理学療法士でありながらロルフィング、フランクリンメソッドなどのボディーワークも身につけられている宮井健太郎先生
その幅広い知見には私もいつも驚かされます。
宮井先生にはジャンルに囚われず、身体に携わる先生方全てに役だつコラム内容をお願いしているのですが
今回は『系統発生』について書いていただきました。
簡単に言いますと私たちのご先祖様の話です!
『系統発生』は実は私たちヒトの身体に携わる職業にとっても非常に重要な分野です。
『個体発生は系統発生を繰り返す』とは発生学者のヘッケルの有名な言葉
私たちヒトの個体発生からは所々生物の長い長い進化の足跡が見え隠れしています。
生物の系統発生を知ることは、ヒトの個体発生を知ることにつながります。
私が以前に講師を担当していた「コアコンディショニング」にも「系統発生」「個体発生」の要素がかなり盛り込まれています。
そこには生き物の「原理原則」が隠されていますので、当然と言えば当然ですが…
なので、今回のコラムも徒手療法家、トレーナー、ボディーワーカー、全ての身体に携わる職種の方にお勧めできる内容です。
なんと!トータルA4用紙30枚の原稿料とな大作ですので(宮井先生に本当に感謝です)数回に分けてお届けいたします!

 

ご先祖さまの物語 〜系統発生に親しむ〜①

 

どんな人にもお父さんとお母さんがいます(生物学上の)。
きっと似ているはずです。
お父さんとお母さんにも、それぞれお父さんとお母さんがいます。
おじいちゃんとおばあちゃんです。
また、きっと類似点があることでしょう。
ひいおばあちゃんもひいおじいちゃんもいます。どこまでも続きます。
ヒトになる前はサルであったといいます。
ではその前はどんな生き物だったのでしょうか?どこまで続くのでしょうか?今のところ40億年くらい前までといわれています。

 

今回ご紹介するのは我々の「ご先祖さま」がこの地球上に誕生してからヒトになるまでのお話です。
ただし、この話は私が作り上げた「事実をもとにしたフィクション」である事をお知らせしておきます。
もっともご先祖さまの物語をノンフィクションで書ける人は誰もいません。何故なら、大昔のことは誰も見たこともなければ確かめられもしないからです(タイムマシーンがあればできるかもしれません)。
 

 

この系統発生(進化)を知る物語には、我々人類はなぜこの様な形をし、なぜこの様に動くのか。
そしてヒトがヒトらしくある為の条件や、何に適応しているのかを知る沢山のヒントが詰まっているはずです。
私たちは知っているものしか見ることができません。そのヒントが見つけられれば患者さんやクライアントさんを見る目やアプローチに影響を与えることと思います。きっと日々の臨床が変わってくるはずです。

 

 

 

それでは物語のはじまりです。
 

●ご先祖さまあらわる

この地球上に最初の生物が現れたのは今から約40億年前といわれています。地球上で生まれたと言う人もいますし、宇宙からやってきたと言う人もいます。

そもそも生物とはいったい何なのでしょうか?

簡単にいうと生きている「細胞」です。最初の生物は一つの点「単細胞生物」です。たんぱく質や核酸(DNAやRNA)を細胞膜でくるみ、外からの物質を取り込み代謝し、そして子孫を残せる存在です。

細胞膜より内側は自分「自己」です。細胞膜より外側は外の世界、自分以外「非自己」です。

※細胞膜を持たずDNAやRNAが剥き出しになっているウィルスは一応生物ではない事になっています

生物単一起源説という学説があります。すべての生物はたった一つの生物から始まったとするものです。これが正しいとするなら細菌も植物もニワトリも人間も、ご先祖さまは皆同じということになります。
 

●共に生きる 〜動物になったご先祖さま〜

最初の生命が誕生したのち生物の活動の場はずっと海にありました。

今から23億年前、地球上に酸素が増え始め海中の酸素濃度も上昇しました。酸素は生物のDNAなどにダメージを与える物質で、酸素を使わない初期の生物にとって酸素は毒でした。ところが酸素濃度が高くなるにつれて、その酸素をエネルギーに変えるお得な生物「酸素をつかう細菌」が現れました。なぜお得かというと、酸素を使うと、今までとは比較にならないくらい大きなエネルギーを作り出すことができるからです。

ある時、「酸素をつかわない生物」であったご先祖さまの中に「酸素をつかう細菌」が入り込んで、一緒に生活するようになりました。

「酸素をつかう細菌」は「酸素をつかわない生物」であるご先祖さまの中で、酸素をつかってエネルギーをつくり、そのエネルギーを「酸素をつかわない生物」であるご先祖さまに与えるようになりました。

一方、「酸素をつかう細菌」は「酸素をつかわない生物」であるご先祖さまにタンパク質をつくってもらうようになりました。

このように、生物が別の生物を取り込んで共に生きることを、「細胞内共生」といいます。ご先祖さまの内に入り込んだ「酸素をつかう細菌」がミトコンドリアになりました。ミトコンドリアなど細胞内に細胞小器官を持つものを「真核生物」と言います。さらにミトコンドリアに加え、光合成をする葉緑体を取り込んだ真核生物「植物」が現れ、動物と植物の区別ができました。

※ミトコンドリアは細胞の核内にある核DNAとは別に、DNAを持っています。主に母方から遺伝するため、母方の祖先がどこからやって来たかを知ることに役立っています。

その後、酸素を利用してエネルギーを取り出す真核生物はどんどん増えて進化し現在につながっています。我々が肉眼で見える生き物は基本的に全部真核生物です。

ヒトは真核生物の「ドメイン」※に属し、動物「界」の一員です。

※全ての生物は真性細菌、古細菌、真核生物の三つにドメインに分類される。

別の生物が自分の体の中に息づいているかと考えると、とても神秘的な気分になります。

 

●集まって生きる 〜多細胞生物の誕生〜

・・・


続きは有料会員ページよりご覧いただけます。
「動画、コラムのフルバージョン閲覧」「セミナー・勉強会受講料割引」過去の動画、コラムが閲覧出来る「TCライブラリー閲覧可能」と特典満載の有料会員についてはこちらから

 

執筆者紹介

宮井健太郎(みやいけんたろう)

1977年生まれ
2001年 理学療法士資格取得
以後、老人総合病院、老人保健施設、老人ホーム、小児病院、スポーツ整形外科、一般整形外科にてリハビリテーションに関わる

2006年 ロルフィングプラクティショナー認定

2010年 フランクリンメソッド エデュケーター認定

2014年 ロルフィングムーブメントプラクティショナー認定

現在、東京 有楽町線・副都心線 小竹向原駅近く、東久留米市内にて、ロルフィングとボディーコンディショニングを行う

HP http://www.rolfing-greenrug.com/

日本ロルフィング協会会員