オブリビオン / Oblivion (7点) | 日米映画批評 from Hollywood

オブリビオン / Oblivion (7点)

採点:★★★★★★★☆☆☆
2013年6月9日(映画館)
主演:トム・クルーズ、オルガ・キュリレンコ、モーガン・フリーマン
監督:ジョセフ・コシンスキー

 ハリウッドの映画業界で働いていた人間とは思えないほど、最近ハリウッド映画の公開情報に疎くなっているが、この作品も先日日本映画を見に行った際に予告編で初めてその存在を知った。

【一口コメント】
 50歳には見えないトム・クルーズの10年後の評価が楽しみな作品です。

【ストーリー】
 西暦2077年。60年前に起きた異星人スカヴとの戦争により月は破壊され、地球も核爆弾の仕様を余儀なくされ、何とか人間が勝利したものの、地球は荒廃し人類の大半は土星の衛星であるタイタンへ移住をしていた。そんな中、地球に残ったジャックとヴィクトリアの2人は、上空から地上を監視する任務についていた。
 そんな中、ジャックはある日パトロールの途中で墜落した宇宙船の残骸から謎の女性ジュリアを助け出す。彼女は何故か会った事も無いジャックの名前を口にするものの、その記憶は途切れ途切れのものでしかなかった。そんな時、2人は突然何者かに捕えられ、ジャックは連れて来られた先でマルコム・ビーチと名乗る男と出会う。自分以外にも地球で生きる人間がいた事実に驚くジャック。そしてこの出会いが、ジャック自身と地球の運命を大きく変えていく事になるのだった。

【感想】
 この作品のタイトルでもある"オブリビオン"。この作品の中ではただの一度も出てこない。一体何なんだ!?そもそも英語なのか!?と思って調べてみると、それは英語で、"忘却"とか"忘れる"という意味らしい。
 なるほど!そういうことならしっくり来る!というのがこの作品の根本。要するに何なんだ、この世界観は!?といった感じでドンドン引き込まれていく。
 というわけで、公開前に放映された「徹子の部屋」で黒柳さんが言っていたように2度、3度と見れば見るほど面白さが増すのは間違いない。何度かに分けられた種明かしの度に、新しい事実が現れ、その事実を知った上で最初からもう一度見てみたい!と思わせてくれる。

 まずその世界観、核戦争後の地球・・・というよくありそうな感じだが、その戦争が地球人同士によるものではなく、地球人対宇宙人という設定は自分が知る限りそうはない。しかも地球人が勝利を収めたものの、地球人が地球外に移住し、地球に侵略してきた宇宙人が住んでいるというアベコベな世界。
 そしてビジュアル的にとても印象的だったのが破壊された月。「トロン:レガシー」で圧倒的なビジュアルを描いた監督(脚本はイマイチだったが・・・)の作品だけあって、作品の世界観の描き方は素晴らしいものがある。

 そして50歳の男性が30代前半の女性と夫婦に見えるという奇跡。当然ながらこの奇跡を起こしているのは世界のスーパー・スターであるトム・クルーズ。考えてみればここまで長期にわたってコンスタントにハリウッド映画の第一線で活躍し続けている俳優は彼以外にいない。

 その相手役となった2人の女優。前半はヴィクトリアがヒロイン、後半はジュリアがヒロインとなる。どちらの女性もジャックを愛しているのだが、二人が単純に主人公ジャックを奪い合う!という図式にはならない。二人の間にはこの物語の設定ならではの、切ない感情に観ているこちらまで切なくなってくる。
 特にジュリアが登場してからのヴィクトリアの気持ちは本当に切ない。ヴィクトリアだけが切ないのか?というと、そうではなく、ジュリアもジャックがある行動を取る際の切なさは心が痛む。
 そしてジャック自身もこの物語の核とも言える設定により切なさ満点のラストを迎えることとなる。ハッピー・エンドといえばハッピー・エンドなのだが、観ているこちらとしては何とも言えない切なさが残るエンディングとなっている。

 その核となる設定、どこかで見たことあると言えばあるのだが、こういう終わり方は今までになかった。何と言うかしっくりこない・・・、感動するにはするのだが、心の奥深くにドンと落ちる!という感覚ではない。もしかするとこの映画が先を行き過ぎていて、時代が追いついていないのかもしれない。もしかすると近い将来この作品を真似た作品が乱立するような時代になっているかもしれない。
 10年後、この作品がどのように評価されるのか、それは間違いなく楽しみである。