記事タイトルに【PR】とあるので、いわゆる「記事広告」の類なんですが、広告主が明記されていない一方で記事の最後で楽天証券での購入方法を紹介しているから自社の販促用なんですかね。(トウシルは楽天証券のメディアです)
内容的には、前半は個人向け国債の内容説明となっていて、個人向け国債のことを知らない・知りたいという方には参考になるかと思います。
ただ、後半はいくつか引っかかるところがあるんですが…
まず1点目はポートフォリオの中で、個人向け国債を一般的な国内債券と同じものとして取り扱って説明しているんですが、これは明らかにおかしいと思います。
GPIFの基本ポートフォリオと同じポートフォリオということで個人向け国債を25%入れたものを提案(上図)していますが、GPIFが保有しているのは一般的な国内債券であって、個人向け国債ではありません。
そもそも「個人向け」とあるように基本的に購入できるのは(2027年から一部法人が購入できるようになります)個人のみですのでGPIFが言う国内債券には個人向け国債は含まれていません。
一般的な債券の場合、その取引価格は変動しますし、一般的に株式と相関係数が低い(逆の値動きをしがち)ものですから、(債権はローリスクローリターンなので)ポートフォリオ全体のリスクを低減しながら、株価下落時のポートフォリオ全体の資産額の変動を緩やかにする効果が見込めます。
ところが個人向け国債の場合は価格変動が無くいつ換金(=国が買い取る)したとしても購入時の価格で換金できます。(ただし、満期前の中途換金の場合、受取済の直近2回分の金利が差し引かれます)
これはメリットでもありますが、取引価格は変動するという債権が本来持つ性質が失われていることになります。
つまり、値動きが異なる資産としてポートフォリオの中で発揮される、株式などの資産の値動きとの相関係数の低さという債権の性質をそもそも持っていないということになります。
また、タイトルにもありますが個人向け国債を資産形成ツールとして紹介しているというスタンスもちょっと疑問です。
資産形成ツールという語の定義がはっきりとはしませんが、昨今の金利上昇を受けて資産形成に活用できるものとして紹介されていますので、何らかの利殖が可能な資産と位置づけていることは確かかと思います。
ところが、随分と金利は上昇してきましたが、それでも現状は年利1.0%位です。
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
総務省統計局の消費者物価指数を見ると直近では前年同月比で3%強の上昇となっています。
ここが引っ掛かるところの2点目です。
資産形成ツールなるものが実質的な資産の価値を増やすというイメージで語られているのだとすれば、いわゆるインフレ負けする利率でしか運用できていないわけですから、(多少目減りのスピードを減ずることができたとしても)年を経るごとに目減りしていくわけですから(増やすということを意図した用語なのだとすれば)資産形成ツールとしての役割を期待するのは難しいのではないかなと思います。
そう考えてくると、個人向け国債に期待すべきは、リスク資産としての役割というよりも無リスク資産の置き場所として銀行預金との比較での優位性にあるのではないかなと思う次第です。
キャンペーンや口座開設のインセンティブなどで1年未満の定期預金で1%を超えるような定期預金も散見されますが、普通預金にせよ定期預金にせよ、通常の銀行の設定利率に比べれば個人向け国債の利率は高いですし、ペイオフの上限となる1000万円も考慮する必要はありません。
また、どれだけ悲観的に見ても国内銀行に比べて日本という国の信用リスクが低いとは思えませんし(日本がデフォルト起こすなら国内の銀行もただではすみませんしね)、満期まで放置できる、あるいは中途換金する場合は直近受け取った2回分の利息を返金する(差し引かれる)ことを許容できるなら個人向け国債は最強の無リスク資産の置き場所だと思います。
冒頭引用の記事は記事広告的ということで考えれば、(究極のポジショントークですから)細かいところに目くじら立ててもしょうがないとは思いますが、ちょっと気になったので記事にしてみました。
なお僕自身、無リスク資産としては(金額的な比率は高くは無いですが)積極的に買っていますし、上記の通り無リスク資産としての個人向け国債は優秀だと考えていますので、本記事は個人向け国債という商品に対して何を期待するのかという点においてのアンチテーゼです。
また森永さんについても、記事の意図に沿った形でコメントを掲載されているものと思いますし、「何を期待するか」によっては間違ったことはおっしゃっていないと考えますので、個人を批判するものでもありません。(そもそも【PR】と明記されていますので、為念)
ほったらかし投資推奨本の元祖、山崎元さん・水瀬ケンイチさん共著のこの本でも
無リスク資産として個人向け国債変動10年の活用を提言されていました!
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