デイ・アフター・トゥモロー(7点) | 日米映画批評 from Hollywood

デイ・アフター・トゥモロー(7点)

採点:★★★★★★★☆☆☆
2004年6月5日(映画館)
主演:デニス・クエイド、ジェイク・ギレンホール
監督:ローランド・エメリッヒ


 インディペンデンス・デイ 」の監督の作品であり、予告編も面白そうだったので、見に行った作品。


【一口コメント】
 群像劇を撮らせたら、No.1の監督の新しい群像劇の作品です。


【ストーリー】
 南極で氷河の研究をする気象学者ジャックは温暖化に起因する氷河期の到来を予測し、副大統領に地球規模の異常気象が発生するという自分の理論を展開し、「京都議定書」を遵守すべきだと力説する。しかし副大統領は「議定書を批准すれば目先の経済活動が大打撃を受ける」と言い、彼に取り合わない。
 しかし、スコットランドの気象台で海面温度が13度低下したことを記録したのを皮切りに東京では巨大な雹が降り、ロサンゼルスでは巨大な竜巻が発生し、一瞬にして廃墟と化す。そしてニューヨークでは高波に襲われ、街の大半が水没してしまう。仲間とともにニューヨークを訪れていたジャックの息子サムは公立図書館に非難し、難を逃れる。
 ジャックは大統領に多くの人を南に非難させるように提言し、自身は息子を救いにニューヨークへと向かう。一方サムは傷ついた仲間を救うために、図書館から出て、迫りくるスーパー・フリーズ(一瞬にしてすべてが凍結してしまう現象)や動物園から逃げ出した狼と戦うことになる。そしてアメリカ国民の多くは大統領の避難勧告を受けて、メキシコ国境へと押し寄せるが、メキシコ側が国境を閉鎖してしまう。
 そして地球規模の凍結が始まる―――。


【感想】
 この手のパニック大作だと脚本に矛盾点が多く見られるものだが、この作品に関して言えば、矛盾点は少なく、非常によくできている。特に"氷河期"に焦点を当ててて、二酸化炭素の大量排出は地球"温暖化"を促進し、極地の氷山が溶けると淡水が海水を薄くし、そのため海温が極端に低くなり引いては氷河期になるやも知れないという理論は素晴らしい。"氷河期"と"温暖化"という一見、まったく相反する内容の現象を結びつける理論には、一理あるかもと納得させられた。
 また、政治的一面も盛り込まれており、これまたおぉ!と思わされてしまいました。現実世界ではメキシコからの密入国に悩むアメリカですが、映画の中では到来するスーパー・フリーズを逃れてメキシコ国境を越えてアメリカ国民が続々と密入国するくだり、そして副大統領がジャックに向かって言う「気象学者には政治はわからないようだな?」の発言、それに対して「政治家が気象学者の言葉を無視した結果、こうなった(異常気象の発生した後での発言)」という軍司令官の発言など、いたるところで政治的要素が見られる。


 この監督ローランド・エメリッヒは、宣伝では「インディペンデンス・デイ 」の監督ということしか言っていなかったが、実は「GODZILLA」の監督でもあるのだが、日本ではコケてしまったため、こちらは使われなかったと思われる。
 それでもこの監督の作品は「
スター・ゲイト」をはじめ、いわゆる群像劇ものを撮らせたら、レベルの高い作品を作っている。登場人物が多ければ、その分だけストーリー展開の舞台も増え、物語の軸がぶれてしまいそうだが、その点に関してこの監督の作品は非常にうまく描かれていると思う。脚本も監督自身が書いている作品も多く、今後も彼の群像劇には期待してよいと思う。

 そしてなんといっても映像の迫力!ロサンゼルスを襲う竜巻、ニューヨークを襲う大津波、そしてスーパー・フリーズの現象。この3つのシーンは見応え満点。
 ロサンゼルスを襲う竜巻のシーンで言えば、建物を削り倒していく迫力(HOLLYWOODサインがふっとぶシーンやキャプタル・レコードが崩壊するシーンなど)もさることながら、二本の竜巻が合体してひとつになるというありえない設定や、複数の竜巻をヘリコプターのアングルから捕らえたシーンは感銘を覚えすらした。
 またニューヨークを襲う津波は、ミニチュアとCGを組み合わせたものらしいが、人間目線から見て、津波がビルの間を流れ込んでくる平面的な視点と上空から見てビルの間に水が流れ込んでいく俯瞰の視点とがうまく組み合わさっており、今までにない驚異の映像となっている。
 そして最後のスーパーフリーズのシーンだが、台風の目に入ると瞬時にして、人間も含めてすべてのものが凍ってしまうという現象を見事に表現できていると感じた。実際に自分で体感したことがある人はこの世にはいない(もしいたとしても死んでいるはず・・・)現象をいかにリアリティの高いものに見せるか?というのは映像作家としては究極の試みでもあるわけだが、私個人としては非常にリアリティの高い映像に仕上がっていると感じました。

 しかし最初にいった数少ない矛盾点のひとつが非常に大きな矛盾点であり、それがこの作品の評価を下げてしまっています。というのは地球規模の氷河期が訪れるはずなのに、なぜアメリカ国民が逃げ込む南隣の国メキシコは凍結しないのか?という点。この手のパニック映画のラストというのは何とか生き延びるか、もしくは全滅してしまうかのどちらかだと思うのだが、生き延びる場合、見る人の大半を納得させられる解決策でないとだめだと思うのだが、メキシコに逃げ込んで助かるというのは、正直納得がいかない。
 それと冒頭でスコットランドと東京が登場し、異常気象の映像を見せてくれるのだが、それ以降はまったく登場せず、アメリカ国内のみが映像として描かれており、その他の国の異常気象の映像がスクリーンに映し出されることはなかった。「
インディペンデンス・デイ 」の際にはこの点がクリアされていたので、もう少し他の国の映像も取り入れてほしかった(チラシなどでは東京のレインボー・ブリッジやパリのエッフェル塔、ロンドンのビッグ・ベンなども凍結していたのだが・・・)。そうすれば、この作品もより高い点数をつけれたと思うと少し残念です。