の690万人から2040年では2倍以上の1420万人に増加すると推定されています(下図参照)。

 

日本のパーキンソン病の患者数は2020年で16万人程度と言われ、2000年前後では12万人と推定されており増加していることがわかります。

上の図から考えても日本でも2040年にはパーキンソン病の方が相当増加する可能性があります。

 

現在私は整形外科クリニックなどでもお世話になっていますが、パーキンソン病を合併している患者さんは数名いらっしゃいます。その方々はこの病気のせいで転倒し骨折したり、体に痛みが出現しているケースがあります。

 

パーキンソン病は若年性のものもありますが、割合としては高齢になるにつれて特に高くなります。 このコラムを読んで下さっている方でも高齢者の方々と関わることが多い方は是非 読んで頂き 今後現場で少しでも役立てて頂ければ幸いです。

下図は かなり前の年齢別のデータではありますが、75歳~80歳前後の年齢の方に多く発症していることが確認できます。

 

 

 

 

 

ここから本題に入っていきます、パーキンソン病を歴史的に見ると、1500年代にレオナルド・ダ・ヴィンチがおそらく最初に振戦を伴うパーキンソン症状の記載をしているようです。 1700年代には、イギリスの外科医ジョン・ハンターが振戦を伴っていても疲労を訴えないケースを報告しています。 そして1817年、ジェームズ・パーキンソンがしんせん麻痺の臨床症状を報告、のちにパーキンソン病と命名されました。パーキンソン病という病気が発見されてから現在は約200年になります。

 

 

パーキンソン病の原因と考えられていること

パーキンソン病は神経変性疾患に分類されます。

パーキンソン病ではα-シヌクレインというタンパク質の異常蓄積により、中脳黒質の神経細胞が少しずつ減少し、その機能が失われてくると考えられています。

それにより黒質とつながっている線条体のドパミンが欠乏し症状が現れます。

発症原因については、遺伝的要因に神経毒などの環境因子が加わっておこると考えられていますがはっきりと分かっていません。

 

 

パーキンソン病の症状

パーキンソン病には主に4つの特徴的な運動障害があり 四大徴候と呼ばれ「振戦(しんせん)」「固縮(こしゅく)」「無動(むどう)」「姿勢反射障害」があげられます。

これらにより、日常生活においては歩行が障害されたり(前傾姿勢、歩幅が狭い、すり足、すくみ足、突進歩行)、手の動作が不自由になったり(書字やボタンかけが困難、食事困難)、表情が乏しくなったり(仮面様顔貌)、声が小さくなったり、動作がゆっくりになってきます。

 

振戦

特徴として、何もしていない時にふるえる「安静時振戦」が見られます。手だけでなく、足や顎もふるえることがあります。

固縮

筋肉の緊張が強くなり、手足の動きがぎこちなくなります。

関節が固くなり、他人が動かそうとしても抵抗があります。

無動

動作の開始に時間がかかり、動作そのものも遅くなります。

目のまばたきが減り、顔の表情が硬くなります。

姿勢反射障害

バランスを保持できなくなり、転びやすくなります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運動障害以外に非運動症状も出現します。

便秘、頻尿や排尿困難、起立性低血圧、睡眠障害、記憶障害、うつ、幻覚・妄想などがあります。パーキンソン病の症状は身体全体に及びます。

 

 

パーキンソン病の診断

パーキンソン病は血液検査、脳のCTやМRIでは異常は現れません

心臓の交感神経の状態を調べるMIBG心筋シンチで異常がみられることがありますが、アイソトープを使うため検査可能な医療機関は限られます。

診断は、症状から判断し、他の疾患ではないか、何かの薬の副作用ではないか、つまりパーキンソン症候群(症状は似ているが原因が異なるもので、原因として脳卒中や薬剤やレヴィ小体型認知症による影響などがある)でないかを除外していきます。

そのうえでパーキンソン病の薬を試してみて有効であればパーキンソン病と臨床診断します。

 

 

病気の重症度分類

大変簡便なものとしてはヤールの分類という症状の度合いを5段階に分けたものがあります。

 

Ⅰ度

体の片側だけに手足のふるえや筋肉のこわばりがみられる。

体の障害はないか、あっても軽い。

Ⅱ度

両方の手足のふるえ、両側の筋肉のこわばりなどがみられる。

日常の生活や仕事がやや不便になる。

Ⅲ度

小刻みに歩く、すくみ足がみられる。方向転換のとき転びやすくなるなど、日常生活に支障が出るが、介助なしに過ごせる。

職種によっては仕事を続けられる。

Ⅳ度

立ち上がる、歩くなどが難しくなる。生活のさまざまな場面で、介助が必要になってくる。

Ⅴ度

車いすが必要になる。ベッドで寝ていることが多くなる。

 

私が病院時代に使用していたものは、UPDRSというものです。

パーキンソン病統一スケール(Unified Parkinson's Disease Rating Scale:UPDRS)と言って 1987 年に、パーキンソン病患者の病態を把握するための評価尺度として発表され、認知・情動状態、ADL 能力、運動機能、薬剤の副作用の項目について評価します。国際的評価スケールとして信頼性が高く、特に治療効果判定に用いられています。  私はこのUPDRSを手術前後やリハビリ前後で測定させて頂き 効果判定として用いていました。 とても項目が多いため今回は省かせて頂きます。もし興味がある方は調べて見てください。

 

 

今回はパーキンソン病の簡単な症状を紹介させて頂きました。次回は治療についてお話させて頂ければと思います。

本日もコラムを読んで頂き、本当にありがとうございました。

 

コラム執筆者

梅澤拓未先生

理学療法士として、急性期病院・認知症専門病院で13年勤務。

資格

理学療法士
呼吸療法認定士
認知症ケア専門士
介護支援専門員(ケアマネージャー)
福祉住環境コーディネーター2級
日本コアコンディショニング協会マスタートレーナー