トランスフォーマー/ロストエイジ (5点) | 日米映画批評 from Hollywood

トランスフォーマー/ロストエイジ (5点)

採点:★★★★★☆☆☆☆☆
2014年8月11日(映画館)
主演:マーク・ウォールバーグ、ニコラ・ペルツ
監督:マイケル・ベイ
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ

 衝撃のCG革命を見せた第1作から数えること第4弾!
 前3作とキャストとデザインを新しくし、新シリーズとしての第1弾となった作品。

【一口コメント】
 2度あることは3度あるが、3度あることも4度はない!を証明した作品です。

【ストーリー】
 シカゴでのディセプティコンとの激戦から4年。テキサスに住む発明家のケイドは高校生の娘テッサと2人暮らし。ある日、古い劇場でトラックを購入し、帰宅。彼の発明部屋でもある納屋で研究を続けていると彼はそのトラックがオプティマスプライムであることを発見する!
 そこへトランスフォーマーを取り締まる政府組織KSIが登場。KSIの包囲網は厳しかったが、オプティマスとレーサーであるテッサの彼氏に助けられ、何とかピンチを切り抜ける。しかし新しいディセプティコン、ロックダウンが地球に出現し、オプティマスは捕まってしまう―――。

【感想】
 さすがにもう新鮮味はない・・・。
 わかっちゃいたけど、新シリーズということでやはり期待していた部分も多少なりともあった。しかしロボットが変形し、多少のお下劣な下ネタが散りばめられ、最終的にはロボット同士の激闘+大爆破というこのシリーズの掟というか、ルールも3回も繰り返されれば飽きが来る。2度あることは3度あるらしいが、3度あることの4度目はなかったらしい・・・。
 もしかしたら4度目もあったのかもしれないが、このルールが大きく変更されていたこともあり、新鮮味を加味するどころかシリーズモノとしては劣化していると言っても良い。

 まず一番大きかったのが、オートボットたちのデザイン変更。
 前3部作までに登場したロボットの多くはKSIのオートボット狩りで殺害されてしまい、残っているのはオプティマスとバンブル・ビーの2体のみ。そして今回新たに登場した3体のデザインのダサいこと・・・。人間のような表情に加え、丸みを帯びた新トランスフォーマー達のデザイン。この映画に登場するロボットにそんなものは求めておらず、もっと角角したデザインのロボットが見たかった。中でもひどかったのが侍風のロボット。武者ガンダムか、お前は!?という突っ込みを入れたくなったし、葉巻を吸ってる風のロボットも人間味がありすぎて、引く。またオプティマスやバンブル・ビーと並んだ時に感じる違和感もひどかった。
 遠い星からやってきた金属生命体という設定だったはずなのだが、そんな遠い星からやってきたという設定が、シリーズ4作目でデザイン一新ということで一気に地球の人間をベースにしたデザインに変わってしまい、金属生命体感がなくなってしまっている・・・。
 また今回の敵キャラともいうべきロックダウンのデザインもいけてない・・・。ラスボス感がないとでも言えば伝わるだろうか?人間ベースとまでは言わないが、流線型のボディーのため、恐ろしさが伝わってこない。

 そして人間が開発した新型トランスフォーマーは反則技だ。パート2に登場した人型ロボットも反則技だったが、今回の細胞分裂型変形とでも呼ぶべき変形は科学技術で大幅に劣る人間が作っているのに、本家を超えてしまうという意味不明な設定はやめて欲しい。
 そういった意味では恐竜に変形する伝説の騎士たちも同様で、正直最初に恐竜に変形した時は、失笑してしまった。しかし、オプティマスが竜騎士のごとく、恐竜に乗った瞬間に馬鹿メーターが振り切れて、これはこれで楽しもう!という気持ちになり、いろんな意味でさすがマイケル・ベイだ!という気持ちになった・・・。
 もちろん、このシリーズにストーリー性など求めてはいないし、単純に童心に返って楽しめればOKという気持ちはあるのだが、最低限のルールだけは守ってもらわないとシリーズとしての整合性も取れないし、何でもOKになってしまい、その内スーパー・サイヤ人とか登場してもOKになりそうなので、そこだけはきちんとしてもらいたいものです。

 振り返ってみると、今までの3作はそれぞれに見せ場があった。
 第1作目は、「ジュラシック・パーク」以来のCG革命そのものに大いに驚かされた。
 第2作は単体変形だけでなく、ロボットものの醍醐味とも言うべき合体ロボットの登場に心踊らされた。
 第3作は今まで片田舎やピラミッドといった非人工物が背景となる場所での戦闘シーンが多かったのに対し、シカゴと言うアメリカの大都市での戦闘シーンを盛り込み、CG処理のレベルが2歩も3歩も進んでいることに感心させられた。
 しかしこの最新作はそういった新しい驚きや発見がなかった。しいて言えば恐竜型ロボットということになるのだろうが、それは非金属への変形という基本反則技のため、NGだ。香港での格闘シーンも前作シカゴでやったことを場所を変えただけだし、さらに「パシフィック・リム」で、香港を舞台にした巨大ロボット大戦は既に一度見ているし、市街戦という意味での迫力はパリフィック・リムの方が臨場感があったこともあり、"2番煎じ"感が一杯。
 ただし中国を舞台にしたこともあり、中国では歴代最高の興行収入を上げただけでなく、本国アメリカ以上の成績を上げていることもあり、マーケティングの面からいうと大成功となった点は否めない。日本もこれを見習って、日本における映画撮影の協力体制を柔軟なものにしていって欲しいと心から願う。

 キャストが変わったことによって下ネタ要素が大幅に削減された点もマイナス。巨大ロボットの良い意味で馬鹿げた戦闘シーンに心を熱くする少年心に、これまた良い意味で馬鹿の上塗りをする下ネタだったのだが、下ネタ担当の主人公とその良心がいなくなってしまったため、下ネタはほぼゼロ。
 唯一要素っぽいのが、主人公の娘なのだが、官能的なスタイル以外に特筆すべきものはないし、パート1、パート2でヒロインを演じたミーガン・フォックスが与えた衝撃と比べると、その存在感はかなり小さい。こうして考えてみるとパート1でミーガンが与えたボンネットの衝撃(わかる人にはわかるはず・・・)は歴代ハリウッド映画の中でも群を抜く、良い意味で馬鹿な演出だったとわかる。

 唯一守られたルールはロボット同士の激闘+大爆破だが、ロボット変形のルールが破られたため、もはやこの映画は"トランスフォーマー"ではなく、ただの"ロボット大戦"である。
 これが"トランスフォーマー"シリーズではなく、独立した一つの作品であればそれはそれで大盛り上がりの作品だったのだろうが、やはり残念な感じは拭えない・・・。
 そして前作までの敵キャラであるメガトロンはオプティマスと対面することもなく逃げてしまい、続編ありますよ!的な終わり方だったこともあり、第5弾の公開は間違いないだろう。

 馬鹿さ加減を求め、ストーリー性を求めることのない作品ではあるものの、大前提となる金属生命体のトランスフォームの絶対ルールが破られてしまい、馬鹿さ加減が別次元へと行ってしまい、マイケル・ベイの凄さについていけなくなった・・・そう感じた2時間45分の上映でした。