オリンピック開幕前夜 


①五輪では94年ぶりの3連覇を目指す羽生選手にエールをよろしくお願いします。

羽生結弦様 いつも限界突破のチャレンジとその生き様を、次元を超えた美しきスケーティングアートとして、私たちに魅せてくださり、本当にありがとうございます。今回も、さまざまな苦難を乗り越えてきたであろう決然たる凜とした勇姿を、全身全霊で応援させていただきます。

 

②五輪という舞台で世界初のクアッドアクセル(4回転)に挑もうとしている羽生選手をどう思われているか?

世界初挑戦ということは、そのリスクも計り知れない未知のもの。満身創痍でも、未だ見ぬ世界にあえて飛び込んでいかれる、どこまでも強くて純粋な羽生さんのお心意気、覚悟、心震えるほど、私たちの心に突き刺さっております。そんな羽生さんから、どれだけ感動と、前へ進む力をいただいてきたでしょうか、お礼の言葉もございません。


③羽生選手はToshlさんにとってどんな人でしょうか?羽生選手の魅力とともに教えてください。

圧倒的なカリスマ的存在であり、礼儀正しく、思慮深く、知的なお方なのに、ふと垣間見せて下さる、幼気ない無邪気な少年のような言動、表情、、、はっきり言って、反則です!超ストイックから超チャーミングまで、「振り幅」激しすぎなお人柄も、多々ある羽生結弦様の絶大なる魅力のおひとつかと存じます

 

④ファンタジー・オン・アイスで共演して思い出深いことを教えてください。

ファンタジーオンアイスでの共演前のインタビューで羽生さんが「Toshlさんの中に入って演じます」とおっしゃってくださった「マスカレイド」そして、「最終的にはToshlさんに捧げたい」とおっしゃってくださった「CRYSTAL MEMORIES」。羽生さんが魂の舞をパフォーマンス下さったこの2曲の楽曲は、僕にとって一生涯の至宝の楽曲となりました。コンサートなどで歌うたびに、ファンタジーオンアイスで羽生さんからいただいた「大切なもの」を感じながら歌わせていただくことで、今でも歌うたびに進化・深化していく、まさに「生きている楽曲」となったこと。楽曲を創り、歌う者にとっては「奇跡の歌」となってくれたのです。また、その頃から絵画を描くという新たなアート表現も始めたのですが、「マスカレイド」という楽曲をテーマに描いた絵画「マスカレイド」は「今度は僕が羽生さんの中に入って、描いてやる」という気合と気概を持って取り組んだ作品。羽生さんの「マスカレイド」という凄すぎるプログラムに対する「アンサー絵画」を描き上げるという高過ぎる目標を持って描いた絵画です。途中、あまりの心身への負担がかかる作業に、何度もめげそうになりましたが、「羽生結弦なら、ここで諦めない」と何度も自分を鼓舞しながら描き切りました。その絵画作品も、僕の代表作となってくれています。こんな素敵な究極のプレゼントを下さる方は、他にいらっしゃらないと思います。


⑤羽生選手と話したり、やりとりしたことで思い出深いことを教えてください。

ファンタジーオンアイスの最終公演の地、富山公演の中日、羽生さんが最後となる「CRYSTAL MEMORIES」のプログラムを舞って下さったのですが、その時は、それまでの演舞とは何かが違っていて、まるで、僕の方へ向かって演舞して下さっているかのように感じました。演舞構成をサプライズで変更して下さったことを曲の途中で気づいた時に、感情がキャパシティを超えてしまうほど、初めて体験するとんでもない感動が込み上げましたが、ともかく最後まで、ちゃんと歌い切らなくては、と、その思いを思いっきり自分の腹の底へ押し込めました。歌い終えた途端に、涙が溢れて溢れて、、、。その公演終了直後にニコニコ生放送という自分のインターネット番組を楽屋から生放送したのですが、番組冒頭から30分間、何も喋れずただ泣き続ける、という前代未聞の放送となってしまったほど溢れる感動を止めることができませんでした。「最終的にはToshlさんに捧げたい」と言って下さった有言実行、一事が万事、そんなお方なのです。そして、翌日、ファンタジーオンアイス2019千秋楽、富山公演の最終日に僕の楽屋に届けられていた羽生さんからの長文の直筆のお手紙は、今でも、事あるごとに読み返させていただき、どんな時も力強く僕の背中を押して下さっています。人の気持ちには優しく寄り添い、ご自身には残忍なほどに厳しい。血の滲むような努力や輝かしい功績などは一切口にせず、黙々と己の道を極め続ける。僕は茶の湯の世界が好きでほんの少しだけ嗜みますが、まさに羽生さんのお心映えは、茶道の境地なのではと、畏怖の念を感じずにはいられません。羽生結弦さんは、僕の人生の恩人中の恩人、そんな方と出会えたこと、心から感謝いたしております。

 

 

つ・づ・く