名探偵コナン 迷宮の十字路 (6点) | 日米映画批評 from Hollywood

名探偵コナン 迷宮の十字路 (6点)

採点:★★★★★★☆☆☆☆
2011年10月30日(DVD)
原作:青山 剛昌
監督:こだま 兼嗣


 前作がロンドンを舞台にシャーロック・ホームズをテーマにしていた反動か、日本の古都、京都を舞台にした劇場版第7弾。


【一口コメント】
 「そうだ、京都へ行こう!」の会社の陰謀(宣伝?)が絡んだミステリー作品・・・ではありません。


【ストーリー】
 東京・大阪・京都で、5人の男が殺害される事件が発生した。捜査の結果、殺された5人が古美術品を狙う窃盗団"源氏蛍"のメンバーであることがわかった。
 同じ頃、コナン一行は京都に来ていた。12年に一度公開する秘仏が何者かに盗まれていた山能寺に、最近その仏像のありかを示すという謎の絵が届き、小五郎に解読を依頼したのだった。
 西の高校生探偵・服部平次と共に謎の絵を解読するために京都市内を散策する2人の前に、突然ライダースーツの男が現れ、弓矢で狙撃される。2人はバイクで男を追跡するが、後一歩というところで取り逃がしてしまう。
その夜、コナン一行は御茶屋に招かれた。再び殺人事件が起きる!


【感想】
 京都が舞台ということもあり、日本人の琴線に触れるテイストなのだが、子供からすると、ひどくつまらない作品なのではないだろうか?なんていらぬ心配をしてしまった。
 実際、小学生の時に修学旅行で京都を訪れたが、京都そのものは面白くもなんともなく、夜の枕投げだったり、女子の部屋にお忍びで行ったり、子供の頃なんて、そういうことのほうが覚えているものではないだろうか?

 話がわき道に逸れてしまったが、いくらが大人も楽しめる作品とは言え、子供向けのアニメとして始まった作品がメインターゲットでもある子供が楽しめないテーマを選んでしまった時点で、この作品のターゲットは大人に絞られたと言っても過言ではない。義経記なんて子供が全く興味を示さないものまで出してくるし・・・。
 実際、服部平次の初恋がサブテーマとして、小学生低学年にはおよそ似つかわしくないが大人にとっては淡い気持ちを呼び起こさせるテーマを持ってきてたりもする。
 というわけで大人向けの作品として見るとなると、この作品のミステリー要素、サスペンス要素はあまりにも安っぽいし、犯人の動機も、ものすごく子供っぽい。そもそも犯人一味が地元京都の人間であるにも関わらず、あの絵の謎を誰一人解けないというのが解せない。京都の小学生でも解けるレベルの謎ではないだろうか?

 というわけでシリーズ史上でも最低レベルに属するサスペンスではあるが、劇場版のもう一方の売りであるアクション・シーンはどうか?
 メインはバイクのチェースとクライマックスの日本刀による決闘。バイクは実写では難しい、アニメならではのアングルとCGを使った絵の力、そしてカット割の妙で非常に面白いチェースになっている。
 そしてクライマックスの日本刀バトル。こちらはバイクとは逆に実写で見られるほどの迫力はない。侍ものの実写映画といえば日本映画界の十八番であり、一方アニメでの刀バトルは実写に比べれば日が浅い。重ねてきた歴史の長さが思いっきり出てしまっている。

 この作品の売りは他のシリーズとは異なり、謎解きでもなく、アクションでもなく、平次の初恋なのかもしれない。考えてみればオープニング、桜の木の下で手毬歌を歌う少女を見つめる平次という始まり方からして、そうだった。
 そう考えると平次と和葉の初恋を通して、実は新一と蘭の恋物語にもスポットを当てているのも納得がいく。月の明かりの下の待ち合わせの話なんてその最たる例以外何者でもない。
 もう1つ売りがあるとすれば、舞台となった京都。京都駅や五条大橋、鴨川なんて有名観光地が次から次へと出てきて、アニメであるにも関わらず「そうだ、京都へ行こう!」なんて某CMのフレーズが頭の中に出てきたりもした。実はこのCMの会社の巨大な陰謀(宣伝?)ではないだろうか?なんて妄想も浮かんでは消えていった・・・。

 まとめるとこの作品は謎解きとアクションを楽しむという従来の劇場版コナン・シリーズではなく、淡い恋愛と京都を楽しむというコナン・シリーズの売りとはまったくかけ離れたテーマの作品です。